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クライアントと「共走」し、ビジネスを成長させる装置になりたい|Next Creativity Map Vol.06 長縄雄一郎

2023.02.22
企業のコミュニケーションやマーケティング課題に、さまざまな「得意技」でクリエイティビティを発揮する博報堂のクリエイターやマーケター。連載「Next Creativity Map」では、クライアントの課題に寄り添い、解決、変革へと導くランドマーク人材にスポットを当て、その「技」を解き明かします。第六回は、イノベーションプラニングディレクターの長縄雄一郎。自らの経歴を「闇鍋」と称する長縄の、ビジネスへの向き合い方とは…?

クライアントと常時接続することで、“生もの”のサービスと向き合う

―長縄さんは現在、ストラテジックプラナー職として企業の課題解決に取り組んでいますが、これまでの歩みを教えてください

2010年に教育系の大手事業会社に入社して、4年間マーケティング業務を経験した後博報堂に入社しました。博報堂では3年間営業を担当して、その後ストラテジックプラナー(以下ストプラ)に。途中メーカー企業に出向してサービス開発をサポートしていた期間もあるので、純粋なストプラ歴でいうとまだ3年半くらいなんです。

―ストプラひと筋、というわけではなくさまざまなキャリアを経験しているのですね

よく言えば多様性のあるキャリアですし、わるく言えば行き当たりばったりというか、闇鍋というか(笑)。でもその闇鍋的なところが重宝されているのかもしれません。これまでの広告会社の仕事は、営業担当がクライアントからオリエンを受けて、それを社内に共有、スタッフと一緒にアイデアを練り、ピカピカに磨き上げた提案書をつくって、クライアントに提案しにいくというのが基本の流れ。でもいまは、そのスピード感だけでは対応できない“生もの”のサービスが増えています。そういう企業に対して、常にフロントラインに立ってクライアントと常時接続しながら課題に向き合うのが僕のスタイル。それは、3年間営業を担当していたときの経験がすごく役に立っていると思います。

―“生もの”のサービスというのは?

デジタルサービスやアプリゲームのように、サービスの可変性が高く、PDCAを回しながら常時アップデートをつづけていたり、今日起きた不具合を明日には改善しなきゃいけないようなサービスを“生もの”と表現しました。そういった“生もの”を扱う企業では、プロモーションとプロダクトそのものがほぼ一体化しているんですよね。いいアプリをつくれば、そのアプリ自体に強い集客力がある。そのアプリのヘビーユーザーである友達から直接紹介されたり、スクリーンショットや切り抜き動画をSNSで見たことがきっかけで、自分もインストールしたという経験、よくありますよね。こういったクライアントは、組織としても、プロダクトを「つくる人」と「売る人」という分け隔てがないように感じます。だからこそ、僕たち戦略担当もコミュニケーションだけ考えればいいわけではなく、ときにはプロダクトまで逆上がりして提案する必要もある。ターゲットを設定して訴求を設計するというオーセンティックなマーケティングコミュニケーション業務より、「広告」の枠からはみ出るような、ユーザー体験をつくる仕事をさせていただくことが多いです。

広告を「提案」する仕事から、クライアントと「共走」する仕事へ

―クライアントと対峙するとき、大切にしていることは何ですか?

例えばテレビCMの依頼を受けたとしても、それだけつくって終わりではないということ。広告会社はコミュニケーションのみのオリエンを受けることがありますが、打ち上げ花火的にCMを打って認知が上がったとしても、使い勝手のよくないサービスだったらユーザーの満足につながらないですよね。僕の担当している出版系デジタルサービスのクライアントも、はじめはテレビCMの依頼を受けたのですが、サイトのUI改善が必須だと感じ、そこから提案させていただくことになりました。

―CM制作の依頼から逆上がりしてUI改善まで提案したということですが、UI改善まで長縄さんと取り組むメリットはどんなところにありますか?

クライアントとしてもUIに課題があることは認識されていたので、僕らが提案しなくても社内のデザイナーやWEBコンサルの力を借りてプロジェクトを進めたのだと思います。ただ、僕らは生活者発想を信条としているので、ユーザー視点でどうあるべきか、について深く掘り下げるのが得意。このケースでも、とにかくユーザーテストを繰り返して生活者が“期待していること”をあぶり出しました。サイト設計としてこうあるべき、という「べき論」で語るのではなく、実際のユーザーの反応を見ていただきながら、ワークショップ形式でクライアントとあるべき姿を探していく。一方的な「提案」ではなく、いっしょに走りながら最適解を提示していく「共走」の姿勢を大切にしています。

「鳥の目」と「虫の目」を往復するバランス感覚で、事業をドライブさせる

―「共走」を大切にしているということですが、そのとき心がけていることは?

ひと言でいうと「鳥の目と虫の目」でしょうか。僕が現在担当しているクライアントの多くは、デジタルサービスやアプリを開発する若い会社。なので、一時的に話題になればいいということではなく、中長期的にビジネスを成功させるためのお役に立ちたいというのが一番大きいスタンスとしてあります。僕自身、もともと事業会社にいましたし、営業もやってメーカー企業にも出向しました。こういった経験のなかで感じることは、ビジネスは総合格闘技なんだということ。例えば、誰もが目を惹くようなすごい広告クリエイティブができたとして、それはある場合では有効かもしれないけど、別のビジネスのシーンではまったく効果を発揮できないかもしれない。本当に必要なのはプロダクト改善かもしれないし、お客様窓口の拡充かもしれないし、顧客データの活用かもしれない。いま、どの種目で戦うのが一番勝率が高いかを見極めて、なにをすべきか判断する俯瞰力を大切にしています。それが「鳥の目」です。

―「虫の目」というのは?

「虫の目」というのは、博報堂が得意とする生活者視点であり、つぶさに生活者のインサイトを読み解いていく力のことです。地道に定量データや生活者の生の声と向き合い、ユーザーにとっての喜びがどこに潜んでいるかを明らかにしていく。この「鳥の目」と「虫の目」を行ったり来たりすることで、事業をドライブさせながらユーザーの満足に応えていくのが僕の仕事です。ある種クライアントと同質化しながら共走しつつ、企業の理論に偏ることなく、生活者の視点を注入していく。そのバランス感覚が強みだと思っています。

―さいごに、長縄さんがどんなクライアントのお役に立てるか、また長縄さんの“うまい使い方”があれば教えてください

まだ課題が特定できないけれど、なんとなくビジネスがうまく回っていない、というケースにお役に立てると思います。さきほど「鳥の目と虫の目」のお話をしましたが、課題を設定するところから生活者視点で解決するところまでいっしょに走らせていただけるとありがたいですね。広告会社に広告を発注して、数ヶ月後に納品されたものに払うお金って、どうしてもコストと捉えられがちなんです。でも僕のことはビジネスを成長させるための装置と捉えていただき、コストではなく投資として思ってほしい。そんな感覚でご一緒させていただけたらうれしいです。

長縄 雄一郎
第三BXマーケティング局 イノベーションプラニングディレクター

教育系出版社で企画・制作の経験を経て、2014年に博報堂入社。食品メーカー、旅行、自動車、ゲーム、自治体など幅広い業種でコミュニケーション戦略の策定を担当。2017年より現職。オンラインとオフラインを統合した体験設計で、生活者の幸せとクライアントのビジネス貢献の両立を実現することを信条とする。

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