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SDGs×クリエイティビティ。博報堂DYグループのソーシャルアクション「Q&Action for SDGs」が目指す未来とは

2021.03.31
#CSR#SDGs
左から、博報堂アイ・スタジオ 二口航平、博報堂 井川優衣子、新渡戸文化高等学校/(一社)Think the Earth 山藤旅聞先生、博報堂アイ・スタジオ 近藤まり子
「Q&Action for SDGs」は、「変化を続ける時代の中で、正解のない問い(Question)に対し、解決策を自ら考え抜き、行動(Action)で応えていく」という考えのもと、クリエイティビティで持続可能な社会の創り手を育むことを目指す、博報堂DYグループのソーシャルアクションです。当社グループの有志メンバーが集まり、教育機関やNPO、学生等と連携し、2019年にスタートさせました。教育現場の課題に対して当社グループができることとは。SDGsと教育を糸口に、本当に実現したい社会の姿とは――。SDGsを授業に活用する山藤旅聞先生と共に考えます。

「好き」から辿ってSDGsを考えるワークショップ

井川
「Q&Action for SDGs」は、博報堂DYグループのクリエイティビティを活かし、持続可能な社会の創り手を育んでいこうというオリジナルのソーシャルアクションで、答えのない問いに行動で応えていくことを目指しています。ベースとなったのは、途上国の水問題に対してもっと関心を持ってもらおうと、我々グループ社員の有志メンバーがユニセフと共に約10年間さまざまな施策を企画してきたTAP PROJECT JAPANです。

TAP PROJECT JAPANの2017年の活動についての詳細はこちら

当社グループとしてSDGsへの取り組みを本格化させるタイミングでもあり、2017年のTAP PROJECT JAPAN終了に伴って新たにSDGsに関連したプロジェクトの検討をスタートしました。そして、SDGsの本質理解や自分ごと化につなげるためにも、SDGsの17目標を掘り下げるのではなく、“多様な人たちと一緒に動き続ける”というアプローチ方法を残していけたらと考えました。

https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/csr/qnadaction/

近藤
その後、教育とSDGsに取り組まれている一般社団法人Think the Earthさんのお話をうかがう中で、実は教育現場では先生方がどうSDGsを教えていけばいいか悩まれているということを知りました。その教育現場の課題と、私たちの考えるSDGsへの向き合い方が結びつくのではないかと考え、本格的にプロジェクトが動き出すこととなりました。

二口
僕らが仕事にしているコミュニケーションにおいては、たとえば一つの言葉、絵が、見た人に1秒で伝わるくらい強いか?といったことが日々問われます。でもこと教育、授業となると、45分、90分という時間でじわじわと理解していき、さらにその積み重ねで育てていくというプロセスが前提です。同じ伝えるにしても、広告とは異なる時間の流れ方を感じながら、プログラムを練っていきました。そして昨年12月、キックオフイベントとして実施したのが、Think the Earthさんが企画した「みらいをつくる超文化祭」におけるワークショップです。

さまざまな学校の中高生や企業の大人が集まり、「持続可能な社会の実現」を中心テーマに、それぞれが活動や考えを発表したこの文化祭の中で、我々のチームは、参加者へSDGsに関する「問い」を投げかけ、みんなの未来へのアクションアイデアを集めて一枚のビジュアルボードを作るブースを出展しました。

その中で、手を動かし行動しながら考えることの重要性を体感してもらえるように取り入れたのが、
①好きな材質の紙や画材を選び、
②ActionのAの形になるように紙を切りとり、
③そこにアイデアを書いて模造紙に貼ってもらう、
④みんなのアイデアがさまざまな色や形のAとして集まることで1枚の模造紙が彩られていく
というアナログな体験です。

身体を動かして楽しみながら体感した経験は、頭では忘れても無意識にポジティブな印象が残りやすいと考え、SDGsに興味を持つ入り口として、とにかく直感的なワークショップにするための仕掛けを意識しました。僕らが普段から色々とアドバイスをいただいている山藤旅聞先生も、Think the Earthのメンバーとして「超文化祭」の企画に携わられました。僕らのブースはいかがでしたか。

「超文化祭」での博報堂DYグループのブース風景。当日は80名を超える中高生の皆さんがワークショップに参加。

山藤
僕はここ数年SDGsを取り入れた教育デザインやプロジェクトづくりに関わっていますが、Q&Actionチームのワークショップで目からうろこだったのは、好きな色を選び取ることから始めるといった、子どもたちの個性を引き出そうとする発想です。実際SDGsは、「総理大臣にならないと解決できない」とか「法律変えないと実現できない」というレベルの発想になりがちですし、ともすれば“学校で学ぶもの”になって、手段が目的化しかねません。でも今の子どもたちは、自分が何に関心があるか、自分しか持っていない色は何か、というところから辿った先にちゃんとSDGsを位置付けています。

先日も、オンラインで開催された博報堂社内のテストワークショップをオブザーブさせていただきましたが、やはり大きな軸になっていたのは「好きから始まる」でしたね。私自身、現状の教育デザインでは全員のアクションを引き出すことが難しいと考え、もしかしたら感覚的な活動、フィールドワークなどが有効だろうかなどと模索していたタイミングでした。オンラインワークショップでは、「好き」を分解することから始め、上手にSDGsの縛りも入れて、アクションアイデアを皆でプランニングするという手法を見せてもらい、かなり刺激的でした。すぐに自分の授業でも活用させていただいたほどです(笑)。

井川
それはありがとうございます!一番嬉しい言葉をいただけました。

Q&Action for SDGsプロジェクトによる「好き!からはじめるSDGsワークショップ」詳細はこちら

教育現場と社会をつなぎ、子供たちの笑顔がもっとうまれる“縁側”のような場所に

山藤
僕が行った授業の対象は高校1年生で、皆さんが行ったワークショップと同様、自分たちの「好き」を分解し、SDGsの17目標と結び付けてもらうことから始めました。次に自分たちで取材相手を探し、話を聞きに行きました。たとえば規格外野菜を活用しているレストランを取材した子たちは、使えるけど捨てられる野菜がたくさんあることを知り、パン好きな子たちも巻き込んで規格外野菜を導入したパンづくりを実施しました。「無駄をなくしたパン屋さん」として、いまもアクションを続けています。ゴミ問題に関心があったグループは、地域の清掃活動に参加し、そこでで知り合った方の企業訪問をし、海洋プラスチックゴミのリサイクルについて知りました。

ゴミ問題に関心があったグループは、地域の清掃活動に参加する風景

そこへ、プラモデルが好きなグループも合流し、今度、海洋プラスチックゴミからプラモデルがつくれないかを相談しにいきます。また、プラモデルで戦艦をつくるのが好きな子が、戦時中の戦艦に実際に乗っていた元乗組員の方を探し出し、戦争体験を取材してきたケースもありました。

プラモデルで戦艦をつくるのが好きな子が、戦時中の戦艦に実際に乗っていた元乗組員の方を探し出し、戦争体験を取材する風景

話すのは苦手だけど映像編集は得意な子だったので、「目の前で大和と武蔵が沈むのを見た」などの貴重な証言と、当時の戦艦のフォーメーションなどを再現したビデオを作成し、学園の文化祭で発表しました。

二口
僕らは生徒たちに直接教える機会がこれまでなかったので、生徒たちのクリエイティビティや持っている強みによってきっかけが生まれるような、新しいプロトタイプをつくりたいと考えていました。先生が実際に現場で実践してくださり、しかもすごく素敵なプロジェクトに発展していて、感激です。

山藤
僕は専門が生物学だったので、どうしても地球環境系の項目に目が行きがちなのですが、一人ひとりの興味関心からスタートすることで本当に多岐にわたる項目につながりました。教員もファシリテーションはせずに生徒たちと併走するのですが、生徒主導なので予定調和的ではないし、取材先での出会いや発見を子どもたちと共に体験できて、教員自身も非常に楽しい。

近藤
私たちが、「好きから始める」というフレームづくりにあたり、考えたのは、そもそも大人たちはどうSDGsに関わるのがいいのか?ということ。おそらく自分が携わっている「業種」に関連した項目から始めるのが最適で、それぞれがすでに持っている強みをSDGsと掛け合わせて取り組めば、すべての課題が解決していくはずと考えました。ですから子どもの場合は、部活だったり趣味だったり、「好きなこと」を軸にすればいいと思いました。自分の関心事から、世界を変えていく成功体験を作って、それを大人になっても続けていってほしいと思っています。

本ワークショップの資料より。詳細はこちら

山藤
皆が自分の好きから始まって、少しずつ新しいアイデアや要素を足しながらアクションするという経験を積めば、大人になっても自分とは違うベクトルの人を許容しやすくなるかもしれない。寛容な世界になるかもしれませんね。

井川
本当にそうですね。私自身このプロジェクトにかかわる根底にあるのは、不寛容な社会から、より隣人を尊重できるような社会に変えていきたいという思いです。誰もが好きなことを自由に追求でき、かつそれが互いを幸せにできるような、それを理解しあえる世界につなげていけたらと願っています。

山藤
学校はどうしてもベースに教科書があり、正解を迅速にアウトプットできることが良し、とされるフレームワークがありますから、企業の皆さん、特にクリエイティブでユニークなアイデアを専門とされる博報堂DYグループの皆さんがその固いフレームに風穴を開けてくれることで、子どもたちの笑顔がもっと増えるような気がします。皆さんとの関わり合いが、学校と、その先に広がるもっともっと楽しい社会、世界の、その中間に存在する縁側のような場所を生み出せばいいと思いますね。そして僕らも内側から、その縁側的空間を広げるようなことができればと思います。

井川
是非その縁側づくりをご一緒していきたいです。今後ともよろしくお願いします!

山藤 旅聞先生
新渡戸文化高等学校 統括校長補佐/(一社)Think the Earth SDGs for Schoolアドバイザー

2004年より都立高校で生物の教員となり、オール実験の授業や生徒の「問い」だけですすめる授業、生徒が主体的・自立的に学びを進める「対話式・双方向性授業」などを実践。
現在は、教科と社会課題をつなげて、生徒自らが解決に向けて「行動する」ことを目指す授業スタイルを確立する。 具体的には、企業やNPO/NGOとパートナーシップを組んだPBL(project based Learning)を実施し、現在は70を超えるプロジェクトを生み出している。 2017年「未来教育デザインConfeito」を立ち上げ、(一社)Think the Earthと協働しながらSDGsを取り入れた教育デザインの実践紹介やプロジェクト作り方について、全国規模で出前授業や講演を展開。教科書の執筆やNHK高校講座の講師など、多領域での教育活動も展開中。 2019年より現職。 共著に『気候変動の時代を生きる』(山川出版・2019年)、『未来を変える目標SDGs アイデアブック』(Think the Earth・2018年)がある。2019年環境省グットライフアワード環境大臣賞受賞。

井川 優衣子
博報堂TEKO アクティベーションディレクター

2011年博報堂入社。営業職を経てプランナーに。2016年にアジア地域最大級の広告コミュニケーションフェスティバルで行われるYoung Spikes(メディア部門)で日本代表に選抜され、本戦でSilver獲得。現在はクライアント各社の統合コミュニケーションの企画・制作や、新規事業開発などに携わる

二口 航平
博報堂アイ・スタジオ デザイナー

インタラクティブ広告や事業開発領域を中心にプランニング/UX設計/インターフェースデザイン/アートディレクションに携わる。主な受賞歴:NY ADC Gold, WIRED CREATIVE HACK AWARD 19 グランプリ, グッドデザイン賞, 日本タイポグラフィ年鑑入選など

近藤 まり子
博報堂アイ・スタジオ プラナー/ディレクター

外資系広告代理店のストラテジストを経て現職。国内・海外での新規事業PoCなど、ブランド・事業戦略とデジタルでの体験設計・コミュニケーション設計をつなぐ役割。保育士免許を持ち、子ども向けのワークショップやプログラム開発も進める。Young Lotus 2019日本代表、Silver/ Popular Vote賞受賞。

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