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「PDCA」から「チューニング」の世界へ~ユーザーとブランドが常時接続しながら「マイコスメ」との出会いをつくっていく新しいプラットフォームへ~【生活者インターフェース市場フォーラム2020レポート】

2021.02.08
#クリエイティブ#生活者インターフェース市場

「生活者インターフェース市場フォーラム2020〜クリエイティビティが生み出す新しいエコシステム〜」のセッションに、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」を擁する株式会社アイスタイルの吉松徹郎氏と、同社CCOに就任した博報堂ケトルの大木秀晃が登場。博報堂執行役員の嶋浩一郎をモデレーターに、新たな@cosme構想について、今後のアイスタイルと博報堂の取り組みなどについて話しました。

@cosmeがDXで実現する企業と生活者の関係の再構築


今日はよろしくお願いします。吉松さん率いるアイスタイルはすごい企業で、まず日本最大の化粧品クチコミサイト「@cosme」を擁するだけでなく、それがEコマースの機能も果たしていて、原宿駅前にオープンしたリアル店舗は日本一化粧品を売る売り場として知られている。それらすべてが生活者と化粧品会社をつなげる生活者インターフェースとして機能しています。そこに、2018年からチーフクリエイティブオフィサーとして経営に参画しているのが、博報堂ケトルのクリエイティブディレクターの大木です。今日は、まさにデータを使うビジネスの中に博報堂のクリエイティビティがインストールされることで、生活者はどんな新しい体験ができるのか、生活者インターフェース市場がどのように活性化しているのかという話を伺えればと思います。

吉松
よろしくお願いします。僕は大学卒業後アクセンチュアに入り、99年、@cosmeを立ち上げるべくアイスタイルを創業しました。現在@cosmeというサイトを軸にECやリアルへとビジネスを展開していて、リアル店舗は全国で24店舗、海外に8店舗あります。月約1400万人のユーザーによるランキングをつくっていたり、中国のW11のようにネットで化粧品が一番売れる日をつくろうと、「@cosme Beauty Day(アットコスメビューティーデー)」を2018年から開催しています。そして2020年1月、原宿駅前にオープンしたフラッグシップ店「@cosme TOKYO(アットコスメトーキョー)」は、400坪の売り場面積を持つ日本最大級の化粧品専門店です。ポップアップが展開できるスペースや自由に商品を試せるコーナーや、ランキングの棚があるほか、スタジオ設備も完備していて、ユーザーにとってはネットとリアルを通じた体験ができ、ブランドにとってはコンテンツをつくって情報発信できる場を目指しました。

大木
僕はアイスタイルにおいて、ビジネスの中身を変えていくことにいかにクリエイティブが関わっていけるか、というところに取り組んでいます。今年はDXがトレンドワードになっていますが、吉松さんがよくおっしゃってるのは、DXとは企業と生活者の関係を再構築することだということ。僕も、ユーザーとデータというところだけではなく、ユーザーを動かすためのクリエイティブが非常に重要だということを社内で話しています。


なるほど。そもそもDXを最初に提唱したスウェーデン人のエリック・ストルターマン教授によると、DXとは最適化を図ることではなく、テクノロジーで人々の生活を豊かにすることを意味します。つまり新しい生活体験の価値が生まれることこそが大事だと言っている。2007年頃からすでにOMOを構想し実現なさっている吉松さんが、@cosmeで具体的にどのような取り組みを行ってきたのか、そしてDX化についてどうお考えなのか教えていただけますか。

吉松
はい。私たちのサイトがスタートしたのはインターネット黎明期の1999年12月です。それから20年にわたってクチコミサイトを運営してきたベースにあったのは、情報の流通をマスメディア中心から、ユーザー中心、生活者中心にシフトしていくという考え方です。ただ、当時は複雑なカスタマージャーニーを考えてPDCAを回していたのですが、昨今はスマホやSNSが当たり前になり、さまざまなサービスが乱立するようになりました。また、ユーザーの情報行動が追えなくなり、カスタマージャーニーを描くことが現実的に難しくなってきました。そこで今後は、AI技術をうまく活用しながら、マーケティングの精度をチューニングしていくべきだと考えています。
たとえばこのデモでは、2020年4月から9月に@cosmeを利用した人がリピート購入するかどうかをAIが判定しています。@cosmeが保有する購買データ、購買前に何のサイトを見たか、ライバルの化粧品サイトを見たか、サンプルだけもらった……などのデータをもとに、80%くらいの精度でリピートするユーザー層を予測することができます。

ここで重要なのは、予測の精度を上げるためにPDCAで次に何をするか考えるのではなく、サンプルを配ってみる、ライバル化粧品を見ている人に店に来てもらうなど、最適と思われる体験を次々と当てていきながらチューニングすることなのではないかというのが、現在の私たちの考えです。
社内でもよく、「僕らはデータドリブンマーケティングを目指すのか?」という話をするのですが、いざサンプルを配った方がいいということがデータでわかっても、サンプルを受け取ってもらえるようユーザーを動かすことは非常に難しい。肝心なのは、どうしたらログインしてもらえるか、プレゼントを手に取ってもらえるか、イベントに来てもらえるか、です。そこで、私たちに必要なのはクリエイティブの力なのではないかと考えていた折に、嶋さん、大木さんに出会ったという経緯があります。

大木
確かに、単純にデータでアプローチしても生活者は動いてくれません。やっぱり新しい出会い、ワクワクする体験があって初めてユーザーのアクションが生まれ、創発的な相互関係がつくれる。ですから必要なのは、その人が何に出会い、何をされたらワクワクして動いてくれるのか、クリエイティブを通じて「出会いのチューニング」をすることだと考えています。そのために今は、@cosmeができることにクリエイティブを掛け合わせ、「どうしたらワクワクする出会いがつくれるか」という取り組みを一つ一つ進めています。
たとえば@cosmeTOKYOのレジスペースの背後に巨大なデジタルサイネージがあるのですが、そこに、リアルタイムの購買POSデータを表示し、“いままさにオンラインで売れたもの”を見える化しました。面白いのは、SNSなどで話題になりオンラインでものすごい勢いで売れる商品もあって、お店とは違うデータが出てくることです。その商品画像を万華鏡のように見せることで、興味をひく、ワクワクする出会いを演出しています。

吉松
私たちがこれからつくろうとしているDXのベースにあるのは、ブランドと生活者の体験を再構築することです。ブランドとユーザーを近づけ、ユーザーを動かすためのアクションは山ほどあるはずですから、データから得たユーザー理解をもとに、ユーザーに適切なアクションを当てていくことで、ある意味生活者と一緒にコスメのカルチャーをつくっていくような創発的な相互関係がつくれたら。博報堂と取り組むDXは、単なるIT化の先にある、ユーザーとの関係を本当に動かすラストワンマイルのクリエイティブを考えるということ。それを一緒にできていることが非常に楽しいし、面白いですね。

ブランドとユーザーの出会いの世界をつくるクリエイティブ


データをずっとやっていらっしゃるアイスタイルにクリエイターである大木が入ることで、何かケミストリーというか、変化はありましたか。

吉松
ひとつは、社内で「ワクワクすることを考えよう」と言うようになりましたね。大木君が来て、20年変わっていなかった「@cosme」のロゴも変えました。僕もメンバーもどうしてもデータ目線でしゃべってしまい、楽しむということを忘れがちなんですが、結局一番強いのは、楽しいことをやっていて、かつお客さんを持っているところだと思うんですよね。

大木
データの話は社内でもよく膨らむんですが、一方で、ユーザーが何とどうやって出会いたいと思っているのかといった、気持ちのところも非常に大事だと思います。特にコスメは、ピンポイントで強く推されるよりも、「もしかしたらこれが好きなんじゃない?」とサジェストされるようなところが楽しい商品だと思うんです。そういったワクワクを忘れないようにしましょう、という話はよくしています。
アイスタイルの事業の面白いところは、ブランド側、ユーザー側の両方をつないでいるところ。そこを合わせて一つの世界をつくるということ自体が、非常にクリエイティブなことだと感じています。単にCMをつくるとか、表現するといった狭義のクリエイティブではなくて、新しい出会いの世界をつくっていくという、大きな意味でのクリエイティブに関われることは、非常にやりがいがありますね。


確かにアイスタイルはEコマースもリアル店舗もお持ちで、そこを複合的に体験の演出の場として使える。その強みを、これからどう活かそうとされていますか。

吉松
たとえばEコマース会社が急にリアル店舗をやるとなっても、商品データの持ち方も違えば社員のスキルセットも違うので、現実的にはすごく難しいと思います。同様にリアル店舗がEコマースをやろうとしても、楽天やアマゾンのような既存のECプラットフォーマーに勝つのはなかなか難しいでしょう。その点私たちのように、ユーザーの体験としてネットとリアルをつなげられていれば、店舗に行ってからネットで買った人、普段はネットで買うが店舗で買った人、といったリアルなデータが具体的にわかります。また、どのブランドと比較して買ったかなどの購入前データがあることも、私たちの大きな強み。実はライバル商品を見てから店舗で購入したとか、テレビCMをかけたらちゃんとクチコミをチェックしてくれた、といったこともわかります。実はメルカリともデータ接合にむけて取り組んでいるのですが、僕たちはメルカリを2次流通ではなく、ユーザーがトライアルを買う場と考えています。メルカリで何を検索し、どういう化粧品を試しているのかといったデータから、その人たちのリピートを持っていくために何ができるかという提案もしております。


なるほど。試し買いから購入、リピートまで、体験の順番を把握できるのはすごいですね。大木君は、ネット上のリアルなリアクションや店頭でのお客さんの反応などを肌感でわかるような現場で働くことについてはいかがですか。

大木
面白いのは、たとえば店頭でタッチアップ、つまり試してみて買いたくなる気持ちと、そこに@cosmeに書かれたクチコミが表示された際の買いたくなる気持ちの高まりが、実はほぼ同じだというデータが出ていたことです。実際に触ってみることと、誰かが触ってみた際の情報を見ることが、店頭では同等の価値を持っているというのは大きな発見でした。話だけ聞いてもなかなかイメージできないものですが、リアルな数字で目にするとなるほどな、と思わされます。そこから、どういう店頭をつくればもっとワクワクしてもらい、人が動いていくか、またアイデアを考え出していける。リアルでもオンラインでも、日々そういう発見があるのは面白いですね。


アイスタイルがお持ちのコスメの流通に関するデータと、博報堂が持つデータ、そして内海と外海のデータをいろいろと掛け合わせて、将来的にはまたさらなる新しい体験を一緒につくっていけるといいですね。化粧品業界からウェルネス市場までさまざまな業態の方が参入している領域ではありますが、まさにリアル、デジタルの売り場、クチコミサイト、さまざまなインターフェースを統合的にクリエイティブの視点で開発し、新しい体験をつくっていくということに、アイスタイルも博報堂も挑戦していけたらと思います。

吉松
アイスタイルはメディアの会社ではなく、新しいプラットフォームをつくる会社です。特にこれからは、ECとのセットを前提にしたリアルへの投資が求められてくると思います。それをいち早く体現している会社として、皆さんにとってひとつのモデルケースになっていけたらうれしいですね。


わかりました。お2人とも、今日はありがとうございました!

吉松 徹郎 氏
株式会社アイスタイル
代表取締役社長 兼 CEO

東京理科大学基礎工学部卒業。アクセンチュア株式会社を経て1999年株式会社アイスタイル設立。代表取締役社長就任。同年、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」オープン。現在は自身の設立した公益社団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を通じた芸術・スポーツ分野への助成支援も行う他、経済同友会幹事なども務め、活動の幅を広げている。

嶋 浩一郎
株式会社博報堂
執行役員

クリエイティブセンター長補佐 兼 エグゼクティブクリエイティブディレクター
1993年博報堂入社。コーポレートコミュニケーション局で企業の情報戦略に携わる。2001年株式会社朝日新聞社に出向、「SEVEN」編集ディレクター。2002~04年博報堂刊「広告」編集長。2004年、本屋大賞立ち上げに参画。現NPO本屋大賞実行委員会理事。2006年クリエイティブエージェンシー博報堂ケトルを立ち上げ統合キャンペーンを多数実施。2019年より現職。

大木 秀晃
株式会社博報堂ケトル
株式会社アイスタイル CCO
株式会社OOAA クリエイティブディレクター

クリエイティブ経営・統合クリエイティブに従事。ACCグランプリ、TCC、CANNES LIONS、D&AD、CLIO、ONE SHOW他受賞。CANNES LIONS、ADFEST審査員。

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