THE CENTRAL DOT

BXラウンドテーブル【第8回データ・テクノロジー:後編】
「データ・テック×クリエイティビティ」がブランドを創る

2022.08.19
#BX#ブランド・トランスフォーメーション#生活者インターフェース市場
新進気鋭の研究者たちと、ブランドの実務で活躍する博報堂社員が繰り広げる連続ディスカッション「BXラウンドテーブル」の模様を記事でお届けします。第8回のラウンドテーブルでは、「データ・テクノロジーと生活者インターフェース」をテーマに活発な意見が交わされました。
(→連載 BXラウンドテーブル

参加者(五十音順・敬称略)
岩嵜博論 武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授
杉谷陽子 上智大学 経済学部経営学科 教授
本條晴一郎 静岡大学 学術院工学領域 事業開発マネジメント系列 准教授
水越康介 東京都立大学 経済経営学部 教授
山野井順一 早稲田大学 商学学術院 商学部 准教授

中村信 博報堂DXソリューションデザイン局 局長/エクゼクティブマーケティングディレクター
*司会:岡田庄生 博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 部長

「生活者インターフェースとBX」を考えるための3つの視点

博報堂DXソリューションデザイン局長の中村信によるプレゼンテーションを踏まえ、今回もファシリテーターである岩嵜博論氏より3つのテーマが提示され、全体ディスカッションがスタートしました。
【本日のテーマ】
1:生活者インターフェースが重要になってきた背景とは?
2:データ・テクノロジーの生活者と企業にとっての価値とは?
3:BXにおけるデータ・テクノロジーの役割とはどのようなものか?

テーマ1:生活者インターフェースが重要になってきた背景とは?

そもそも生活者インターフェースとは何か、なぜ重要になっているのかというテーマからディスカッションがスタート。「データ・テクノロジーの世界が急速に発達する一方で、それと生活者の仕組みがつながっていないからこそ、そこをつなぐインターフェースが必要なのではないか」という視点が示されました。

山野井 ここでの問いは「生活者インターフェースが昔に比べて重要になっている」という理解でよろしいですか。逆に言えば、過去はそれほど重要ではなかった、ということなのか。

岩嵜 かつて企業と生活者を結ぶインターフェースは、主にマスメディアでした。それがスマートフォンの時代になって、インターフェースがかなり広がっていることが基本的な背景にあると思います。

中村 さらにIoTや5Gも入ってきて、つながるものが増えて、今後、さらに状況が大きく変わっていますね。

本條 企業が介在するインターフェースの方が、介在しないインターフェースより便利になったということも大きい気がします。たとえば私は今まで、自宅の電気もカーテンも手動で操作していました。でも今は、カーテンの開け閉めも明かりの消灯もスマートスピーカーがやってくれます。おかげでリモコンを取りに行く最後の力が残っていない場合でも、ちゃんと電気を消して眠れるようになりました(笑)。インターフェースの中に企業のサービスが入ってきたことで、利便性が上がっていますよね。

岩嵜 つまり、元々どんなモノにもインターフェースはあったが、そこにデジタルや企業が入ってきたことで、大きな変化が起こっているということですね。

水越 企業と生活者の接点という意味でいうと、かつて企業が生活者にアクセスできる接点は、テレビや街頭の広告ぐらいしかなかった。でもデジタル化が進んで、今では生活者と企業のタッチポイントがすごく増えて、カスタマージャーニーの中の多数のインターフェースにアクセスできるようになりました。そうしたインターフェースに、企業はどう効率的にアプローチし、どう全体を体系づけていくのか。そんな段階にきている気がします。
その延長線上で、単に広告だけでなく日常の生活行動、それこそカーテンの開け閉めのようなインターフェースにも企業が入り込めるようになってきた。そこに新しい価値や、ビジネスチャンスが生まれることもはっきり見えてきていますよね。

杉谷 すみません。「インターフェース」が何を指しているのか、ちょっと今混乱してきてしまって。企業と顧客の接点だけでなく、人間とデバイスとの接点といった意味も含んでいますか?

岩嵜 企業と顧客の間にある接点的なもの、と捉えてよいと思います。本條先生のカーテンの例は、それを拡張して、人間と環境との間にあるものすべてをインターフェースと捉えてのコメントですよね。

杉谷 ここでの問いが「なぜ今、接点がより重要なのか?」ということだとすると、スマートフォンなどの普及によって重要になってきているというテクノロジー的な側面と、顧客ニーズが多様化する中で、より個々に対応していく必要があるというマーケティングのトレンド的な側面、この2つがあると思います。この2つは鶏と卵というか、テクノロジーが普及したからマーケティング的にも重要になる、というように循環している気がします。

中村 我々もこのテーマでさまざまな議論を重ねてきたわけですが、あるとき企業の方から興味深い問い合わせがありました。OMO(Online Merges with Offline)と呼ばれる、リアルとデジタルのチャネルを統合させる構想が固まり、どういう技術を使うのかも決まった。でも、それによって生活者が動く感じがしない。どうしたらいいのだろうかと。
データベースにしろ通信技術にしろ、システムは色々な形で出来つつあります。一方で、生活者側にもニーズなどを生み出す生活者の仕組みがあると思います。個人の意識や、家族のこと、あるいは何らかの社会的要請などが組み合わさり、ニーズが生まれます。じつはこの「システム側の仕組み」と「生活者の仕組み」が、うまく繋がっていないのです。多くの企業がそこに課題を感じている。だから、そこにインターフェースが必要ではないかと我々は考えています。プロトコルの異なる2つの仕組みをインターフェースで繋げる、という発想です。

山野井 興味深い指摘ですね。企業としては、どうやって生活者側のシステムに入り込めるのかが分からないと、いくらテクノロジーやデータがあっても活用できない。インターフェースは、それを知る手段でもあると。

中村 先ほど、ランニングアプリのユーザーには競争を望まない人もいるのでは、というコメントがありましたが、それぞれのユーザーがどのように走っているかがわかれば、提供するサービスも変わってくるはずです。朝走る人もいれば夜走る人もいるし、仲間と走りたい人も、一人で距離やタイムにチャレンジしている人もいる。ユーザーに使ってもらえばもらうほどデータが集まり、そうしたことがどんどん分かってきます。
ただ、データを解釈し、次のサービスを創っていくためには、やはりクリエイティビティが必要です。それも、従来のクリエイティビティとはちょっと異なるクリエイティビティが求められるのですね。

テーマ2:データ・テクノロジーの生活者と企業にとっての価値とは?

直前のディスカッションの流れを受けて、生活者インターフェースとクリエイティビティについて議論が交わされました。生活者と長くつながるための持続的なクリエイティビティとは何か、楽しさや娯楽性はこれからのクリエイティビティにどう関係してくるかなど、話題がどんどん広がっていきました。

中村 これまで求められていたのは、生活者に「伝える」ためのクリエイティビティでした。広告キャンペーンのように、時流感を掴み、大きく世の中の注目を集めて人を動かすようなクリエイティビティです。このクリエイティビティは今後も変わらず重要です。
一方で、デジタル化が進んだ状況では、生活者と繋がることも大切になるので、持久力のあるクリエイティビティが必要になってきます。我々は「長さのクリエイティビティ」と呼んでいますが、生活にどれだけ馴染むか、生活者に習慣化して使い続けてもらえるかが重要で、その設計には今までと違うクリエイティビティが求められるということです。

岩嵜 毎日使われるようなアプリは、決して華やかではないけど、生活にすっと入ってくるようなユーザーインターフェースやデザインになっていますよね。

杉谷 長続きするサービスのアイディアを考えるヒントになるかなと思ったのが、中村さんのプレゼンにあった「1次生活・2次生活・3次生活」という整理です。1次や2次に近いサービスほど、長く使ってもらえるような気がします。もし3次の娯楽性や話題性がブランドのコアになってしまうと、その欲求がなくなったら廃れてしまう。一方で、例えばランニングアプリは「健康」に貢献していて、健康が大事でなくなることはないから、きっと持続的に使われるだろうと。やや地味ですが、人間の基礎的なニーズに近いところは、持続させやすいのではないかと思いました。

中村 たしかに「楽しさ」や「娯楽性」は持続するのが大変です。一方で、生きていくのに欠かせない基礎的なニーズに応えようとすると、ひとつの企業では支えられないものになるかもしれません。

岩嵜 先ほどの「ノッカル」の例は、その辺りのミックスが上手にできている気がしました。「人の移動」という基礎的ニーズに応えつつ、それを利用することで近所の人々とお喋りできて楽しい、というような。

山野井 むしろ私は、「生活をより楽しく」という要素こそがカギではないかと思いました。睡眠や食事のような基礎的ニーズに「楽しい」という要素を加えるようなサービスが提供できたら、使い続けてくれる気がするのです。

水越 少し話が逸れますが、持続するクリエイティビティは「ゲーム」の世界が一番進んでいるのではないかと以前から思っていました。短期的なインパクトも求められながら持続性も重要で、競争も激しい。そんな世界で、同じスマホゲームが長期間、売り上げ上位を維持していたりします。楽しさの継続が最も難しいとすると、そうしたゲームが生き延びている要因にもっと注目してもいいのかなと。

中村 ソーシャルゲームが従来のゲームと最も違う点は、バックエンドでユーザーの行動データをずっと見ていることだと思います。離脱しそうなユーザーを見つければそれを防ぐ施策を打ったり、ユーザーに合わせていろんな仕掛けをしている。とても動的なマーケティングの世界なのですよね。

杉谷 従来の家庭用ゲームは、ユーザーはまずハードウェアを購入して、それからいろんなソフトを次々と買っていくモデルになっていました。ユーザーは結果的に、そのハードをある程度長期間使うことになります。スマホゲームの場合は、このようなハードの縛りがないので、1つ1つのゲームを長く楽しんでもらうには、より多くの仕掛けが必要になってくるように思います。もし1つ1つのゲームは短期間で廃れてしまうとしても、ゲーム会社は新しいタイトルを次々とリリースし続けていくことで、結果的に顧客とつながり続けることができると思います。「一時的な盛り上がりで廃れることも許容しながら、顧客と長くつながる」というサービスの設計も、あり得るかと思いました。

本條 私は、少し違った視点で考えました。ここでのテーマは「データ・テクノロジーの価値」ですが、「そもそも価値がどのように認知されるのか」が重要だと思いました。
従来は、データ・テクノロジーそのものに独立した価値があるという見方や、カームテクノロジー(生活に溶け込むテクノロジー)論のように、テクノロジーの介在を感じさせないことが価値であるといった見方があったと思います。でも私は、どちらも有効性があるにしても考え方としては古い気がしています。ノッカルの事例が象徴的ですが、テクノロジーが生活者や企業にとって、友達やパートナーのような形で実体化されているところが魅力的だと思ったのです。テクノロジーを崇めるのでもなく、黒子と捉えるのでもなく、「一緒にやってくれるパートナー」として認知されるのは、現代的でとてもいいと感じました。

岩嵜 面白い視点ですね。テクノロジーやサービスの擬人化としても考えられそうですね。

テーマ3:BXにおけるデータ・テクノロジーの役割とはどのようなものか?

最後はデータ・テクノロジーとブランド/BXの関係について、活発な議論がなされました。企業がデータ・テクノロジーを活かすためには、ブランドやパーパスがカギになること。さらに「信頼」「安心感」「心が動くこと」などもこれからのブランドにとって重要になることが、議論によって明らかになっていきました。

水越 いま本條先生がおっしゃった、テクノロジーが人間のパートナーのように感じられるというお話。先ほどのノッカルで例えると、テクノロジーの実体化というだけでなく、それがノッカルというブランド自体の価値にもなっています。この辺りを議論できるといいかなと思いました。

山野井 私も近い意見です。今回の中村さんのプレゼンテーションで、「データ・テクノロジーだけでは十分ではない。クリエイティビティを掛け合わせることが不可欠だ」というのが、最も重要なメッセージだと思いました。企業が提供しようとしている価値とは何なのか。その視点があって初めて、価値も生まれてくると。
まさにこれはブランドの話で、企業のあるべき姿や目指すべき方向性があってこそ、データやテクノロジーが生み出す価値も規定されてくるはずです。

岩嵜 その通りですね。ブランド起点でデータ・テクノロジーをどう活かすかという議論って、あまりなかった気もします。中村さんの実感としてはどうですか。

中村 まさに、試行錯誤している最中ですね。単に便利、というだけでなく、らしさ・個性をだしていく必要は確かにあります。そのためには色々なアプローチがあるかと思いますが、やはり、その企業への理解とともに、これからつながろうと考えている生活者を深く理解することだと思います。最近我々は、顧客データを生活者理解データに変換する取り組みを進めていて、例えば、購買データと健康データを結びつけた「生活者ヘルスデータ」といったものを開発しています。2つのデータの連携分析をしていくと、こういう購買特徴を持つ生活者にはこういう健康ニーズがあるなど、色々なことが分かってくる。データを上手く活用することで、ブランドのユーザーニーズをより深く理解してブランディングに活かしたり、新たなユーザーを発見したり、さまざまなことにつなげていけると考えています。

杉谷 以前もコメントしましたが、私は、企業にとってブランドとは常にデジタルより上位の概念であるべきだと考えています。先端的なテクノロジーがあることがブランドの重要な要素になっている企業もあれば、デジタルの活用を顧客に見せないことを重視している企業もあるでしょう。そういう意味で、BXにデジタルは必須と決めつけるのではなく、ブランドのパーパスに合わせて、データ・テクノロジーとの向き合い方も使い分ける、ということでよいと思います。
今後、ブランドの役割として、「信頼」が重要なキーワードになっていく気がしています。企業と生活者を結ぶインターフェースでは、それこそメタバースのような仮想空間の中で、ユーザー自身がゲームキャラクターを作り上げたりしていくようになっていくでしょう。ユーザーが関わる余地が大きくなればなるほど、場が荒れてしまうとか、個人情報の問題とか、トラブルが起きる可能性もあります。「この企業が提供している場であれば、安心して参加できる」というような、活動の基盤となる信頼性が大きな役割を持ってくるのではないかと思います。

水越 たしかに、以前からブランドにとって信頼は大事ですが、そこにデータが関わってくると重要性が増しそうですね。どんな業種の企業もデータ管理は今、最も気を遣っているところです。「この会社なら大丈夫」という信頼は、ブランドの役割として新たな意味を持ってくるかもしれません。

山野井 データを悪用されないというだけでなく、この企業だったら自分のデータを一番いい形で活用してくれそうだというプラスの意味の信頼もありそうですね。

本條 信頼や安心感の大切さを考えると、最先端のデータ・テクノロジーを目指しすぎる企業はうまくいかないかもしれないですね。最先端の技術は実装が不安定なことも多いですから。企業はデータ・テクノロジーのことをしっかりと理解した上で、技術的な最先端を追いかけすぎることなく、それでいて生活者にとっては新しさを感じてもらえるサービスを提供することが重要な気がします。

岩嵜 その辺りも含めたバランス感が重要なのかもしれないですね。先端テクノロジーに寄り過ぎず、ブランドが目指す方向をちゃんと見据えて、あくまでそのためにデータ・テクノロジーを活用していくというような。

水越 私の妻が、子どもの服を売るためにフリマアプリをよく使っています。面白いのは「売れたものがどこに配送されたか、わかって楽しい」といつも言っているのですね。詳細な住所はわかりませんが、送り先の都道府県はわかる。我が家の服が北海道や沖縄に飛び立ったという、その繋がり感が嬉しいらしいのです。もちろんその可視化も、背後のテクノロジーによって実現しているわけですが。

本條 面白いですね。情報をすべてオープンにするわけではないけれど、楽しめる部分をちゃんと見せてくれる設計なんですね。

中村 価値創造の場では、必ず心が動いているはずですよね。ノッカルでも、地域の方々の出掛けたくなる気持ちをつくることを大事にしてきました。便利なだけのサービスでは、もっと便利なものが登場したら離れられてしまうかもしれない。行きたいところが見つかる。あの人と話せる。そういう心が動く部分が生まれると、親近感や信頼感も生まれてきます。そこをどう設計するかが重要だと改めて思いました。

第8回BXラウンドテーブルまとめ「BXを推進する上でデータ・テクノロジーとはどうあるべきか?」

最後に、本日の議論のまとめとして「BXを推進する上でデータ・テクノロジーとはどうあるべきか?」について、一言ずつフリップに書いていただきました。

岩嵜 「BXを推進する上で、データ・テクノロジーは、価値共創を支えるものになる」
データやテクノロジーが前面に出すぎてしまうと、生活者は圧倒されたり警戒してしまう。目指すべきは、ある種の黒子として、生活者と企業の価値共創的な新たなパラダイムを支えるものになることだと考えました。
ノッカルの例でも、データ・テクノロジーはそれほど見えてこなくて、あくまで縁の下の力持ち的な存在として支えている。強い存在感はないかもしれないけれど、空気のように優しい支援者になっている。そんな意味を込めて、このようにまとめました。

水越 「BXを推進する上で、データ・テクノロジーは、生活基盤・インフラである
すでにデータやテクノロジーは、我々にとってなくてはならない生活基盤となっていると思います。どんなブランドをつくるにせよ、ブランドのトランスフォーメーションを考えるにせよ、データ・テクノロジーを活かしたり、関連づける形でビジネスを考えないといけない。ますますそういう時代になっていくことを改めて書いてみました。

山野井 「BXを推進する上で、データ・テクノロジーは、必要ではあるが、十分ではない」
これからのブランドにとってデータ・テクノロジーは、必要条件ではあるけど十分条件でないのだと思いました。データ・テクノロジーがあるからといって、企業の目指す事業変革ができるわけではないと。企業が持つブランドやパーパス、どんな価値を届けたいかが明確にあってはじめて、データやテクノロジーも利用できるようになる。
今日、最も印象に残ったのは、「データ・テクノロジー×クリエイティビティ」というところでした。クリエイティビティがあってこそ、データやテクノロジーもBXの役に立ってくる。そのことを強調する思いも込めて、このようにまとめてみました。

杉谷 「データ・テクノロジーは新しいアイディアを生み、アイディアと組み合わさってブランドの価値を作る」
私も「データ・テクノロジー×クリエイティビティ」という観点は、とても大事だと思いました。テクノロジーによって新しいアイディアが生まれることもあれば、アイディアが先にあって、このテクノロジーを活かせば実現できるという流れでBXが進むこともあると思います。世界に新しいデジタル技術がもたらされたことで、ビジネスが大きく変わって、そこから新しいアイディアが創発される。このようなアイディアとテクノロジーの掛け合わせこそが重要であると思います。

本條 「BXを推進するために、データ・テクノロジーとは、企業の営みに生活者を混ぜるためのインフラである」
これまでの議論で「DX」と「BX」の違いを考えると、DXは顧客起点によってスタートすることができますが、BXは企業の中に確固とした意志がないと始まらないように思いました。その上で、顧客に喜んで参加してもらうためにデータ・テクノロジーが重要になる。生活者インターフェースとはそうしたこと全体を指すのではないか、という私の解釈も含めて、こういう書き方をしました。

中村 日頃からデータやテクノロジーを中心に考えているところがあって、ともするとブランドのことをあまり考えない場面も多かったりします。でも今日、皆さんと議論させていただいて、我々がやっていることと、その先にあるブランドの変革がどう繋がっていくのかをしっかり考えなければと改めて思いました。
例えば「スマートシティ」という言葉がありますが、「スマートシティが欲しい」と言っている生活者はいません。そこにある価値や意味を解きほぐして、そのサービスを提供しようとしている企業に生活者からの新たな愛着をもってもらえるように設計するにはどうしたらいいのか。皆さんと議論を深めながら、自分としてもあらためて考えるきっかけになりました。本当にありがとうございました。

次回(第9回 BXラウンドテーブル)は、最終回「BX(ブランド・トランスフォーメーション)とは何か」を予定しています。
連載「BXラウンドテーブル」アーカイブ
【第8回 データ・テクノロジー】
前編:デジタルで進む「生活革新」と「バリューチェーン革新」
■後編:全体ディスカッション「データ・テック×クリエイティビティ」がブランドを創る ※本記事
【第7回 コミュニティ】
前編:コミュニティはマーケティングを変えるのか?
後編:全体ディスカッション「ブランドコミュニティの新たなる定義」
【第6回 商品・サービス】
前編:商品・サービスの鍵を握る“生活者体験”の未来
後編:全体ディスカッション「不満解消か、喜び提供か?これからの商品・サービスの役割」
【第5回 ビジネスプロセス】
前編:ビジネスプロセス(ビジネスモデル)の未来
後編:全体ディスカッション「共創の時代、ビジネスモデルをどう変えるか?」
【第4回 コミュニケーション】
前編:コミュニケーションとブランドの未来
後編:全体ディスカッション「“エコシステム化”するコミュニケーション」
【第3回 組織】
前編:BXで変わる、これからの組織と人材
後編:全体ディスカッション「動的でオープンな組織は本当に成立するのか?」
【第2回 パーパス】
前編:パーパスと生活者価値から考える「これからのよいブランド」
後編:全体ディスカッション「なぜ今、パーパスが重視されるのか?」
【第1回 経営とブランド】
前編:研究と実務の融合から生み出す「新しいブランド論」(巻頭言)
後編:全体ディスカッション「なぜ今、経営にブランドが必要なのか?」

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事