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成功するD2Cビジネス設計のポイント フラクタ×博報堂
(連載:D2C支援 キーパーソンが語るVol.3)

2020.09.16
#D2C#博報堂グループ・D2C統合ソリューションチーム
ECとSNSを活用して成長する「D2C」(Direct to Consumer)ブランドが国内でも次々と登場しています。この新たなブランドビジネスに挑戦する企業の支援を目指す「博報堂グループ・D2C統合ソリューションチーム」のキーパーソンたちが、D2Cブランドビジネス成功のポイントについて語る記事を連載でお届けします。
第3回となる今回は、パートナーとしてチームに参画するフラクタの河野貴伸氏と、チームリーダーを務める博報堂の荒井が、成功するD2Cビジネス設計のポイントについて語りました。

株式会社フラクタ 代表取締役CEO
河野貴伸氏

博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 部長
博報堂グループ・D2Cソリューションチーム チームリーダー
荒井友久

「総合格闘技」としてのD2Cビジネス

──河野さんは、Eコマースを中心としたブランディングを手がける株式会社フラクタを8年前に設立され、D2Cブランドの立ち上げや運営コンサルティングにおいて数多くのご経験をお持ちです。フラクタと博報堂の協業のきっかけを教えていただけますか。

河野
昨年、ECサイト制作プラットフォームの活用について、荒井さんたちマーケティングシステムコンサルティング局の皆さんとディスカッションをしたのが最初の出会いでしたね。私たちはそれまで、主に中小規模の企業やスタートアップのD2Cビジネスを支援していました。一方、博報堂は大企業との取引において豊富な経験をお持ちです。二社の強みを組み合わせれば、新しいことができるのではないかと考えたのが協業のきっかけでした。

荒井
クライアントのD2Cビジネスを支援し成功に導くには、豊富な経験知が必要になります。私たちにはブランディングやUXデザインの経験や知見はありますが、D2Cビジネスという新しい領域の経験知はこれから積み重ねていかなければならないと考えていました。そんなときに河野さんと出会って、ぜひフラクタの知見をお借りしたいと思いました。

河野
その後ディスカッションを重ね、クライアントに共同で提案できる体制をつくりました。今年6月に「博報堂グループ・D2C統合ソリューションチーム」が発足し、我々もパートナーとして参画しています。すでに、提案段階のものも含めてかなりの数のプロジェクトが動いています。

──D2Cビジネスは、マスプロダクトとは異なるビジネス設計が必要とされると言われていますが、D2Cにおけるビジネス設計のポイントについて解説していただけますか。

荒井
D2Cについて説明するときにはいつも話すのですが、D2Cビジネスとは固定費ビジネスではなく変動費ビジネスです。まずはそのポイントをしっかり理解しておくことが非常に重要です。

マスプロダクトでは、プロモーションや流通・店舗の費用、人件費などのマーケティングコストは一般的に固定費です。固定費は営業利益に関わるコストですが、売上金額に関係なく発生するため、ビジネスの規模を拡大すれば利益率も上がります。

一方、変動費ビジネスであるD2Cは、顧客一人当たりの獲得効率をいかに上げるかが重視されるモデルです。獲得効率を上げれば、コストが下がる。つまり、コストが変動するわけです。このコストは売上総利益(粗利益)を構成する要素となります。獲得効率を上げるためには、顧客の「リピート」を増やすことが重要です。クライアントのビジネス構造を精査すると、獲得効率が悪いために、売れば売るほど粗利率が低くなり、場合によっては赤字になるケースも珍しくありません。

河野
商品戦略や価格戦略、販売戦略など、あらゆる戦略をまとめて考えなければならないのも、D2Cビジネスの特徴ですよね。私はD2Cを「総合格闘技」と呼んでいます。

荒井
おっしゃるとおりですね。もっとも、D2Cビジネスを構成する変数は、つきつめると4つしかないんです。「購買単価」「獲得コスト」「離脱率」「購買頻度」です。例えば、購買単価は商品戦略に、獲得コストは販売戦略に関わってくるのですが、各変数をベースに戦略を構築していきます。

河野
中小規模の企業の場合は、関与する部署や関係者も多くなく、それらの戦略や変数をトータルに捉えることができるのですが、会社の規模が大きくなると、関わる部署や関係者も多くなりすべてを統括することが難しくなります。

荒井
D2Cビジネスは、事業、マーケティング、デジタルマーケティング、基幹系システム、マーケティングシステム、ウェブサイト運営など、関係する部署が多岐にわたるため、それぞれの担当者の方とお話しし、D2Cビジネスの設計思想を共有していくことが欠かせません。

河野
D2Cビジネスとは、例えるならば、海の向こうにある魅力的な島のようなものだと思うんです。そこに向けて、いろいろな立場や役割の人たちが一つの船を漕いでいくわけです。その途中で嵐にあったり、方向を見失ったりしそうになることがあります。そこを乗り越えて、島に辿り着くための水先案内をすることが私たちの役割だと思っています。もちろん、島に着いた後はブランドや商品の魅力でビジネスを成長させていく必要があるわけですが、まずは島に到達しないことにはビジネス自体が始まりません。

ビジネスの構造変革を支援するソリューション「D2Cビジネス設計プログラム」

──その「水先案内」となるソリューションの一つが、博報堂グループとフラクタが共同で開発した「D2Cビジネス設計プログラム」ですね。これはどのようなプログラムなのですか。

荒井
先ほどご説明したように、D2Cビジネスの設計において重要なのは、従来の固定費ビジネスから変動費ビジネスに構造を変えることです。構造が変わると、費目設定も変わります。また、それぞれの費目のノーム値(基準値)も新たに検討する必要があります。でもD2Cビジネスの経験値がないと、どんな費目があって、各費目にどのくらいかかるのか、なかなかわかりません。

そのため費目とノーム値を確認できるシミュレーションシートを今回フラクタと作成しました。シミュレーションシートは商材のカテゴリーごとに設定を変えられるようになっていて、各費目の数値を入れ、異常値があるとわかるようになっています。そのシートをもとにビジネスを設計していきます。

また、費目間の関係を可視化できることも、このプログラムの特徴です。事業には「大きな数値」と「小さな数値」があります。最も大きな数値がPL(損益計算書)だとすれば、小さな数値は例えば商品のウェブサイトのPVなどです。問題は、その間をつなぐ視点がこれまであまりなかったことです。PVがPLにどうつながり、どう利益に貢献しているのかなど、それぞれの数値の因果関係をトータルに把握できるようにしています。

河野
もう一つ、このプログラムには「ヘルスチェック」の機能もあります。D2Cビジネスにゼロから取り組むクライアントに対しては、ビジネス設計から支援しますが、すでにある程度D2Cビジネスを進めてきたのだけれど、あまりうまくいっていないというクライアントもいらっしゃいます。そんな場合に、ビジネス設計全体を検証し、問題点を洗い出していくのがヘルスチェックです。これは名前のとおり健康診断のようなもので、「身体」であるビジネスを診察して、健康状態をさまざまな数値で明らかにしていく作業と考えていただければわかりやすいと思います。

しかし、ヘルスチェックをして終わり、ではありません。とくに悪い数値がないのなら、今後も健康であり続けるための方法を一緒に考える。悪い数値が見つかったなら、それを改善していく。そんな継続的な取り組みが必要です。

荒井
ヘルスチェックをすると、いろいろな課題が見つかります。システム、UX、サービス、SEO──。それぞれの課題に対して、博報堂グループとフラクタのリソースをフルに活用して改善を支援していくことができるのがこの体制の強みです。

河野
そう、「検査」「診断」だけではなく、「治療」までしっかり支援していきたいですよね。

──プログラムリリース後のクライアントの反応はいかがですか。

荒井
D2Cという新しい領域にチャレンジするにあたって、不安を感じておられる企業は非常に多いようで、「こういうプログラムがあって助かる」という言葉をたびたびいただいています。ヘルスチェックに関しても、「事業を成長させるための課題が明確になった」という声が多いですね。

大企業とスタートアップの力を融合させていく

──この協業の中でお互いにどのような気づきがありましたか。

河野
今回博報堂グループの皆さんとご一緒する中で、皆さんが、売上など数字だけを追うのではなく、何がクライアントのためになるか、何がユーザーにとって幸せであるかを本気で考える姿を見てきました。クライアントに提案する内容も、論理的な裏付けだけではなく、感性も大切にしていて、クリエイティブで説得力があると感じました。クライアントと同じ方向を向いて一緒に成功を目指していく姿勢が素晴らしいと思っています。

荒井
フラクタの皆さんは、役割が細分化されていないことで一人ひとりが幅広い領域を見ることができるため、プロジェクト全体に関われるんです。今回ご一緒させていただいて、フラクタのように一人ひとりの守備範囲を広げて、いろいろな機能を柔軟に融合させていくことが必要だと感じました。

──最後に、今後の展望をお聞かせください。

河野
取り組んでいきたいことの一つは、「人のデジタルトランスフォーメーション」です。
D2Cビジネスの立ち上げを私たちがお手伝いしたとしても、その後そのブランドが成長し続けるためには、クライアントの皆さんでブランドを育て、ビジネスを回していかなければなりません。そのためのクライアントの人材育成も支援していけたらと考えています。

また、大企業が長年蓄積してきたビジネスのノウハウと、スタートアップなど中小規模の企業の新しいノウハウを融合し、それを日本企業全体の資産としていけるようなプラットフォームをつくりたいと思っています。大企業と中小企業をつなげて、それぞれの知見を共有し、海外企業に対抗していく。そんな仕組みを、博報堂の皆さんと一緒につくっていきたいですね。

荒井
それをまずは、D2Cの領域で実現させていけたらいいですよね。大企業とスタートアップなどの中小企業は、それぞれに強みがあります。それらをクリエイティブに融合させていくことができれば、日本全体のD2Cビジネスを大きく成長させていくことができるはずです。ぜひ、これからも力を合わせていきましょう。

河野 貴伸(こうの・たかのぶ)氏
株式会社フラクタ 代表取締役
Shopify 日本エバンジェリスト
ジャパンEコマースコンサルタント協会講師
元 土屋鞄製造所 デジタル戦略担当取締役

2000年から「ショッピング体験のエンターテイメント化」を目指し、EC制作、楽曲制作、CG制作を主体としたクリエイティブ活動を開始。近年は「Eコマース」から「ユニファイドコマース」への進化に関わる人材育成とコマースを中心としたブランドUXの改善に重点を置いたブランドビジネスの支援、及びコマースプラットフォーム「Shopify」の普及活動を全国で展開中。

荒井 友久(あらい・ともひさ)
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 部長

2012年博報堂入社。事業戦略・マーケティング戦略から情報システム開発までを一気通貫して支援する、ストラテジックプラニングディレクター。大手SIerの経営企画を経て、大手メディアサービス企業の不動産広告事業における事業企画・営業推進にて、事業を成長させる事の難しさ・泥臭さを最前線で経験する。その後、経営コンサルティングファームにて第三者として事業支援を行った後、クリエイティブとの融合による、新しい事業支援のあり方を作るために博報堂に転身。

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