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フルファネル型マーケティングの効果を最大化する「人を巻き込める企画」づくり
(連載:愛されるDXはカタチにできるのか Vol.10)

2021.12.08

「広告朝日」の新連載「愛されるDXはカタチにできるのか」の第10回、博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 アクティベーションディレクター 櫛田直希の記事が掲載されました。

博報堂グループにおいて、クライアント企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を、マーケティングDXとメディアDXの両輪で統合的に推進する戦略組織「HAKUHODO DX_UNITED」。その唯一のクリエイティブ部門である「生活者エクスペリエンスクリエイティブ局」は、“潜在需要を発掘し、生活者の新たな好意・行動を喚起し、よりよい生活、社会を創り出す”といった価値創造型のDXをリードする部門です。キーワードは、「愛されるDXは、カタチにできるか?」。このテーマに取り組むメンバーたちの多様な視点をご紹介していきます。
連載第10回は、生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 アクティベーションディレクターの櫛田直希が登場。クライアントのマーケティングの課題解決のために、マス・デジタル・SNS・リアルなど領域を横断し、フルファネル型のコミュニケーションを企画する櫛田が得意とするのは、ターゲットが自発的に参加したくなるキャンペーン。人を巻き込むプラニングのポイントについて聞きました。

ターゲットとなる生活者にとっての喜びは何か。人は実利がないと動かない。

──アクティベーションディレクターとは、どういう仕事なのでしょうか。

今の自分のプランニングのバックボーンとなっているのは、初任配属されたセールスプロモーションと称される領域のプロモーションプラニングの経験です。入社当時は「商品を購入してもらう」ための仕掛けとして、景品やサンプリング、ポップアップショップ、メディアやコンテンツのタイアップなどを企画していました。そもそも、人は何かしらの実利があるから動きます。人を動かす仕掛けをする領域が、デジタル化が進んだ2010年以降、徐々に広がってきました。昨今は商品を購入してもらう瞬間だけではなく、知ってもらう、興味を持ってもらう、好きになってもらう、SNSで広げてもらう等様々なフェーズにおいて、一気通貫してターゲットを巻き込むキャンペーンテーマの開発を行っています。

常に大事にしているのは「理想的なリアクションを獲得するためには、何をすべきか」ということ。それをすると、ターゲットはなぜ「動く」のか。

彼らの行動原理や動機を刺激するアイデアで、人を巻き込む仕掛けづくりを専門にマーケティング・コミュニケーション設計をリードするのが、アクティベーションディレクターの仕事です。

──生活者との様々な接点を活用してコミュニケーションを行うべく、トータルでディレクションしているのですね。

企業のパーパスやビジョンなどを生活者に受け取ってもらうためには、それに対して共感や実感ができる「体験」が必要だと考えています。素晴らしいパーパスやビジョンも、具体的なサービスやマーケティング活動を通じて、生活者にとって実感できるベネフィットに昇華されていなければ、一方通行なものになってしまうと思います。マーケティング活動の一部である広告コミュニケーションにおいても、全く同様で、ターゲットとなる生活者のメリットやモチベーションを意識し、彼らが能動的に動きたくなる気持ちをつかむことが必要で、そのためのアイデアを様々なマーケティング課題に応じて考えていきます。

──具体的にはどのように考えていくのですか。

具体的な施策アイデアの検討をはじめる前に、ブランドの今期の課題や、中長期的なビジョンも踏まえ、「何が、より優先的に取り組むべき課題」で、逆に「何をやらなくていいか」が、コミュニケーション戦略ともいえる“打ち手”の大まかな方向性を定めます。

大事にしているのは、ターゲットにとっての「喜び」を考えること。あまたある選択肢の中から、その方向性でキャンペーン設計をした場合に、どんな「喜び」を提供できる可能性があるのか。ターゲットがこのブランド体験をすることで、どんなメリットを感じるのか、を常にイメージしながら、彼らを動かすための作戦と、その作戦を実現する為のキャンペーンテーマを決め、具体的な施策を考えていきます。そして、その次の具体的な施策を設計する際のポイントは「人を巻き込める企画」であるかどうかです。

──「人を巻き込める企画」づくりに必要なことは何でしょうか。

まず、人が巻き込まれる「理由」が設計されているかどうか。人の巻き込み力を高める工夫として、大きく3つのポイントがあると考えています。順番に説明しますね。

1つ目の「その企画は、みんなが話題にできるか」というポイントは、「話題になるか」ではなく「話題にできるか」。どれだけ知恵と工夫を凝らしても、どの程度話題になるかどうかは実施してみないと分かりませんが、その勝算を高めることや、話題にされる必然性を強化するプラニングは可能だと思います。

例えば、工夫していることの一つに「分かりやすい呼び名をつける」があります。企画のコンテンツや広告表現・装置、そこで創出するユーザーのアクションなどに対して、積極的に口にしやすい・印象に残りやすいキャッチーな呼び名をつけるようにしています。呼び名があるとSNSでも発信しやすいし、人に伝えやすいですよね。ハッシュタグ化できるぐらい短いテキストで理解しやすいワードだと、タイムライン上で更に拡散が狙えます。みんなが使いやすい、便利な呼び名であることも、大事なことです。

ある人気コンテンツを原作としたゲームアプリのキャンペーンでは、デジタルコンテンツや体験型交通広告など、様々な施策を立体的に設計・展開したのですが、原作コンテンツのストーリー中に出てくる、ファンならば誰もが知っている“第1話の象徴的なシーン”を「コト化」し、そのままキャンペーンタイトルにしました。その名前は、ストーリーを知る人にとっては誰もが分かるワクワクするフレーズでありながら、知らない人にとっても「なんだろう?わからないけれど面白そう!」と思ってもらえるようなキャッチーなものだったので、SNSのタイムライン上でキャンペーンタイトルとイメージ絵の情報が広く拡散されました。

──口コミをされる企画とされない企画の差は何なのでしょうか。

口コミしたくなる「理由」や「メリット」があるかどうかだと思います。良質な口コミを自発的にしてもらうためには、「自分の意見を発信する都合のいいきっかけ」があることも一つのポイントだと思います。あるゲームのキャンペーンでは、「過去に夢中になったゲームの話をしたい」というファンの気持ちを捉えるべく、キャンペーンに参加するSNS投稿アクションの中で、ファンの間で思い出トークを誘発しやすいハッシュタグを開発しました。

探るべきことはモノやコトよりも、反応してほしい「人」の行動原理

──ファンが喜んでくれるポイントは、どうやって見つけ出すのですか。携わる案件が、必ずしも自分がターゲットだったり、詳しい商品やサービスとは限らないと思います。

商品やサービスについては、当然、一通り勉強します。ただ、それよりも知るべきことは、反応して欲しい「人」のことです。今回、行動してほしいターゲットにとっては、何が一番嬉しいことで、関心事は何か。捉えるべき行動原理などを探っていくのです。

とはいえ、どれだけ考えられた施策、企画であっても、こちらが意図したとおりに動いてくれるのは一握りです。人は、そうそう意図したようには動いてくれない、というハードルを意識して設計していきます。

──どうしたらよいのでしょうか。

そのために考えることが「その企画は、みんなが追体験できるか」という二つ目のポイントです。良い企画でも、それを見聞きする人数に対して、実際に行動を起こす人はごく少数であることを念頭におきつつ、その代わり、こちらが意図したプラン通り完璧に参加してくれなくても、ライトなリアクション創出につながる芽を着実に増やしていくプランを検討します。

ある飲料メーカーの仕事では、女子中高生の生活に入り込むために、遊びたくなるユーモラスなパッケージを開発し、アイドルグループの女性たちが楽しくふざけ合いながら、動画や写真を撮るシーンをテレビCMやSNS動画として配信しました。その通り完璧にまねして遊んでくれたら、100点。ただ、100点のリアクションばかりである必要はありません。例えばSNSへのアップや撮影などはしてもらえなくても、学校の教室や放課後に「なにコレ、面白い!」といった楽しい会話やちょっとしたふざけ合いが生まれたり、その場で商品を通じて、ブランド体験としてふさわしい、楽しい時間が創出される期待値はあるはずだ、という意識で企画をしています。

そういった様々なリアクションや会話が生まれる可能性となれる要素を、企画の中に確信犯的に盛り込むことが大切だと思います。企画に反応してくれる人の表面積を広げること、何かしらのカタチで、キャンペーンに触発される「人の動きの総量」を増やすことは常に意識をしています。

──情報過多な今、話題を継続させることも課題の一つです。

どんなにSNS上でバズっても、翌週には古い話題になってしまいます。少しでも話題の賞味期限を延ばすために、あるゲームのキャンペーンでは、デジタルとリアルでの体験をうまく絡めながら、企画の「追体験のしやすさ」を担保しました。リアルな交通広告の掲出の場で、その場でしか手に入らないノベルティをフリーペーパー形式で配布したのですが、まず真っ先に入手した人々がその希少性の高いノベルティをSNS上で活発にアピールします。すると、次にそれを見て知った人が、後追い組として後日現場に赴き「私も例の場所に行ってみた」「話題のアレを入手できた」と続々と追体験投稿を行い、狙い通り、一定期間にわたる持続的な話題化を図ることができました。このように後追いでキャンペーンを認知し参加した人でも、自分のタイミングで発信したくなるモチベーションを設計してあげることは、初速の第一波のバズ以降も口コミを持続させるコツの一つだと思います。

──3つ目の「その企画は、みんなが担げるか」についても教えてください。

理想は、クライアントのサービスに関わる様々な人からも、次々と新しいアイデアやサポートする動きが生まれて、その企画が単発で終わらずに、一定の期間や規模感をもって実現される活動として広がっていくこと。そのためには、クライアント社内の他部門や、時には社外の流通の方々などのメリットも設計できると、企画のスケールが大きくなると思います。例えば、何かユニークなパッケージデザイン等を開発する際には、営業部門の方が商談の現場で語りやすいストーリーがあったり、流通現場の方が思わず棚に並べたくなるような店頭ニーズに合致したデザイン性があること等、さまざまな立場の人にとってバリューのある要素が含まれていることで、その企画が“みんなが担げる御神輿”になれば、持続性のあるブランド活動として定着する可能性があります。

──生活者はもちろん、商品やサービスに関わる人たちに愛されることが必要なのですね。

生活者エクスペリエンスクリエイティブ局では「愛されるDX」を提唱していますが、まさに「愛される」ことが、ブランドやサービスにおいて重要な課題になっていると思います。愛されるとか、感動といったほど強い感情ではなくても、面白い、楽しい、かわいい、好きといったライトなものも含めて、ポジティブな感情をどれだけ多くの人に長く感じてもらえるか。そんな「喜びの総量=企画に反応してくれる人の表面積、を増やす」ことこそ、人を巻き込める企画のプラニングにおいて目指すべきことだと思っています。

櫛田直希(くしだ・なおき)
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 アクティベーションディレクター

2010年博報堂入社。フルファネル型のコミュニケーション設計やキャンペーンアイデア開発を得意とするアクティベーションディレクター。モチベーション設計力を活かした巻き込み型キャンペーンが得意。
2020年1月より、博報堂グループ内の、クリエエイティブブティック 株式会社SIXにてクリエイティブディレクターを兼務。マス・デジタル・SNS・リアルなど領域を横断する統合型コミュニケーションが求められるクリエイティブディレクターを担う。

※「ウェブ広告朝日」より転載
(21-3049 朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)

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