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D2Cへの挑戦を成功に導くために
(新連載:D2C支援 キーパーソンが語る Vol.1)

2020.07.10
#D2C#博報堂グループ・D2C統合ソリューションチーム
ECとSNSを活用して成長する「D2C」(Direct to Consumer)ブランドが国内でも次々と登場しています。この新たなブランドビジネスに挑戦する企業の支援を目指して、「博報堂グループ・D2C統合ソリューションチーム」が立ち上がりました。チームのキーパーソンたちがD2Cブランドビジネス成功のポイントについて語る記事を連載でお届けします。
第1回となる今回は、チームリーダーを務める2人が国内のD2Cブランドビジネスの現状や、企業のD2C事業の支援にかける思いなどを語りました。
左から、山形健、荒井友久

博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 部長
荒井 友久

博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 部長
山形 健

D2Cブランドビジネスとは

──荒井さんは、デジタルトランスフォーメーションの専門家として、山形さんはUXデザインや事業開発の専門家として、それぞれの立場からD2Cブランドビジネスに関わられています。はじめに、D2Cブランドビジネスの特徴を説明していただけますか。

荒井
D2Cブランドのビジネスモデルを一般的な定義で説明すると「自社で企画・開発・生産した製品を、自社で制作したECサイトを通じて販売する」となりますが、D2Cブランドの最大の特徴は「ブランドのファン育成を重視する」という点です。ファンにSNSで拡散してもらって、さらにファンの輪を広げていくこともビジネスモデルの中に組み込まれています。

山形
ベンチャー発祥のブランドが多く、最初に熱狂的なファンがついて、広まって売れていくというプロセスをたどっていますよね。マスブランドと比べると、成り立ちも生活者からの見え方も全く違います。マスブランドが目指すのは、そのカテゴリーのシェア1位になってカテゴリーの代名詞になること。それに対してD2Cブランドは、一人ひとりのユーザーの「マイブランド」になることを目指します。それを実現するために、ブランドのビジョンや世界観を強く打ち出すのが特徴です。

荒井
ビジネスの構造から見ると、一般的なマスブランドのマーケティング費用は固定費になります。店舗や流通の費用、広告販促費、人件費などですね。固定費は売上の多寡にかかわらず発生するコストなので、ビジネスの規模が拡大し、損益分岐点を超えれば一気に利益が上がります。だからビジネス目標は市場シェアの獲得になる。一方、D2Cを含むECは変動費ビジネスです。重視されるのは顧客一人当たりの獲得コスト。獲得効率が上がれば上がるほど、つまり、より少ないコストで顧客を獲得できればできるほど利益が出ます。規模を拡大して利益を上げる従来のビジネスとは構造が異なるわけです。

──ECとD2Cは何が違うのですか?

荒井
ECの課題は、参入障壁が非常に低いので、競合が多いことです。競合が増えればそれだけ新規顧客の獲得コストは上がります。その環境で生き残るにはどうすればいいか。顧客の「リピート」を増やすことです。一度買った人にブランドのファンになってもらい、その後も繰り返し買ってもらうことができれば、顧客獲得に多額のコストをかける必要はなくなり、獲得効率が上がります。それが、D2Cが目指すビジネスモデルです。

山形
狭く深いマーケティングと表現してもいいかもしれませんね。限定された市場に向けて尖った商品を出していくのがD2Cの一つの定石です。そしてD2Cがユーザーに訴えかけるのはスペックの高さではなく、エモーショナルな価値。ストーリー、デザイン、体験──。そういった要素でユーザーの心を捉えてファンを作っていくブランディングが非常に特徴的です。

国内D2C市場の状況

──D2Cはアメリカで生まれたモデルですよね。日本でもD2C市場は拡大しているのでしょうか。

山形
「D2C市場」という明確な定義はまだないので、規模を正確に把握するのは難しいのですが、実感値で言うと、国内で成功しているD2Cブランドは現時点で30から50くらいではないでしょうか。また直近では新型コロナウイルスの影響で、新たな販売方法を模索する必要に迫られた企業が、D2Cビジネスに本格的に取り組もうとするケースも増えてきています。

荒井
実際にご相談が増えていますよね。ただ、D2Cブランドはそんなに簡単にできるものではないんです。「すでにある商品を、今後はD2Cとして売りたい」というご相談もありますが、単なる販売方法の変更ではなくて。既存の流通で簡単に買えてしまうものはECではなかなか売れません。
また、D2Cはある程度ニッチなターゲットに尖った商品を販売することになるため、売上規模はクライアントの既存事業からすれば、かなり小さくなります。D2Cの立ち上げをクライアントがやる場合は、まずはD2Cとしてしっかりファンを作り、そのあとでどのようにして売上規模を自社として期待する水準に高めるかを最初から設計しておく必要があります。商品カテゴリを広げる・既存流通に乗せていく等、方法は様々です。

山形
D2Cは新規事業そのものですからね。プロモーションのように、ちょっとやってみましょうかと気軽にスタートするのは無理です。でも、色々な企業が色々な切り口でD2Cに興味を持ち始めていて、市場が広がろうとしていることは確かです。最近では、D2CブランドがマスブランドのようにテレビCMを流し始めたりもしています。

荒井
ユーザー側の変化をみると、自分がファンになった商品を「D2C」という言葉で認識している人は少ないと思いますが、多少価格が高くても、こだわりをもったD2Cブランドを「マイブランド」として愛好する生活者は増えていますよね。

山形
ファッションなどで自分を演出して周囲からの差別化を図るという生活者行動は以前からあったわけですが、Instagramを始めとするSNSの普及で、自己演出の欲求はより高まっています。その自己演出欲と非常に相性がいいのがD2Cブランドです。今後、D2Cブランドの愛好者は間違いなく増えていくと思います。

博報堂グループならではの支援体制

──先月、グループ横断の「博報堂グループ・D2C統合ソリューションチーム」が発足しました。発足の経緯をお聞かせください。

山形
D2Cブランドビジネスは、ブランド設計、ビジネス設計、商品設計、システム構築を含めたバリューチェーンの整備、マーケティング、店舗展開など、広範な領域にまたがります。これまでは博報堂グループ内の各領域の専門家や専門会社が、それぞれの得意領域でクライアントのD2Cビジネスを支援してきました。それらの個別の活動をグループ内で統合して一気通貫の体制を構築し、あらゆる機能をワンストップで提供できれば、今まで以上にクライアントに貢献できるのではと考えて立ち上げたのがこのチームです。

荒井
この1年ほど、メーカーを中心としたクライアントから、ユーザーとの新しい接点を作れないかという相談をよく受けるようになりました。その答えの一つがD2Cだと思います。一方で、クライアントにとってD2Cビジネスは新規事業で、予算もそんなにないし、稼働できる人数も限られている。そんな状況で色々な会社を探して分割発注することは非効率で、ビジネスの構築から運営までまとめて頼めればそれがベストのはず。このチームは、そのようなニーズに応えていきたいと思っています。

博報堂グループ・D2C統合ソリューションチームのサービスメニュー全体像

──チームの体制や、具体的な支援内容について教えて下さい。

荒井
現在は、博報堂社内の複数の組織と、博報堂グループの7つの会社(SEEDATA、quantum、WHITE、博報堂プロダクツ、エクスペリエンスD、日本トータルテレマーケティング、博報堂ダイレクト)、そして外部パートナーとして参画して下さっている株式会社FRACTAという陣容です。各社の役割は重なる部分もあるのですが、それぞれの知見とスキルを掛け合わせることで、D2Cのあらゆるフェーズの支援が可能です。FRACTAはD2Cブランドビジネスの実践者として日本でも有数のプレイヤーで、参画していただくことで非常に強固な体制を構築できました。

山形
サービスはオーダーメイドというより、セミオーダーに近いですね。現在8つのプログラムを作っていて、クライアントのビジネスのステージに応じて、必要なものを組み合わせながら適宜提供できるようにしています。プログラムを活用せずに、クライアントの要望に応じてカスタマイズしたサービス提供を行うことももちろんあります。

──D2Cビジネスを支援する企業はほかにもありますが、博報堂グループの強みや独自性はどこにありますか?

山形
企業の課題解決のヒントは、生活者の側にある。真っ先にそう考えるのが私たちの文化で、それがすなわち「生活者発想」です。生活者の感情を捉えてファンを作るD2Cというモデルは、とりわけ生活者発想が求められるビジネスだと感じています。企業のニーズだけではなく、ユーザーが使いたいと思うか?勧めたくなるか?という生活者側の視点を常に取り込みながらブランドを設計していく。博報堂グループの強みが活きてくると思います。

荒井
D2Cビジネスに必要な全プロセスを一気通貫で提供できる体制をつくっている会社は多くはありません。生産管理やフルフィルメント(ECでの注文から配送までの業務)のような、従来の広告会社では対応できていなかった新しい領域もあります。また、D2Cの成功を阻む「ブランドビジネスとECビジネスを同時に実現する」という高いハードルも、双方の専門家を多数有している博報堂グループであればマネージメントすることができます。そういったところが強みだと思っています。

D2Cブランドが世の中を楽しくする

──最後に、D2Cビジネスの見通しや、今後の意気込みをお聞かせください。

山形
現在は、「D2Cブランド」や「D2C企業」という“実体”があるように思われていますが、見方によっては、D2Cとはブランドが成長していく過程の、一時的な “状態”と考えることもできます。ブランドが少数のファンに熱狂的に支持される段階がまずあって、そこからファンが増え、市場が拡大し、マスブランドへと成長していく。今後そのような成長プロセスをたどるD2Cブランドも増えていくと考えています。

荒井
マスブランドの側からも、D2Cが重視する“LTV”(生涯顧客価値)を上げたいという声が聞こえるようになってきました。あらゆるブランドがD2C的になっていくとも言えますね。
そして、「D2Cの出口」を模索する動きも活発になりそうな気がしています。ブランドを確立した後の成長戦略として、ロットを増やすのか、既存の流通インフラを活用するのか、広告展開で認知を高めていくのか。その出口戦略づくりのフェーズでも、クライアントの力になりたいと思います。

山形
D2Cブランドが次々に登場することは、生活者にとってはシンプルに楽しいことだと思います。個性豊かで魅力的な商品が世の中に増えるということですから。私たちもその楽しさ、面白さを生み出すような提案を仕掛けていきたいですね。

荒井
私は“ソロバン担当”として、しっかりとビジネス設計を行い、企業がD2Cブランドで確実に「儲ける」ことができる仕組みづくりを支援していきたいと思います。クライアントがビジネス成果を出せるモデルをいかにつくれるか。それがこれからの勝負になりそうです。

荒井 友久(あらい・ともひさ)
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 部長

2012年博報堂入社。事業戦略・マーケティング戦略から情報システム開発までを一気通貫して支援する、ストラテジックプランニングディレクター。大手SIerの経営企画を経て、大手メディアサービス企業の不動産広告事業における事業企画・営業推進にて、事業を成長させる事の難しさ・泥臭さを最前線で経験する。その後、経営コンサルティングファームにて第三者として事業支援を行った後、クリエイティブとの融合による、新しい事業支援のあり方を作るために博報堂に転身。

山形 健(やまがた・たけし)
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 部長

2004年博報堂入社。ストラテジックプラニング局を経て、2007年より博報堂ブランドデザイン(当時)に所属。ダイレクトマーケティングのPDCAや、BRICs諸国でのセールス基盤構築などのマーケティング領域業務を経て、神経科学を基にしたリサーチプログラムの研究および開発、文化人類学発祥のエスノグラフィ実践などデザインリサーチ・UX領域業務に携わる。近年では、商品開発、サービス開発、事業開発の支援業務を多く手掛ける。著書に『ビジネスは「非言語」で動く』 (アスキー新書)がある。

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