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ヒット習慣予報 vol.189 『デジタル差し入れ』

2021.10.05
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの鈴木です。
いよいよ10月に突入。今年も残るところ3ヶ月となりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか?私はというとここ最近はありがたいことに(?)仕事で非常に忙しくしています。
そんな忙しい仕事の中、少しほっこりしてかつこれからの新しい習慣になるかもしれないと感じる出来事がありましたので、ぜひこのコラムでも取り上げたいと思いました。

それは大切なお得意先へのプレゼンテーションを数日後に控えたある日。プロジェクトのリーダーを務める先輩からチーム全員へ、「デジタル差し入れ」と銘打ったコンビニ等で使えるポイントがアプリ経由でメッセージと共に送られてきたのです。以前は、プレゼンに向けた作業大詰めの時には会議室に誰かが食べ物や飲み物を差し入れしてくれて士気を上げていましたが、コロナ禍でそれができなくなった今「デジタル差し入れ」をその代替として贈ってくれたのです。

これが今までリモートで個別に作業をしていたみんなの気持ちを一つにし、リアル差し入れ以上の効果を発揮。最終的にはプレゼンテーションも成功しました。

デジタル上で誕生日やお祝い事のタイミングでプレゼントを送る習慣は以前ヒット習慣予報 vol.161『デジプレ』でも取り上げていましたが、プレゼントよりもさらに気軽かつ日常的にポイントやギフトを贈る「デジタル差し入れ」は、今後新しい習慣になるのではないかと考えました。

今年3月にヒット習慣予報 vol.161『デジプレ』で検索数が大きく伸びたとお伝えした「オンラインギフト」のキーワードを再度検索すると、5月まで検索数の伸びは続き、その後は落ち着いたものの高止まりしており、オンラインでギフトを送る行為が習慣化、一般化しつつあることがわかります。

出典:Googleトレンド

先程のプレゼン前の差し入れの他に「デジタル差し入れ」の例がないか考えたところ、非常に身近なところに思い当たることがありました。実は今年の夏私の子供の保育園でコロナのクラスターが出てしまい、子供が濃厚接触者認定を受けたため一家一同2週間の自宅隔離になりました。共働きの我が家は完全に困り果ててしまったのですが、そこに奥さんの友人がせめてものお見舞いにとフードデリバリーサービスのデジタルクーポンを送ってくれたのです。自宅隔離中はなかなか気軽に買い物にも行けないので助かったのはもちろんのこと、人に会えずに苦しい思いをしていた中、デジタルながらも人の温かみを感じられることができて精神的にもとても助けられました。

また、「デジタル差し入れ」は何も知り合いに贈るものだけではありません。昨年、ちょうどコロナがはじまった時期頃からリアルでのイベント等が難しくなったと同時に盛り上がりを見せている動画ライブ配信サービスのいわゆる「投げ銭」システム。ライブ配信中に視聴者が配信者にお礼や応援の気持ちを込めてオンラインで送金する行為ですが、チケット代とは別に自分の意思で贈る「投げ銭」はまさに「デジタル差し入れ」のひとつだといえます。

ではなぜ今このような「デジタル差し入れ」が増えているのでしょうか。
当然ながらコロナ禍で気軽に会ってギフトを渡せなくなったので、その代替としてデジタルでポイントやギフトを贈るようになったというのが一番大きな理由だと考えられます。それと同時に、キャッシュレス化が進む中「デジタル差し入れ」をするのに最適なサービスが増え、様々なオプションが出てきたことも要因だと考えられます。
さらに、「デジタル差し入れ」を日頃やっている人から話を聞くと、物品ではなくクーポン等を送ることが多い「デジタル差し入れ」はもらう方もあげる方もリアルより気を遣わないという話がありました。具体的な意見だと、職場で異性に下心なしに気軽な差し入れをしたい時ギフトや食事を贈るのは少し重いけれど、「デジタル差し入れ」なら気軽に送れるし、コロナ禍でともすると生まれてしまう人と人の分断を防げるというものがありました。

リアルの代替として出現したかのように見える「デジタル差し入れ」ですが、リアルよりも便利な側面がるとするとコロナ禍をきっかけとしたニューノーマルになるかもしれません。

以上、「デジタル差し入れ」を見てきましたが、キャッシュレスがさらに進む昨今において「デジタル差し入れ」の需要は今後もさらに高まりそうです。そしてそれに伴いまた新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

「デジタル差し入れ」のビジネスチャンスの例
■ リモート環境下でも職場の同僚複数人に簡単に一括で「デジタル差し入れ」ができる、「デジタル差し入れプラットフォーム」の開発。
■ 好きな芸能人やスポーツ選手に気軽にオンラインで差し入れをすることができる「差し入れ代行サービス」。
■ 食べものや商品だけでなく、マッサージ等、疲れた体を癒す「体験型デジタル差し入れ」。

リモートワークが依然長引いていますが、なかなか仕事以外の雑談を同僚とできない中、「デジタル差し入れ」は実に気軽なコミュニケーションのとっかかりにもなり得ます。ここ最近少し疎遠になってしまった人に、お久しぶりです!の意味を込めて「デジタル差し入れ」を送ってみてはいかがでしょうか?!

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

鈴木 康司(すずき・こうじ)
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局

ヒット習慣メーカーズ メンバー
2007年 博報堂に入社。
ヒット商品やヒット習慣には飛びつかずにはいられない、ドミーハー。好きが高じて、ヒット商品やヒット習慣を生みだせると良いなと思い日々奮闘中。休日は家でアイドルのDVDを見るのが好き(主にジャニーズ)。

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