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資産運用を当たり前へ。日本には、いま何が必要か? ターングループ×HAKUHODO Fintex Base(連載:フィンテックが変える生活者体験 Vol.14)

2025.11.25
「人生100年時代」と言われる中、日本政府は新NISAを開始するなど、資産運用立国を目指す取り組みを進めています。それに併せて、高校教育における「資産運用」の必修化など、金融リテラシー向上の機運も高まっています。生成AIなど、金融に関する学習に役立つテクノロジーも急速に進化してきました。
ターングループ株式会社は個人向けに金融リテラシーを向上させるアプリを提供するなど、資産運用トレーニング事業に挑戦している1社です。同社のニコラス・グールド代表取締役Founder/CEOと、Fintechサービスにより生活者の金融体験がどう変化するかを研究しているHAKUHODO Fintex Base代表の山本が、日本の資産運用の現状や、国外との違い、より個人投資家を増やすための施策、生成AIがもたらすインパクトなどについて語り合いました。

HAKUHODO Fintex Base代表
山本 洋平

ターングループ株式会社 代表取締役Founder/CEO
ニコラス・グールド氏

個人投資家の力になりたいと考え、事業を開始

山本:まずは自己紹介をお願いいたします。

グールド:私は、オーストラリアで生まれ、大学では経済学を勉強しました。卒業後は投資銀行に勤め、オーストラリアのシドニーとイギリスのロンドンで11年間、機関投資家向けのビジネスを経験しました。その間、出張で日本によく来ていて、「いつか日本に住みたい」と考えるようになりました。

なかなか機会に恵まれなかったのですが、絶対に日本で働きたいという思いから、2009年に日本に移住し、自分で事業を立ち上げました。でもしばらくして、「このまま自己資金で事業を続けるのはリスクが高い」と考えるようになり、日本の証券会社に勤めることを決めました。

その証券会社では、個人投資家向けのサービスに携わり、リテール投資の世界を理解しました。その際に、個人で投資をされている方が、投資への知識がないために非常にリスクの高い投資をしていたり、投資に対して不安を抱いたりしていることが分かりました。

その後、日本のIT企業で金融システムのソフトウエア開発も経験しました。金融とITの知識を身に付けたことで、「この両方を生かせば、日本の個人投資家の方のお役に立てるはずだ」と考え、2023年にターングループを設立しました。

山本:日本の個人投資家に、投資に対する教育をする必要がある、とお考えになったのですね。

グールド:はい。ただし、簡単ではないということは証券会社に勤めていた当時から分かっていました。その証券会社でもお客様向けセミナーなど金融教育の取り組みはしていたのですが、あまり上手くいきませんでした。

お客様には共通して、「稼いでいる投資家は、何か特別な秘密、コツを知っているはずだ」という思い込みがありました。実際にはそんな秘密やコツはないのです。しかし個人投資家の方はセミナーでそういったことを教えてもらえると期待して参加し、そうでないと分かると関心が離れてしまうようでした。

私は投資銀行に所属していた際、誰も投資のやり方を教えてくれませんでした。マニュアルもありません。でも、投資で駄目な行動をすると物凄く上司に怒られました。そうして、長く経験を積むうちに投資が分かるようになっていったのです。

私は日本に15年住んでいますが、まだ日本語が上手くありません。でも私より後に日本に来た外国人から、「日本語が上手いですね」と褒めてもらえることがあります。一方で、私より遥かに日本語が上手い外国人が知り合いにいます。彼は18歳から日本に来ていますから当然ですよね。投資も同じで、しっかりと経験を積むことが重要なのです。

日本の個人投資家の方には、1年間で資産を2倍にしたい、といった考えの方が多くいます。これはギャンブルです。プロの投資家でも、年間15%利益を上げれば褒めてもらえます。そういったことについて1つずつ学んでいくべきです。

ただし、投資をする多くの方は、家族がいるなどの理由で自由に使える時間が限られています。それが理由となり、すぐに役立つ秘密の方法やコツを求めてしまうのだと思います。ですから、そういった方でも、無理なく投資について学べる仕組みが必要だと考えていました。

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