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経営のコトダマ 第16回 信頼のコトダマ ひきたよしあき

2019.10.08
政治、行政、大手企業などのスピーチライターを務め、「言葉の潜在的なちから」をテーマに子どもからビジネスマンまで読める著作多数。
明治大学をはじめ様々な教育機関で熱弁をふるう博報堂スピーチライターひきたよしあきが、企業経営における言葉のちからを綴る。

様々な大学で、講義中にスマートフォンの持ち込みを
認め始めています。

講師の裁量に任されていますが、以前のように
絶対禁止というわけではありません。
大学によっては、専用のアプリにアクセスする
ことで、簡単なアンケートや意見収集を教室内で
できるようにしている。
アクティブラーニングが進む中で、こうした
講義は普及しつつあるのです。

このほかにも、教室内にはいくつもの
モニターが設置されています。
学生は無理して黒板を見なくても、近くの
モニターを見ればいい。

しかしこういう状況を教える側は
戸惑います。

学生たちがそれぞれモニターを見ているので、
ちっとも講師を見てくれない。
わからないことがあれば、すぐにスマホを
いじってチェックしだす。
板書が大切だと思えば、写真にとる。
試験について発言すると一斉にスマホで
録音が始まります。

昭和に学生時代を送った私は、
大教室ではオペラグラスを持参して
黒板の文字を追いかけました。
隔世の感を感じざるをえません。

講義の途中にスマートフォンを見る
ことがあたりまえになってきた。

いえ、講義ばかりではありません。
会議の席でも、食事の席でも、
デートの最中でさえ、私たちは
無意識にスマホを見るようになっています。
罪悪感は以前に比べ、圧倒的に
薄くなっているようです。

しかし、こうした流れに対し、
欧米では、「ちょっと待て!」と歯止めを
かける風潮がでてきています。

ファビング(phubbing)

という言葉をご存知でしょうか。

これはphone と snubbing(冷遇)を
合わせた造語です。

2010年代の初頭から使われ始めて
いるようですが、スマホの進化とともに
色々なところで言われるようになりました。

今、この場で会議をしているにも関わらず、
スマホを眺めて、ここ以外の場所の誰かと
つながっている。

同じ時間を共有している人間よりも、
遠くの誰かの情報に心を寄せてしまっている。

こうした態度に対する嫌悪が強くなって
きています。

私自身、知らないうちにスマホ依存症に
なっているようで、しょっちゅう
SNSの動向を気にしたり、LINEに流れる
会話を気にしているところある。
会議中に、机の下で眺めていることが
しばしばあります。

こうした行為を面白く思わない人が
多いことを知っておかなければいけません。

「あぁ、ここよりも大切な場所が、この人には
あるんだ」

「今会っている私より大切な人がいるのね」

ちらっとこんな風に感じられてしまう。

やがてこの思いが溜まりに溜まって、あなたの
信頼を一気に崩す起爆剤になってしまうのです。

今回のビジネスのコトダマは、
脱ファビング(phubbing)。

今、ここにいる人を大切に思う気持ちを
忘れない。
これが、スマホが普及した時代の大切な
成功哲学なのです。

ここぞと思うときは、思い切って
スマホの電源を切る。

この小さな覚悟が、大きな信頼につながって
いくのです。

<経営のコトダマ>
第1回 あなたの会社が終わるとき
第2回 徹底的に戦いを省け
第3回 サービスとホスピタリティ
第4回 文学は、実学
第5回 未来を五感で味わいつくせ
第6回 体調のコトダマ
第7回 座右のコトダマ
第8回 激励のコトダマ
第9回 未来のコトダマ
第10回 気くばりのコトダマ
第11回 変化のコトダマ
第12回 先輩のコトダマ
第13回 効率のコトダマ
第14回 短気のコトダマ
第15回 世代のコトダマ

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