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センスの良い「おすすめ」出来ていますか?(連載:デジノグラフィで読み解く〇〇vol.10)

2022.12.22
#デジノグラフィ#トレンド#生活総研#買物研
ネット上には多様な生活者の声があふれています。中でも、ブラウザ検索のキーワードとして打ち込まれた文字列には、生活者自身の思考が素直に投影されています。あの細長い検索窓には、生活者が疑問に思っていること、分からないこと、悩んでいることが、時として検索ワードというより心情を吐露する文章になって打ち込まれているのです。
本連載では、そんな検索ビッグデータに現れた生活者の移ろいゆく心を様々な博報堂社員の視点でご紹介していきます。ベースになっているのは、博報堂生活総合研究所が提唱する、デジタル上のビッグデータをエスノグラフィ(行動観察)の視点で分析する手法「デジノグラフィ(https://seikatsusoken.jp/diginography/)」の考え方です。
ビッグデータ分析、というとなんだか肩に力が入ってしまっていけません。リラックスした気分で、データの向こう側にある現代社会を生きる生活者の日々に思いを馳せられる半分エッセイのようなコラムを連載でお届けします。
※本コラムは、Webメディア「NewsPicks」の「トピックス」に掲載された記事の転載です。

博報堂買物研究所 所長
垂水 友紀

博報堂買物研究所の垂水です。今回は、買物にまつわる発見をお届けします。

情報があふれている昨今、「誰かのおすすめ」を信頼して、モノを買う機会が増えています。おすすめは身近な人からもありますが、ネットの検索においても同じです。私は最近、友人の誕生日プレゼントを購入するときに、「誕生日プレゼント おすすめ」と検索して情報を集めました。

そこで今回は、買物の下調べの時によく使う「おすすめ」をフックワードにしました。
ヤフー株式会社が提供するデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使って、2021年1年間の検索データの中から、「おすすめ」を含む検索の上位10位から傾向を探りました。

※「DS.INSIGHT」では統計化されたデータのみを扱っており、個人を識別可能な情報は含まれません。
世の中の人は、どんな商品やサービスについて「おすすめ」を求めているのでしょうか?

10位以内に7つ家電がランクイン

家電は数年に1度の買物。
絶対に失敗したくないけれど、自力で調べるには大変だから、詳しい人に聞きたい!という気持ちはとても分かります。実際に「洗濯機 おすすめ」と調べてみると、同居人数や手入れの方法など、何を基準に選べばよいか?という指南から始まる記事にたどりつきます。
売れ筋情報ももちろん気になるところですが、人それぞれ違う環境やニーズにあわせて、こんな商品が”おすすめ”という情報を求めているようです。

また「タブレット」「パソコン」などのガジェットがランクインしていますが、「スマホ」が見当たりません。ちなみに「スマホ おすすめ」は384位、「スマートフォン おすすめ」はもっと低い941位でした。
念のため「スマホ」を含む検索キーワードの上位をみると、1位「スマホ」単体、2位「スマホケース」、3位「格安スマホ」でした。格安スマホの普及で、機能より値段を重視して選ぶ人が増えているからか、あえてスマホのおすすめを調べる人は少ないのかもしれません。

60代はコロナ関連の家電が3位に

60代で特徴的に高かったのは、「パルスオキシメーター」。血液中の酸素飽和度をはかる機器です。新型コロナウイルスの影響で初めて知った人も多いのではないでしょうか。60代は、自分がコロナにかかってしまった時のために「備える意識」が強いことがうかがえます。
実際に検索すると、国から承認・認証されている、信頼のおける機器の情報を求めていることがわかります。

20代はモノよりコト。出会い、仕事、エンタメ!

20代は他の世代と違い、出会いを求める「マッチングアプリ」、仕事に役立つ「副業」や「資格」、暇つぶしや楽しむためのエンタメ「漫画」や「アニメ」がランクイン。

若い年代は、商品ではなく、仕事やコンテンツを含め人生を豊かにする体験や経験、つまりモノよりコトのおすすめ情報を探していることがわかります。

センスの良いおススメ情報とは?

「〇〇 おすすめ」を検索している背景には、家電のように「失敗したくない」、パルスオキシメーターのように「信頼できるものは?」、漫画やアニメのように「自分の好みに合うものは?」など、検索するものによって込められた気持ちが違いそうです。

おすすめは、売れ筋やランキングといった「量の情報」と違って、人の価値観が入った「質の情報」

誰かにおすすめを尋ねられた時、「おすすめ」の一言に込められた相手の期待を理解しないままだと、ピンとがずれた回答になってしまうかもしれません。

逆に、なるほど!とセンスの良いおすすめをしてくれる人は、尋ねた人の期待を瞬時に読み取ってアドバイスしてくれる人かも。そう考えると、今までの私のおすすめは、独りよがりな情報になっていたかもと、不安になってきました。

垂水 友紀
博報堂買物研究所 所長

生活者の買物体験をより良くしていくために、ショッパー・インサイトを起点に、ソリューション開発や対外的に研究発表を行っています。

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