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DXの先に見据える「自社ならでは」の変革 次世代型のブランド発想が鍵を握る/宮澤正憲
(新連載:ブランド・トランスフォーメーション)

2020.11.20
#イノベーション#コンサルティング
2020年10月、博報堂はブランド発想で企業・事業活動の変革を支援する統合コンサルティングサービス「HAKUHODO X CONSULTING」(博報堂クロスコンサルティング)をグループ横断・部門横断で本格的に提供開始することを発表した。
なぜ今、博報堂がグループを挙げてコンサルティング事業に注力するのか。DXの時代に掲げる「ブランド・トランスフォーメーション」とは何を意味するのか。博報堂ブランド・イノベーションデザイン代表であり、「HAKUHODO X CONSULTING」の推進リーダーを務める宮澤正憲に聞いた。

「事業としてのブランド」の時代

博報堂グループが、今あえてコンサルティング事業に本格的に取り組むことを宣言したのはなぜか。それは経営環境の不確実性が高まるなか、既存のコンサルティングの常識を問い直すような博報堂独自の価値提案のスタイルが、社会から強く求められているからにほかならない。

「HAKUHODO X CONSULTING」の推進リーダーを務める宮澤正憲は、博報堂グループの中でも早くからコンサルティング業務に取り組んできた一人である。2001年にブランディングとイノベーション創出のコンサルティングを行う専門組織「博報堂ブランドデザイン」(現:博報堂ブランド・イノベーションデザイン)を創設。以来、新規事業開発から地域活性化事業まで、あらゆるビジネス領域においてブランドを基軸にしたコンサルティングを手がけてきた。

HAKUHODO X CONSULTINGは、独自のコンサルティング・アプローチを「次世代型のブランド発想」と定義している。その大きな背景として宮澤は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の世界的な潮流を挙げる。

「DXは、単なる業務効率化のためのデジタル活用とは異なります。その本質は、産業構造や市場が大きく変化するなかで自社が生き残っていくために、事業形態やビジネスモデルそのものを根底から変革していく取り組みにあります」

国内でも多くの企業がDXの導入を急いでいる。しかし実際には、変革を遂げた先にどんな企業像・事業像を目指すのか、どんな価値を提供していくのか、そのビジョンがないままスタートし、行き詰まってしまう例が少なくないと宮澤は指摘する。

「DXはあくまで手段。あえて一度立ち止まって、自分たちは変革の先に何を目指すのかと問い直し、その企業ならではの変革を目指すことが不可欠です」

その際の基軸となる考え方が「次世代型のブランド発想」だと宮澤は説明する。ブランドと言っても、従来型の製造業を中心としたブランドとは異なり、その概念は大きく進化しているという。
かつてはモノをどんなデザインにし、どんなイメージを醸成していくかがブランドの主な課題だった。しかし生活者と企業がさまざまなデジタルツールを介して縦横無尽につながる今の時代においては、無形のサービスや、企業の事業活動そのものがブランドの核になる。

「事業としてのブランドの時代においては、ブランドは企業だけのものではありません。生活者はモノを買って終わりではなく、気に入ったサービスを継続的に利用したり、そのサービスを提供する企業を応援したりと、ブランドに “参加”するようになりました。企業は、生活者や社会との長期的な関係をどう設計し、どうブランドを共創していくか。そういう発想をもって変革を考えることが重要です」

博報堂グループは今回、こうした考えに基づく変革を『ブランド・トランスフォーメーション』として大きく掲げ、HAKUHODO X CONSULTINGの名のもとに変革支援コンサルティングを提供していくという。長年にわたって多くのブランドコンサルティングに携わってきた実績と知見を活かして、独創的な企業活動・事業活動を生み出していくことを目指す。

予測不可能な時代に求められる共創型のコンサルティング

HAKUHODO X CONSULTINGの一つの特徴として上げられるのが、従来のビジネスコンサルティングとは一線を画す未来志向の「共創型」コンサルティングスタイルである。現状の競合を分析して効率的に解を出そうとすればするほど活動が同質化してしまい、結果、イノベーションにとって大きな足枷になる。だからこそ、未来発想で他にはないアプローチを常に意識してきたと宮澤は話す。

「コンサルティングの語源の話が私は好きで、よく話すんです。動詞の『consult』はラテン語のconsuloに由来し、原義は『共に(con)座る(sult)』なんですね。つまり、隣に座って相談に乗り、一緒に考えるのが本来の意味での『コンサルティング』です。コーチングの概念に近いもので、何か普遍的な正解を知っていて、それを一方的にティーチングするような姿勢はコンサルティングの本質とは違う。特に、正解がないこれからの時代は、今までの戦略の定石やフレームワークを当てはめようとしても求める結果は得られない。未来を見据えて答えのない問題に一緒に挑戦し、どうやったら他の企業ではできない、その企業独自の解決の糸口が見つけられるかを考えていく。博報堂はそういうコンサルティングスタイルを大事にしてきました」

この予測不可能な時代、共創型のコンサルティングの重要性はますます高まっている。誰もが答えのない問いに挑戦することを求められているが、簡単なことではない。先行きが予見できない状態であればあるほど、定石的な考え方に頼りがちになる。

「我々がよく相談されるのは、『いろいろな会社にコンサルティングを頼んだが、なかなかよい成果にたどり着かない。今までのフレームや手法には限界がある。全く違うアプローチで何かできないですか?』と。
なぜ博報堂が相談されるのかと言えば、おそらくそれは我々がクリエイティビティをなにより大切にする集団だから。すでにある成功モデルを分析し、効率よく取り入れようとするのが一般的なコンサルティング手法だとすれば、博報堂は真逆で、『もし成功事例があるなら、それを真似するのは辞めておきましょう』と考える。我々が広告やマーケティングにおいて長年培ってきたクリエイティビティとは、常に魅力的なもの、新しいものを発見しようとする知的活動です。コンサルティングの領域でも、常識を打ち破る大胆な『別解』を臆せず提案していきます。ブランドをつくる際も同様です。そもそも他にないものを作らないと、ブランドになりませんから」

宮澤は大学生にも「共創」の重要性を伝える。宮澤が率いる博報堂ブランド・イノベーションデザインが毎年開催する大学生向けビジネスコンテスト「BranCo!」には、これまで5000名近い学生が参加し、チーム共創で「正解のない問い」に挑んでいる。

掛け合わせが新たな価値を生む

今回スタートした「HAKUHODO X CONSULTING」は、これまでの共創型コンサルティングをより有機的・多角的に進化させていく取り組みでもある。以前から博報堂は広告やマーケティングの概念の拡大に取り組み、結果として広告業の範疇を遙かに超え、店舗を開発したり、メディアコンテンツを運営したりするなど、ビジネス領域を大きく広げてきた。宮澤自身もさまざまな領域をゼロから開拓してきた。

「クライアントからは、より川上の事業戦略や経営戦略まで関わることが年々求められるようになってきました。この流れの中で、コンサルティング事業は、間違いなく博報堂の中核機能の一つになると捉えていました。博報堂の価値創造の源泉である知恵や発想力を、広告領域だけに使うのではなく、コンサルティング領域にもどんどん活かしていくのは必然的な帰結だと思います」

これまでも博報堂グループ内のさまざまな部門がコンサルティングビジネスを手がけてきたが、組織横断的な活動は十分ではなかった。「HAKUHODO X CONSULTING」では、一つの傘のもとに多様な部門や人材のリソースを集結させ、それらをクロスさせることで、より大きな共創の力を生み出していくことを目指す。

「米国の広告業界で活躍したジェームス・W・ヤングが『アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない』と言っているように、幅広い領域を融合させたり掛け合わせたりすることはクリエイティビティの根幹をなすものです。しかも、掛け合わせる要素同士の距離が遠ければ遠いほど、面白いものができる。
HAKUHODO X CONSULTINGでは主にイノベーション領域、ビジネス領域、マーケティング領域での変革支援を行いますが、本当の意味のトランスフォーメーションは、その全てを掛け合わせながら一気通貫して変革すること。最近は経営戦略自体を見直し、新しい事業をゼロから立ち上げたいという依頼もどんどん増えています。3つの領域を有機的にクロスさせながら、多様なブランド・トランスフォーメーションを実現していきたいと考えています」

HAKUHODO X CONSULTINGが掲げるステートメント

コンサルティングの概念を変革していきたい

他社にはない「HAKUHODO X CONSULTING」ならではの強みを宮澤は具体的にどう捉えているのか。主に次の3つが挙げられるという。

1つは、未来からバックキャスティングして今までにない課題解決の糸口を探る目標志向型のアプローチだ。

「先ほども述べたように、現状の課題を分析して解決策を提案するのがコンサルティングの主流ですが、我々が得意とするのは、まず生活者の求める未来像を仮説的に設定し、そこに向かうための具体的なシナリオを構想する方法です。博報堂は以前から未来視点での独自の洞察手法や生活総合研究所のデータなどを豊富に持っており、競争優位性が高いと言えます」

2つめは、提供物=アウトプットを重視する点だ。通常のコンサルティングにおいて主要なアウトプットは企画書・提案書であり、それを納品して終わるケースが多い。しかし最近はビジネス環境の変化が激しいため、最初の計画通りに事業が進むとは限らない。

「プロトタイピング、アジャイル開発やβ版発想という手法が主流になりつつある今、コンサルティングも戦略を提案しただけで終わる時代ではなくなってきています。我々のやり方はそうではなく、新製品なり新事業なり、まず実際につくってみましょう、一緒にやりながら改善していきましょうと。そういう『形にするコンサルティング』は今後重要で、もともと実装やアウトプットを専門にしてきた博報堂の得意分野であり、大きな強みです」

3つめは異能人材の豊富さだ。前述の通り、博報堂は広告やマーケティング、ブランディングにおいて、新しい価値を生み出すことに長年取り組んできた。あらゆる業界・領域ごとの事情に精通し、しかも共創のスタイルに慣れ親しんだ300人を超える人材が「HAKUHODO X CONSULTING」の推進体制のもとに名を連ねている。

「まだまだ博報堂は広告会社のイメージが強いですが、じつは事業開発やデジタルソリューションなど多様な領域で多彩な人材が活動しています。今回始動した『HAKUHODO X CONSULTING』の活動を通じて、グループ内に散在しているさまざまな知的・人的リソースをクロスさせ、ブランディングやコンサルティングの概念そのものを博報堂がどう変革できるか、意欲的に挑戦していきたいと考えています。ぜひご期待ください」

宮澤 正憲
HAKUHODO X CONSULTING推進リーダー
博報堂ブランド・イノベーションデザイン 代表

東京大学文学部心理学科卒業。株式会社博報堂に入社後、多様な業種の企画立案業務に従事。2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、ブランド及びイノベーションの企画・コンサルティングを行う次世代型専門組織「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」を立ち上げ、経営戦略、新規事業開発、商品開発、空間開発、組織人材開発、地域活性、社会課題解決など多彩なビジネス領域において実務コンサルテーションを行っている。株式会社博報堂コンサルティング、及び 株式会社SEEDATA非常勤取締役。主な著書に『東大教養学部「考える力」の教室』『「応援したくなる企業」の時代』など多数。東京大学教養学部教養教育高度化機構 特任教授。

ブランド・トランスフォーメーション
「HAKUHODO X CONSULTING」 特設サイト
https://www.hakuhodo.co.jp/hxc/
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