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0→1のクリエイティビティはマーケターにも。企業の未来を描く「戦略クリエイティブ」とは|Next Creativity Map Vol.09 細野哲昭

2024.02.14
企業のコミュニケーションやマーケティング課題に、さまざまな「得意技」でクリエイティビティを発揮する博報堂のクリエイターやマーケター。連載「Next Creativity Map」では、クライアントの課題に寄り添い、解決、変革へと導くランドマーク人材にスポットを当て、その「技」を解き明かします。第9回は、マーケティングプラニングディレクターの細野哲昭。2005年の入社以来、マーケティング局、プロモーション局、営業局、クリエイティブ局、海外赴任と多岐に渡る拠点で、一人何役もこなすマーケターとして活躍してきた細野が、0→1(ゼロからイチ)を生み出す「戦略クリエイティブ」について語ります。

求められるのは明確に未来を描ける戦略。そのために、コピーもビジュアルも一気につくる

―細野さんは入社以来ストラテジック・プラニング職ひとすじということですが、これまでの経歴を教えてください。

細野:入社後マーケティング局に配属されて3年半従事した後「博報堂買物研究所(以下、買物研)」の所属になりました。買物研は、企業の「売る」を生活者の「買う」から考えるマーケティングをテーマにしていて、コピーライターやプロモーションプラナーなど職種ミックスのチームでひとつの課題に取り組むスタイル。次の博報堂ビジネスアーツという部門も職種ミックスでマーケティング戦略からクリエイティブまで一貫して企画書を書くような仕事をしていました。博報堂の統合プラニング局では、クリエイティブチームといっしょに企画をつくって、社長プレゼンをすべて自分が行うということも経験しました。戦略を仕事の中心にしながら、企画も考え、プレゼンもする。
その後中国の広州で2年半、戦略チームとデジタルマーケティングのチームを率いていました。デジタルマーケティングチームでは、スタッフを自分でリクルートして採用から行っていたので、人材を集めるという段階から一連の「戦略を形にする」プロセスを完結できたと思っています。日本に戻ってくるとき、もう一度戦略構築を中心に置きつつ、マーケティングに閉じずに領域を飛び越えた仕事をしていきたいと考えて今日に至ります。

―マーケティングに閉じず「領域を越える仕事」が必要だと感じた理由は?

細野:本当の意味でいい戦略というのは、その先にどういう未来があるか明確に想像できるものだと考えています。僕らは、想像する未来がどういう絵になり、どういう店頭展開になり、お客様にどう響くのかまで描ける。そこに価値がある。戦略コピーや戦略ビジュアルまで一気につくりあげ、戦略を具現化することで、机上の空論に終わらせないことが大切なんです。

―チームにはコピーライターやデザイナーなどクリエイティブが本職のメンバーもいますよね?

細野:僕がつくる「戦略コピー」「戦略ビジュアル」といった戦略クリエイティブは、世の中に出て人の心を動かす広告クリエイティブとは別のもの。クライアントとの議論を深めるためのひとつ前段階のクリエイティブです。戦略で提案したコンセプトに直結するパッケージやネーミング、コピーはそのまま制作物として世に出ることもありますが、その先のクリエイティブで、戦略時には考えもしなかったクリエイティブジャンプがあることに感動させられることもしばしば。クリエイティブにもジャンプが必要なように、マーケティングの戦略にもジャンプが必要なんですよね。広告会社のマーケターとして強みを伸ばすために、いっしょに仕事をしているCDやクリエイティブスタッフから日々学び、そのスキルを自分のなかにストックしています。

完成された正しい戦略より、多くの人を巻き込む戦略がうねりをつくる

―マーケティング戦略のジャンプのつくり方に秘訣はありますか?

細野:正しいだけでなく、おもしろさがなければジャンプできないということでしょうか。最終的には人の心を動かすことが目的だからです。
僕がよくメンバーにきくのが「そのアイデアに展開力はある?」という質問。僕らがつくった戦略に対して、それなら店頭はこうしたい、CMだったらこうしたいと、各部門の担当者にイメージの輪が広がっていくのが理想です。点の戦略ではなく、その後のうねりをつくり、ベクトルの起点となりうる戦略。多くの人を巻き込める戦略がいい戦略なんですよね。クライアントがメーカーだとしたら、その先には店頭をつくってくれる流通の方がいるし、クライアントの営業の方もいる。その人たちが「この戦略だったらこうしたい!」と思えるかどうかが、戦略としてのジャンプ力があるかどうかだと思っています。

―普段は顔を合わせることのないクライアントの営業や流通の人まで巻き込んでいくということですね。

細野:買物研のときから売り場をよく見るということを徹底しています。入社当時は飲料メーカーのトラックに乗って1週間自動販売機の商品補充のお手伝いをさせていただいたこともありました。キャリアの初期からさまざまな現場の方の声をきけた経験は大きかったと思います。美しく完成されたものより、いろいろな現場で工夫して使いたくなるようなおもしろいもののほうがいい。

商品を事業と捉え視座を上げる。課題を広い視野で捉える。その姿勢が0→1の仕事をつくる

―マーケターとして19年。さまざまなキャリアを経験するなかで、いまマーケターに求められるスキルは何だと感じますか?

細野:俯瞰して見ると日本はすでに成熟市場。生活者の満足度も高く、とくに改善する必要がない状況にありますが、それでもクライアントはビジネスを成長させなければなりません。これまでやってきたことだけではいけないとわかっているけど、新しい領域に踏み出す方法がわからない。そんなときに並走するパートナーを求めていると感じます。
そこで有効になってくるのが先ほどお話しした「戦略クリエイティブ」。データやコンセプト文だけで構成された戦略では想像ができなくても、戦略コピーと戦略ビジュアルがあれば展開後のイメージが共有できる。クライアントも「やってみたい!」と思ってもらえやすいし、その精度を上げるための議論を効率よく進めることができます。生活者の変化を捉えた市場の見立てというマーケターの基本はもちろん大切ですが、もう一歩踏み出したくなるような戦略をつくれるかどうか。新しいチャレンジをするときにクライアントをワクワクさせ、よりよい議論を生むための戦略クリエイティブが求められていると感じます。

―いまは商品開発や新規事業の立ち上げに携わる仕事がメインになっている?

細野:気づけばゼロからイチをつくる仕事がメインになっていました。それは、クライアントからのオリエンを鵜呑みにしない、という姿勢も大きく関わっていると思います。売り上げを上げるためにはさまざまな手法が考えられるわけで、「課題」と「ゴール」さえブレなければ、その間は僕らがすべて考えますよというスタンスで仕事をしています。商品を商品と捉えるのではなく、事業と捉えて視座を上げたり、課題をターゲットや市場内で考えるのではなく、世の中全体や未来を見据えた広い視野で捉える。そういう姿勢が、結果的に0→1の仕事に結びついているのだと思います。

クライアントからのオリエンがなくても動き、課題と戦略を同時に提案する

―0→1のプロジェクトを推進するにあたり、チームメイクで心掛けていることは?

細野:人任せにしないこと。戦略はつくるけどあとはクリエイティブがやってくれる、ではなく、できるところまで自分でやってみる。そして、職種を越えてサポートし合う関係性を大切にしています。そうすることで領域を越えた知見を育てることができますし、ハイブリッドな人材がどんどん増えていくんです。広告会社の仕事には戦略の先にクリエイティブがあり、さらにその先にメディア戦略があるわけですが、それらを横断できるメンバーがいることは非常に心強いですね。

―さまざまな領域を横断しながらも、マーケターとしての軸足があることはどんな強みになりますか?

細野:やはり、これまでなかった商品や事業を0→1で生み出すことは、マーケターの軸足を持ちながら創造的に仕事をすることでなせる業だと思います。生活者の心を捉える0→1がクリエイティブの得意とする0→1だとしたら、マーケターは生活者のニーズを捉えて課題を解決するための0→1が得意。クライアントからのオリエンがなくても動き、発見した課題と解決策となる戦略を同時に提案しに行くような人になりたいと考えています。

―さいごに、いま細野さんがマーケターとして一番やりがいを感じることは?

細野:さまざまなポジションでマーケティングを経験し、中国から日本に戻ってくるとき、やはり博報堂で多くの人が関わる「ど真ん中」の仕事がしたいと思いました。大きな仕事に携わると歯車のひとつになってしまうと思う人もいるかもしれませんが、やはり大きな仕事で起こす変化は、世の中にとっても大きなインパクトになる。その戦略をつくることにやりがいを感じています。繰り返しになりますが、0→1のクリエイティビティはマーケにもあります。それをきちんと世の中に届く戦略にすることが、僕のやりたい仕事です。

細野 哲昭
ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 部長
マーケティングプラニングディレクター

戦略立案をコアとした戦略クリエイティブ発想で、商品から事業まで、そして現場から経営までを考える、が信条。
実績:JAAA論文プロモーション・PR・インタラクティブ部門入選、早稲田大学特別セミナー「ショッパー・マーケティング・ゼミ」講師・事務局、中国広東省暨南大学「90后実践型研究所」講師など。

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