THE CENTRAL DOT

朝ドラが沁みはじめるのはアラフォーから!?「ネタバレ」検索分析(連載:デジノグラフィで読み解く〇〇vol.11)

2023.01.12
#デジノグラフィ#トレンド#生活総研
ネット上には多様な生活者の声があふれています。中でも、ブラウザ検索のキーワードとして打ち込まれた文字列には、生活者自身の思考が素直に投影されています。あの細長い検索窓には、生活者が疑問に思っていること、分からないこと、悩んでいることが、時として検索ワードというより心情を吐露する文章になって打ち込まれているのです。
本連載では、そんな検索ビッグデータに現れた生活者の移ろいゆく心を様々な博報堂社員の視点でご紹介していきます。ベースになっているのは、博報堂生活総合研究所が提唱する、デジタル上のビッグデータをエスノグラフィ(行動観察)の視点で分析する手法「デジノグラフィ(https://seikatsusoken.jp/diginography/)」の考え方です。
ビッグデータ分析、というとなんだか肩に力が入ってしまっていけません。リラックスした気分で、データの向こう側にある現代社会を生きる生活者の日々に思いを馳せられる半分エッセイのようなコラムを連載でお届けします。
※本コラムは、Webメディア「NewsPicks」の「トピックス」に掲載された記事の転載です。

八田 芙美香
株式会社博報堂 第一BX マーケティング局

「ネタバレ」 物語の展開や結末といった重要な部分を暴露すること、ネタをばらしてしまうこと、などを意味する表現。
Weblioより)

年末年始もあっという間に終わってしまいましたが、みなさんいかがお過ごしですか。私は寒いと(暑くても)家にこもりがちで、スマホやテレビにかじりついて、あらゆるエンタメコンテンツを消費しがちなタイプです。みなさんは、自由な時間があったら、どんなことをしていますか?

さて、そんな今回のフックワードは「ネタバレ」です。
コンテンツ好きな私は、意外と自分では検索してこなかったワードです。なぜなら、すこし“禁じ手”のように感じていたので。この記事も、「ネタバレ検索」を推奨するものではありませんので、どうぞご理解ください。同じタイミングで頻繁に検索されているキーワードから、人々の興味関心を深堀してみたいというつもりです。

ヤフー株式会社が提供するデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使って、2019年~2021年の年間検索データの中から、「ネタバレ」を含む検索の上位10位をランキングにしています。(見やすくするために「ネタバレ」というワード自体はランキング表記から削除しております。)※「DS.INSIGHT」では統計化されたデータのみを扱っており、個人を識別可能な情報は含まれません。

韓流にもハリウッドにも負けてない!?ジャパンコンテンツ

まず驚きだったのは、ほとんどが国内コンテンツで占められていたことでした。中でも、「漫画」と「朝ドラ」(※本コラムでは、「朝ドラ」はNHKの「連続テレビ小説」を指しています。)が多くを占めていて、過去3年振り返っても、常に多くの人が検索していました。なにかと話題になりやすい韓流ドラマやビックタイトルのハリウッド映画よりも、毎週・毎日のように連載・放送されているものの、見逃した内容や続きが気になって仕方がない、というような感じでしょうか。

朝ドラが沁みはじめるのはアラフォーから

今度は、2021年のデータを、世代別にランキングにしたものをみてみましょう。全世代TOP10で特徴的だった「漫画」を黄色に、「朝ドラ」を水色で色付けしています。

かなりはっきり傾向がわかれたのではないでしょうか。30代までは「漫画」のことばっかり(?)考えているのに、40代から「朝ドラ」へのギアが徐々に入り始めて、50代になると一気に「朝ドラ」が沁みてくる、そんな日本人とコンテンツとの向き合い方のようなものを感じます。“毎日更新”系の漫画をスマホで読んでいる30代の私自身もそのうちの一人で、よくあてはまっています。「朝ドラ」はあまり観てきていませんが、もう数年したら、沁みてくるようなので楽しみです。
また「漫画」が子供向けのものではない、というのも日本の特徴だなと改めて感じます。10代も何気に「朝ドラ」を観ていることがわかりますが、家族の朝食の時間の“ネタ”になっているのかもしれませんね。

「ネタバレ」メジャー作品を抑え上位に食い込んだスマホ漫画は?

ランキングをよく見てくれた方は、「私ってサバサバ」というタイトルが気になったかもしれません。2021年全体で10位、20代・30代では5位、40代でも10位にランクイン。

これは、マンガアプリ中心に配信されている『ワタシってサバサバしてるから』という「スマホ漫画」のタイトルです。その他ランクインしている漫画は、アニメ化・実写化されているような超メジャータイトルばかり。そんな中に食い込むこの漫画は、海賊王になろうとしたり、巨人や呪いと戦ったり、タイムリープしたりしません。つまり、“主人公がハラハラドキドキ奮闘する別世界”の話ではなく、“自称サバサバ系の主人公が働きながら奮闘(?)する日常”の話です。別世界スペクタクル漫画も楽しみながら、たまにはスマホ片手に日常の延長線上に起きていそうな“あるある”にもクスっとしている、そんなバランスも漫画好きな日本の大人たちの特徴かもしれません。

見始めてから後悔したくない!?「あらすじ」検索の気持ち

「ネタバレ」と「あらすじ」、なんとなく同じような気がするかもしれませんが、TOP10の傾向には違いがあります。「あらすじ」の方では、韓流・華流のドラマタイトルがランクインしてくるんです。

これは、見始めてしまう前に概要を知っておきたい!いう検索インサイトからくるものかと考察します。というのは、韓国では、一般的な日本のドラマと違い週に2回放送があって24話構成が多かったり、人気が出て2クールにわたることでさらに増えたりして、長編シリーズであることが特徴です。6位に位置している中国ドラマの『如懿伝』も同様で、なんと全87話! 面白そうだから気になるけど、見始めて“違うな”って後悔したくない、そんな気持ちがみえてきます。これは1話15分とはいえ150話ほどの「朝ドラ」にも共通している要素なので、同じような理由でランクインしているのかもしれません。

世界中のエンタメコンテンツをいつでも好きな時に観たり読んだりできる時代ですが、日本人はいくつになっても、やっぱり「漫画」と「朝ドラ」が好きで気になって仕方がない、そんなことが改めてわかったような気がします。でも、韓流やハリウッドだってもちろん面白い!ので、エンタメコンテンツ好きには時間が足りません。

八田 芙美香
株式会社博報堂 第一BX マーケティング局

博報堂にて、マーケティング・ブランディング・コミュニケーションとあらゆる企業活動の戦略立案のお手伝いをさせていただいています。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事