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私を前進させる「4つの哲学」
博報堂人物図鑑 第5回/TBWA\HAKUHODO アシスタントアカウントエグゼクティブ 徳永二紀

2023.03.03
上司、先輩に限らず、部下や後輩であっても、「この人のここが素晴らしい!」と、リスペクトしている人が社内には必ずいるもの。本企画は、博報堂社員だからこそ知っているオススメしたい博報堂のスゴイ人をリレー形式で紹介していきます。
第5回の推薦者は、前回登場したビジネスプラナーの黒澤英恵。推薦するのはTBWA\HAKUHODO アシスタントアカウントエグゼクティブの徳永二紀です。

■黒澤からの推薦文
徳永さんとは入社前の軽井沢研修で同じチームだったのですが、「1年後、お互いどんな風になってるかな、スーパーな人材になれているかな」とそれぞれの未来の姿を想像してわくわく話していたのを覚えています。
配属先がTBWA\HAKUHODO ということで、お仕事でご一緒することはできていませんが、徳永さんがいろいろなことにチャレンジしている姿をたくさん目にして、「にき(徳永さん)のパワーはすごい」という同期からの声もたくさん聞いて、徳永さんが入社してからどんなお仕事をしてきたのか、いまどんなことを考えているのか、それを知りたくて今回のバトンを渡させていただきました!
持ち前のバイタリティと、周りへの高いアンテナと好奇心、そしてなにより会った人みんなが大好きになってしまうような人柄で、周りを照らす太陽みたいな徳永さん。きっとこの2年間もたくさんの「徳永ファン」を作ってきたのかな、と思っています。
あの軽井沢研修からもう2年経ってしまいますが、あの時想像していたような未来をお互い描けているのかな。どんな2年間でしたか?

■ここなら嘘偽りない自分で、輝けると感じた

——今回は2021年の同期入社である黒澤さんからのバトンを受け取り、徳永さんにご登場いただきます。黒澤さんとは入社時の軽井沢研修からのチームメイトなんですね。

徳永二紀(以下、徳永):そうなんです。私たちはコロナ禍での入社だったため、例年新入社員が参加する合宿型の「軽井沢研修」も全てオンライン。対面でないことに初めは不安もあったのですが、共有できる要素が少ないからこそ「とにかく研修期間は合宿と同じようにコミュニケーションをひたすら取り合おう。そして同じ時間を過ごそう」と、パスタを茹でている時間まで、昼夜画面を繋ぎっぱなしで。黒澤さん含め、初日はみんな他人だったのに、最終日には「これから頑張っていこう」と称え合って大号泣するほど、仲が深まっていました。

——コロナ禍の入社だからこそのエピソードですね。黒澤さんからも、徳永さんには語り始めるとキリがないほどのバックグラウンドがあるとお聞きしました。オーストラリア生まれ、日本育ち。高校はシドニーに行かれ、大学で再び日本へ。大学時代はなんでもウガンダで働いていたとか…。そんな徳永さんがなぜ博報堂へ入社したのでしょう?

徳永:ウガンダから帰ってきた時、ちょうどコロナが真っ盛りでした。本当はもう1回海外に行こうかと思っていたのですが、もちろんそんな選択肢は選べなくなってしまっていて。そこで一旦、日本には新卒制度もあることですし、社会人とは何かを学びたくて就職してみようと思ったんです。当時はとにかく自分に与えられた選択肢は全て検討したいと思い、あらゆる業種をチェックしました。

——その中で、広告業界にピンと来た瞬間があったんですね。

徳永:そうなんです。私自身にもオーストラリア生まれという生い立ちがありますし、私はそもそも「人間は、みんな違うんだ」という事実そのものが、すごく面白いことだと思っていて。その「違い」をうまく生かし合えたり、「違い」から生まれるアイデアが、新しいものを作ったりする。それが広告業界の醍醐味だと気づき、そんな世界に飛び込んでみたいと思いました。中でも博報堂に入社をしたのは、面接であらゆる角度から質問を受けて、嘘偽りない自分の言葉で話をすることができた会社だったから。ここなら自分らしく輝けるのではと感じたんです。

■限界まで考えることが、信頼関係につながる

——そんな徳永さんには、事前に「限界まで考える」「目的意識を忘れない」「『当たり前』を問う」「徹底した効率化」という、業務への4つのフィロソフィーがおありだと伺いました。今回はこれらについて、徳永さんのバックグラウンドも併せて紐解きたいと思います。まずは「限界まで考える」。これについて教えていただきたいです。

徳永:この「限界まで考える」は、ある種、私の趣味のようなものなんです。話は私の小学生時代にまで遡ります。当時、日本語がほとんど話せず、見た目も日本人らしくない私には、日本の公立の小学校の中で自分が「浮いているな」という自覚がありました。それ故にちょっといじめられたこともあったのですが、その時「なんで自分がいじわるをされるんだろう」「自分は他の人と何が違うんだろう」とひたすら考えたんです。

——誰しもそんな状況に置かれれば「学校に行きたくない」と現実から逃避しようとするものですが、そこでひたすら「考える」という行為に没頭した、と。

徳永:そうなんです。そうやって諦めずに考えていくと、元来の負けず嫌いという性格も相まって、「自分には、他人にないどんなストロングポイントがあるのか」といったことに気づけるようになりました。同時に、自らが置かれた環境にも考えを巡らせると、日本のいいところも発見できて、日本自体も好きになりましたし、自分のことをよく思っていない人に対しても拒否反応を示さず、許容できるようになったんです。そこから考えることが大好きになって。今携わっている仕事についてだけでなく、あらゆることを「考える」——むしろ、それを飛び越えて「こうなったらいいな!」と妄想するところまで行き着くこともあります(笑)。

——広く浅く、深く狭く、といった言葉がありますが、徳永さんは“広く深く”考えていらっしゃると感じました。お仕事の面でも、その「限界まで考える」ことは生かされているのではないでしょうか。

徳永:仕事の面でも「考える」ことは信頼関係に繋がるのだと感じています。例えばクライアントから何か疑問を投げかけられた時、それに答えられるか・答えられないかは、事前にいかに相手のことを考えていたか次第だと思うんです。そこでしっかり回答できれば相手から信頼を得られるでしょうし、AプランとBプランだけじゃなくて、二つともダメだった時のCプランまで考えを用意しておく。そこまで徹底して「考える」ことを貫けば、誰から何を聞かれても絶対に全部答えられるはず。新卒からの1年は、それを常に心に抱いて、走ってきたと思います。

■主観的な思考に陥るサインを見逃さない

——続いて「目的意識を忘れない」、こちらについて伺えますか。

徳永:誰しも、目の前にあることにどうしても思考が持っていかれてしまうものですし、私自身も、もちろんそうです。特に仕事を始めてから、よくそんな場面に出くわします。「このアイデアは面白いな」「こんなことをやってみたいな」と、いろいろな情報が飛び交うと、ワクワクしますよね。でも、それって主観的な思考に陥るサインだとも思っていて。そこで「そもそもこれって、何のためにやっていたんだっけ」と立ち返ると、次に取るべき行動が分かったり、精査しなければならないことに気付けたりすると思うんです。これが「目的意識を忘れない」という2つ目の私の軸ですね。

——なるほど。その「目的意識を忘れない」重要性に気づいたきっかけもあったのでしょうか。

徳永:これは私の大学時代のラクロス部での経験から得た気づきだと思います。スポーツって、勝ち負けで結果が出るシビアな世界だからこそ、どうしても目の前の試合の結果だけにこだわってしまう。でも、当時ラクロス部の主将だった私は、チームマネジメントやチームビルディングといった視点からもメンバーを見ていて、「その時の試合に勝つことだけを考えれば良いのだろうか?」と、またひたすら“限界まで考えた”んです。

そうして気づいたことがありました。個々人が最大限のパフォーマンスを出せるためには、しっかり前準備を整えること、そして全員が同じ目標を掲げて共通認識を持ち、試合に挑むことこそ重要だということ。そこから、目の前のことだけに飛び付かず、「目的意識を忘れない」という重要性に気づけたんだと思います。

■「当たり前なんて、ない」——ウガンダで得た気づき

——そして3つ目が「『当たり前』を問う」ですね。

徳永:自分にとっての当たり前が、他人にとっての当たり前でない…そんなことは往々にしてあるものです。これは私が学生時代、ウガンダに行ってひしひしと感じたことでもあります。

——確かに、ウガンダではきっと多くのカルチャーショックがあったのではないでしょうか。

徳永:そうですね。私自身、ルーツがオーストラリアにあったこともあって「どの国でも飛び込んでいけるだろう」という思いはあったのですが、どうしても私の中でイメージできなかったのがアフリカのカルチャーでした。だからこそ、一度は単に旅するのではなく、ちゃんと住んでみようと思ったのが、ウガンダを訪れたきっかけだったんです。縁あって現地の塾のインターンに参加したのですが、そこに集まる子どもたちはパソコンを触ったこともなければ、飛行機に乗ったことも、ましてやエスカレーターに乗ったこともなくて。

——それこそ自分にとっての「当たり前」に共感を持ってもらえないからこそ、「『当たり前』を問う」ことが重要だと気づかされたわけですね。

徳永:そうなんです。そしてこれは社会人になっても生かされる、大きな教訓でした。社内には生きてきた時代もバックグラウンドも違う人たちが集まっていて、たくさんの考えが溢れかえっている。だからこそ「それって当たり前に、こういうことでしょう」という前提で話してしまうと、時にそれが円滑なコミュニケーションの妨げになってしまうことがあるのだと思うようになりました。

それに、職種への「当たり前」も取り払っていきたいと思っていて。私は今アカウントエグゼクティブ職ですが、だからといってアイデア出しをしてはいけない訳はありません。以前、クリエイティブの方々がどういったところで悩んだり、アイデアを発展させたりしているのかを知りたくて、クリエイティブの視点に立って自分なりのアイデアを提案したことがありました。新人ということもあって手を挙げて良いのかな、という一抹の不安はよぎりましたが、そこで発言をできたからこそ、チームメンバーから「二紀って一緒に考えてくれるメンバーなんだ」と思ってもらったきっかけになったと思います。

■クリエイティビティを出すための効率化が、自分の“戦い方”を増やしていく

——最後が「徹底した効率化」です。

徳永:デンマークやスウェーデンに行くと、現地では暮らしのさまざまなところで効率化が図られています。その分、クリエイティビティを伸ばすためのモノや場所づくりには時間、お金をしっかりとかけている印象があって。そういった考えを、私自身も仕事や生活に落とし込みたいと、日々思っています。

特に、博報堂のようなさまざまなアイデアが欠かせない会社にいる以上、私自身もできるだけパーソナリティが生きる部分に時間を割きたい。だからこそ、今当たり前になっているプロセスの中で何かスリム化ができることがあれば、そこは積極的に手を入れていきたいですし、空いた時間でよりクリエイティビティを出していきたいと思っての「徹底した効率化」です。

——なるほど。これまで徳永さんのフィロソフィーをいろいろと伺ってきましたが、その一つ一つが、徳永さんのバックグラウンド故に浮かび上がってきたものと感じました。最後にこれからの抱負をお聞かせいただけますか。

徳永:これはお話した4つにも通じることですが、これからきっと今までにない手段が広告業界の中でもどんどん出てくると思うんです。だからこそ、いつもフレキシブルに、自分の持っている手段や戦い方を増やしていきたい。初配属がTBWA\HAKUHODO という外資的要素のある場所だったからこそ、グローバルな視点で、小さな芽でもそれを大きく育てられるような人間になっていきたいですね。

<コラム>
▼仕事よりも夢中かも…私、今これにどハマりしています!

自分でイベントを主催すること! 先日は1日限定で「スナック桃色吐息」を開店して、自らママを務めました。イベントを企画すると、これまで参加側だったりお客さん側だった自分が、主催や店主の立場に立って「こうすればみんな楽しんでもらえるんじゃないかな!」と考えられることがとても楽しくて。あと、職場の人や学生時代の友人など私の大好きな人たちが、互いに仲良くなって楽しい時間を過ごす…そんな場所を作れるのも、醍醐味だと思います。

取材・執筆=田代くるみ(Qurumu)、撮影=杉能信介

ビジネスプロデュース職について、詳しくはこちら
( TBWA\HAKUHODOはアカウント職)

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