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パーパス定義に欠かせない未来発想/BID未来洞察チーム×LEAD2025プロジェクト
(連載:ブランド・トランスフォーメーション vol.9)

2021.12.22
#コンサルティング#ブランディング
企業の存在意義を社会に表明する「パーパス」は、どんな思考やプロセスで定義すればよいのか。そこで「未来発想」はどんな役割を果たすのか。HAKUHODO X CONSULTINGのメンバーでもあり、未来発想を専門としている4人のコンサルタントに、パーパスを策定するための未来洞察や未来選択の意義を語ってもらった。

博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 未来洞察チーム 竹内慶・杉本奈穂
博報堂「ネクスト・マーケティングLEAD2025」プロジェクト 古賀晋・原田真由
(写真左から竹内・原田・古賀・杉本)

パーパスになぜ未来発想が必要か

─今日は、「未来」を起点としたアプローチで企業支援に取り組んでいる2つのチームにお話をうかがっていきます。最初に、簡単なチーム紹介からお願いします。

杉本(博報堂BID)
私と竹内さんは、ブランディングとイノベーションの専門組織である博報堂ブランド・イノベーションデザイン(BID)局に所属し、未来洞察からバックキャストするアプローチで企業のブランド開発やイノベーション支援を行っています。最近では、これまで培ってきた歴史の延長線上に、自分たちはどういう未来の創造を目指すのかという視点で企業やブランドのパーパスを策定し、それをブランディングや商品開発につなげていくような仕事が多くを占めるようになっています。

原田(LEAD2025)
私と古賀さんが携わる「ネクスト・マーケティングLEAD2025」は、未来社会の変化をシナリオ化してマーケティングに活かす社内横断プロジェクトです。未来は不確実ですが、人口動態のように、長期的な数字の変化から見えてくる未来の潮流もありますよね。また、ミレニアルやZ世代といった若い世代に注目してみると、彼らが創造している新しい未来の兆しをたくさん発見できます。データから見える未来像と、新しい社会変化の兆しから未来のシナリオや仮説をつくり、企業の中長期戦略や新規事業戦略に活用していただくことが私たちのミッションです。

──皆さんは企業やブランドのパーパス策定や、パーパスを起点とした業務に関わる機会が多いとうかがいました。そもそも「パーパス」と「未来」にどういう関係があるのかを教えていただけますか。

竹内(博報堂BID)
端的に言えば、パーパスとは「自分たちが創り出したい未来社会の姿を明らかにした上で、その社会での自社の役割を決めること」です。未来像をちゃんと描けていなければ、これからの社会における自社の存在価値を明確にすることはできませんよね。パーパス策定において、未来発想は不可欠なものです。
ただ、VUCAの時代ともいわれますが、基本的に未来は不確実です。それでも企業は未来社会に責任のある一員として、どんな態度や行動をとっていくかが生活者や社会から厳しく問われている。だからこそ、「未来は自分たちで創っていくものである」という能動的な姿勢を持つことが大切だと思っています。

古賀(LEAD2025)
コロナによって、未来はまったく想定通りにいかないことが分かりましたよね。それでも未来をイメージし、能動的に未来を切り開いていかないといけない。危機をチャンスに変える、新しい未来の捉え方が必要になっています。
我々は、これからは「未来選択」という考え方が重要になると考えています。パーパスを策定するためにも必要なステップです。HAKUHODO X CONSULTINGが企業を支援する場合も、まず未来洞察と自社洞察を行い、次に未来選択、そしてパーパス策定という流れで進めています。未来社会の動向と自社の強みを掛け合わせて、目指したい未来像を能動的に選択する。そして、選んだ未来を実現するための自分たちの役割をパーパスという形で定着させるということです。

原田
企業の方からも、未来選択という考え方に共感して頂けることは多いですね。以前だと、遠い未来の話になると議論も思考もぼんやりしがちというか、抽象的な話で終わりがちでした。目の前の売上に切迫しているような業界だとなおさらで。しかしコロナという共通の経験を経て、「予測しづらい未来に備えて、今のうちから複数の選択肢を持っておこう」と考える企業が増えたと感じています。

杉本
多くのクライアントが、業界の視点に凝り固まってしまって、広い視野で未来を考えられなくなることへの危機感を感じているように思います。私が担当しているプロジェクトでも、たとえば数十年後の業界の未来像を、不確実性がかなり高い内容も交えて幅広く洞察した上で、ブランドのパーパスや新しい価値を規定していくワークデザインが違和感なく受け入れられていて、これも最近の変化だと思います。

生活者にとっての未来像

──未来洞察や未来選択というキーワードが挙がりましたが、たとえばどんな未来をイメージしたり、検討したりすればよいのでしょうか?

竹内
未来洞察の方法は多様で、博報堂の中にも色々なアプローチのチームやプログラムがあります。私や杉本さんは生活者発想を起点とした未来洞察を強みにしていますし、世の中のリアルなメガトレンドや社会動向をベースにしているのがLEAD2025ですよね。

杉本
昨年、生活者自身が未来をどう捉えているかをしっかり把握したくて、生活者視点での意識調査を実施したんです。その中から、企業が未来を考える際のヒントになりそうな結果をいくつかご紹介します。
最初の設問で、「20年後の未来と聞いて、どんなことを思い浮かべるか?」と自由回答で尋ねてみたんですね。すると、6割以上の人がテクノロジーについて言及していました。3割は未来の社会に関する内容でした。この結果にさらに踏み込んで、生活者がこれからのテクノロジーと未来社会をどのように捉えているかという観点で、生活者のタイプ分類を試みました。それがこの「未来の展望クラスター」です。

クラスターⅠはテクノロジーの進化に期待していて、社会の多様性を認め、未来は豊かになるなど未来にとてもよいイメージを持っている。クラスターⅡはテクノロジーは便利と信じているけど、他者とのつながり欲求が相対的に希薄な印象を受ける人たちです。クラスターⅢはテクノロジーにも世の中の変化にも無関心。クラスターⅣはテクノロジーは世の中をよくするけれど、自分の乗り遅れ不安や格差への警戒心が強い。Ⅴはテクノロジーが世の中を良くすると思わない、加えて世の中全般に対して絶望感の強いネガティブな人たちでした。

この調査はコロナ感染拡大の直前(2020年2月)に実施したのですが、拡大後(同8月)に再調査したところ、大きな変化がありました。テクノロジーに特に否定的なクラスターⅤの「テクノロジーは世の中をよくする」という回答が、他のクラスターと比べて顕著に増加していたんです。世の中の大きな変化の中で、何か感じるものがあったのだと思います。テレワークが進んでデジタルツールを使う機会も増え、ワクチンなど医療技術のニュースにも多く触れましたし。

原田
このクラスター分析の結果は、これからの顧客接点のつくり方にも関係してくるように思います。LEAD2025でも注目しているのですが、顧客接点って今はいろんな選択肢がありますよね。たとえばライブ配信は、たくさんの人たちが場所を越えて同じ体験を共有できる仕組みで、投げ銭システムで熱量も可視化されて、みんなの体験が一つの強い顧客接点に集約されています。おそらくクラスターⅠの人たちは、そうした新しい接点に価値を感じていると思うんです。
一方で、クラスターⅡは、もっと個々人の体験がデジタル化されることを重視しているような気がしますね。自分の空いた時間にパソコンやスマホで、いつでもブランドにアクセスできたり、スマホで「ブランド独り占め体験」みたいなことができると、より購入に繋がるとか。
企業側からすると、顧客接点を一つに集約するのか、それとも顧客一人ひとりと個別の接点を持つのか、どちらの方法もありますよね。自社のブランドが提供すべき接点はどっちなんだろうか、そういうことを考えるヒントになりそうな分析だと思いました。

竹内
なるほど。集約・統合された接点で一体感を得られるのが嬉しい人と、自立分散型でパーソナルに利用できる接点の方が嬉しい人。タイプの違いもあるし、同じ一人の人間の中でも「Aブランドは集約型がいいけど、Bサービスは分散型がいい」というように分かれていることもありそうです。ブランド側がそこをどういう形で提供していくかは、すごく大事になってきますよね。

未来選択は、二者択一ではない

杉本
このクラスター分析で、もう一つ皆さんと議論してみたいことがあって。「クラスターⅠがめちゃめちゃポジティブなのはなぜか?」という点です。このクラスターは「未来は自分たちでつくるものだ」という意識もすごく高い。分析してみたところ、自己肯定感が高いことに加えて、もう一つ関係がありそうな特徴が見えてきました。クラスターⅠの人たちは、未来のイメージに影響を与えている情報源の数がすごく多かったんです。
一般的なニュースだけでなく、小説から漫画、アニメ、ゲームとか、いろんなコンテンツに触れてインスピレーションを受けていると、未来のイマジネーションが膨らんで、いろんな未来像を受け入れやすくなるのかもしれないなと思いました。たとえば企業が、生活者がいろんなイメージを描けるような未来像をたくさん発信して触れてもらうことが、生活者の未来観をポジティブに変えるかもしれない。調査結果を見ながら、そう思っているところです。

原田
面白いですね。コンテンツのつくり手は、自由に、自分なりに物語が面白くなるように未来像を考えているんだと思うんです。そういうものにたくさん触れている人は、「つくり手の数だけ多様な未来がある」という前提を受け入れやすくなっているのかもしれないですね。
だとすれば企業側も、そうした多様な考え方を持っている生活者に「委ねてみる」のもありだなと思いました。例えば顧客接点を考えるとき、企業側がすべてUXを作り込んでしまうよりも、ある意味セルフサービス的に顧客に委ねる方がいい場合もあるかもしれない。カスタマージャーニーを設計するときも、その中に、顧客側が選択できる余白を入れてみるとか。どうでしょうか。

竹内
生活者の側に完成を委ねるという考え方は、これから必要になってきますよね。デジタル化やSNSで企業側とユーザー側の情報格差がなくなると、企業だけで完成させたものを、ただ生活者は使うだけというのは成立しにくくなってくる。そういう意味でも、今後は企業と生活者が一緒に何かを創っていくとか、参加や参画といったことが大事になるはずです。

古賀
実は、いまの原田さんの話は、我々LEAD2025が「セルフorおもてなし」として大事にしている未来選択の軸でもあります。おもてなしとセルフサービスって対比的に思われがちですが、実はどちらもすごくポジティブ。かつては「おもてなしはリアル」「セルフサービスはデジタル」というイメージもあったけれど、今ではデジタル上でのおもてなしが新しい価値になっていたりします。企業は、顧客の購買行動のどこをセルフで、どこをおもてなしとして提供するのかを考える必要がある。

竹内
たしかに、自分でやった方が充実感や幸福感を感じることと、人におもてなしされた方が充実感や幸福感を感じることの違いってありますよね。「セルフorおもてなし」に「デジタルorリアル」を掛け合わせて、マトリックス的にカスタマージャーニーを設計してみるといいかもしれないですね。どっちか片方を選ぶ、ということではなくて。

古賀
その通りです。そこが大事なところなんです。人間によるリアルなおもてなしを大事にしているブランドであっても、「そうじゃない選択肢」を提供することがプラスに働く場合もある。未来選択とは、二者から一つを選べという意味ではなくて、幅の中での選択なんですよね。これは非常に大事なポイントで、「パーパスを定義するために未来を選択せよ」と言われると、選択肢のどれか一つを選ぶという意味に受け取られがちですが、そうではなく、複数の選択肢の中での最も良いあんばいというか、バランスやポートフォリオを考えることが、「選択」という意味なんだと私は思っています。

パーパスとともに未来を創る

──未来洞察や未来選択のプロセスで考えたことを、どのようにパーパスや企業活動につなげていけばよいのでしょうか?

竹内
今日の議論のように、未来選択のプロセス一つとっても、実際には多様な道筋や方法があります。多様な選択肢のなかから、これだと決めた未来に向かっていく。そのときのプロセス、つまりパーパスをどのように達成していくかというシナリオがとても大事です。
どんな企業でもパーパスを突き詰めていくと「人々がみんな幸せで暮らせる社会をつくる」といった言葉にたどり着きがちなんですけど、それを綺麗ごとで終わらせないために、具体的なシナリオを短期・中期・長期で作り、常にパーパスとシナリオを行ったり来たりして考えていく。いま自社のテクノロジーやアセットはこういう状態だけど、5年後・10年後にはこう変わっていて、だからこれができるようになる、とか。絵空事ではないシナリオによって、パーパスに息が吹き込まれていきます。

古賀
私は、じつはパーパスってすごく不思議なものだと個人的には思っているんです。企業の存在意義を、社会のこととして語らなければならない。あるいは社会のことを語るのに、企業の意志を込めなければならない。普通は考えない視点で、定義するのは難しい。
だからこそ、未来を思い描いて、それをパーパスやシナリオに落とし込むときには、何らかの “補助線”が必要だと思うんですね。LEAD2025の未来選択軸も、未来洞察・未来選択・パーパス策定というHAKUHODO X CONSULTINGのプロセスも、そうした補助線の一つということだと思っています。

──ありがとうございました。最後に、今後皆さんがどのような形で企業に貢献していきたいか、お聞きしたいです。

原田
パーパスって、ただ1つだけの「つくりたい未来」を決めることではないのだと、今日の議論を通じてあらためて感じました。このパーパスはこんな未来ではこう生きるし、こんな未来ではこう生きるというような、複数の未来の選択肢や発展のさせ方まで見据えて意思を作っていくことが大切ですね。この視点を、企業の中長期戦略や新規事業戦略の支援にぜひ活かしていきたいと思います。
LEAD2025では今日ご紹介した「セルフorおもてなし」のような未来選択軸を、色々なテーマで開発しています。未来選択は、振れ幅のある未来において自分たちの武器をどう活かすか?を考える視点なので、業種レイヤー問わずさまざまな方に広くご活用いただきたいですね。

杉本
私が普段、クライアントの声を聞いて感じるのは、一つは「目の前の事業で頭が一杯で、柔軟な視点で未来に思いを馳せることができない」という危機感。もう一つは「中の人になりすぎて、生活者の視点に十分に寄り添えていない」という不安感です。自分たちの信じるものを力強くプロダクトアウトすることも大事ですが、それも「生活者が望む未来像」を無視したら成立しませんよね。そこを私たちがお手伝いできたらと思っています。
今日は調査結果について皆さんとお話しできて、自分もまた新しい視点を得ることが出来ました。この知見を活かしていきたいと思います。

HAKUHODO X CONSULTING(博報堂クロスコンサルティング)
ブランド・トランスフォーメーション(BX)®」の考え方に基づく企業・事業変革コンサルティング(=BXコンサルティング)の先鋭集団。グループ・部門を横断した約300名のコンサルタントの専門性と機能をクロスさせ、共創による事業変革を支援する。
>専用サイト https://www.hakuhodo.co.jp/hxc/
>お問い合わせ h.x.c@hakuhodo.co.jp
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