中川:
続いてDownsizeを見ていきましょう。
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江:持ち歩き用ちょい足し調味料セット
楠田:ひとりホットプレート
鈴木:1人乗りカプセルカー
植月:贈り物帰省
馬場: 行政の業務改革
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江:
新型コロナウイルス感染症対策で、ラーメン屋さんなどでは、醤油をはじめ調味料類を置かなくなりました。ちょっと味に変化を出したいときに困るので、いろいろな調味料を調合したオールインワンの新しい商品として、持ち歩きやすいものがあってもいいのではと考え、「持ち歩き用ちょい足し調味料セット」としました。
中川:
小型化の事例ですね。
楠田:
ひとり鍋があるなら、「ひとりホットプレート」があってもいいだろうと考えました。直火でも使えるホットプレートなら、キャンプにも持って行けます。
中川:
ソロキャンプで、ひとりで焼きそばをつくったりしてね。物理的距離をとらなければならないからひとりということもあるし、ひとりの時間を楽しみたいということもある。ひとりもテーマになるかもしれないな。
鈴木:
物理的距離、精神的距離をとる上で再注目されているのがクルマです。オンライン打ち合わせをクルマの中で行うという人が意外に多いですし、精神的距離をとることができ、落ち着くということがあるのかもしれません。そこで、クルマを小型化した「1人乗りカプセルカー」。移動式の個室です。
中川:
一家に3台、4台とあって、それが自動運転なら最高ですね。ものの「小型化」以外にありますか?
植月:
帰省がはばかられる中で、今年はお花で帰省しようというキャンペーンがありました。帰省する代わりに花を贈ろうというものですが、贈るのは花に限らず、たとえば東京ならではのものなどでもいい。「贈り物帰省」と書きましたが、ものを贈ることで帰省するというのが、帰省の新しい概念として生まれ、つながっているという感覚が生まれるのではないかと思いました。
中川:
大がかりな準備をして移動するという帰省ではなく、簡素化した帰省。
植月:
動画でつながるというのもあると思います。それも何日もかけて撮影したものではなく、簡単に撮影して「元気ですか!?」というのがいいですね。
中川:
帰省はふつう、年に1回か2回ですが、簡素化すると実家とのコミュニケーションの回数が増えるかもしれませんね。次の「行政の業務改革」とは?
馬場:
ハンコを使わなくてもよくなるとか、行政の業務でコンパクトにできることが見えてきました。行政の業務改革がきっかけとなって、たとえば保険の契約書のようなものの簡素化やデジタル化も進めば、ビジネスも広がるだろうし、個人的にもうれしく思います。
中川:
たとえば起業がワンタッチでできるようになれば、いろいろなことにチャレンジする人がもっと増えるかもしれない。なるほど、Downsizeは「小型化」に目がいきがちですが、手続きや儀礼、行動などの「簡素化」という方向もあるわけですね。
中川:
最後はDelightです。
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鈴木:プレミアム家カフェ
馬場:デリバリーをもっとおいしく
江:メンタルケアのためのペット&ロボットレンタルサービス
楠田:耳ビジネス
植月:次社会ファッション
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鈴木:
在宅勤務になり家でコーヒーを飲む機会が増えたため、カフェに出かけることが減りました。「プレミアム家カフェ」は、自宅をプレミアムなカフェにすることによって、ビジネスチャンスも生まれると思います。たとえば、コンビニが家カフェ商品を開発するとか、おいしいコーヒーを入れられる調理家電ができるとか、ひと手間でおいしいお茶菓子ができるものが登場するとか、おうちカフェの時間を充実させるものが考えられます。
中川:
おいしいコーヒー豆とお茶菓子が届く、家カフェのサブスクサービスがあってもいいよね。
鈴木:
それもいいですね。
中川:
最近、急須でお茶をいれる人が増えているそうで、注目されています。急須でお茶をいれ、ゆっくりと自分の時間を楽しむということが見直されているわけです。Delightには、もともとは自宅でやっていたことを、よりよくするという方向がありますね。馬場さんも同じ方向かな?
馬場:
デリバリーの料理が冷めていたので、おいしく温められるレンジがあればうれしいなと単純に思ったのが、「デリバリーをもっとおいしく」なんです。それとデリバリーの料理に、ちょい足しするとおいしくなる調味料などもあるかと思います。
中川:
デリバリーの料理や惣菜よりも、レストランの料理のほうがおいしく感じたりしますよね。
馬場:
レストランの料理はできたてですから。
中川:
それはそうだ。その「できたてクオリティ」を、チンひとつで調理家電が再現してくれるわけですね。江さんのも、今あるものをよりよくする方向かな?
江:
おうち時間が増えたことで、孤独感を覚えたり、精神的不調を訴えたりする人も増えたため、そうした不調やストレスを癒やしてくれるものへのニーズも高まっています。癒やし効果が高いのはペットやロボットということで、「メンタルケアのためのペット&ロボットレンタルサービス」です。植物や盆栽のように動かないものでもいいと思います。ロボットは高価だし、ペットはランニングコストがかかるので、レンタルがちょうどいいかもしれないと考えたわけです。
中川:
犬や猫だけでなく、いろいろなペットがレンタルできたらいいね。僕はゾウガメやアルパカ、カピバラがいいな。
江:
アルパカでは、Downsizeにならないでしょう(笑)。
中川:
そうした生活をよりよくする方向がある一方で、楠田さんのは?
楠田:
「耳ビジネス」です。会社と違って、在宅勤務では音楽やラジオを聞きながら仕事ができるので、耳への注目が集まっています。また、イヤホンをしながらテレビ会議などをしていると、周りの音に気づきにくかったりします。そうしたことから、クリアな音が流れるようになっている椅子のヘッドレストといった耳周りの商品が、これから登場するのかなと思いました。
中川:
たしかに、耳周りには商品化のネタは多いと思います。以前、江さんも言っていたけど、在宅勤務の運動不足を解消するために歩く人が増え、歩いているときに音楽や、語学のテキストなどを聞くということもありますから、家の外で使える商品も考えられます。
楠田:
うまく眠りに入るために、枕やマットレスから音楽を流す商品といったものも考えられます。
中川:
なるほど。商品化の可能性はメチャメチャありそうですね。植月さんの「次社会ファッション」とは、どんなものなのでしょうか?
植月:
マスクやエコバッグなどを持ち歩くようになって、マスクホルダーがプチファッション化するといったことが生まれています。「次社会ファッション」は、マスクなどとファッションの融合があるのではないかと考えたものです。パーカーが服と帽子の合体したものとすると、エコバッグとズボンの合体もあるのではと思います。
中川:
それはなかなか斬新なアイデアですね(笑)。
植月:
合体はしなくても、持ち歩くときの色味を考えるなど、エコバッグファッションはあり得ると思います。
中川:
エコバッグやマイバッグが新しい生活様式に加わることを、儀式ではなくファッションととらえたら、新しい面白さをつくることができるのではないかということですね。Delightには、今あるものをよりよくする「モア・ディライト」と、新しいDelightをつくる「メイク・ディライト」のふたつがあるという感じになります。
5つのDから新しいビジネスチャンスの可能性がこれだけ広がっていることがわかりましたので、みんなで自主提案を仕掛けていきたいですね。
最近、コロナの先はどうなるのかを聞かれることが多くなっています。正直なところ先のことは誰もわからないのが現状ですから、どちらかというと、先のことを予測するより判断するほうが大事かなと思っています。「リモートワークに戻るのかな」、「通勤が復活するのかな」と予測し合うのではなく、どのような新しい文化をつくることができるのだろうかと考え、それを実現する企業が、これからは伸びていくはずです。そうやって、予測よりも判断して創造する方向に向かっていけばいいと思いますし、僕たちのこの対談が何かヒントになればいいなと考えています。
今日はありがとうございました。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。