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ヒット習慣予報 特別版 ~前編~

2020.12.22
#トレンド
こんにちは。ヒット習慣メーカーズです。
通常はメンバーによる連載コラム形式となっていますが、今回は特別版として、コロナ禍によって変わる習慣とビジネスチャンスについて、Digital、Domestic、Distance、Downsize、Delightの5つのDを切り口に、メンバー6人の大喜利形式で議論した内容を2回に分けてお届けします。

■コロナ禍で見えてきた新しいビジネスの兆し

中川:
まずは5つのDについて、議論のポイントを抑えていきましょう。
Digitalについては、日本ではデジタル化が遅れていましたが、ECで購入する人が増えたり、リモートワークのように企業のデジタル対応が活発になったりと、企業単位でも生活単位でもデジタル化が進んできました。そうした流れの中で、どのようなビジネスチャンスがあるかを話し合いたいと考えています。
Domesticでは、生活圏が狭くなっているので、新しい経済や生活様式が生まれるということがあります。少し前に、住みたい街ランキングで本厚木が1位になって驚きました。これまで住む場所は仕事起点で考えられてきましたが、仕事と住む場所が別々になったことを象徴する結果かもしれません。住む場所を起点に物事を考えるようになり、住んでいる場所の周りを、いかにコンフォートなものにするかといった流れがあります。そのあたりのビジネスチャンスを見ていきましょう。
Distanceは言わずもがなですが、感染予防の面で非常に重要です。ガートナーというアメリカのコンサルティング会社が、さまざまな技術の過熱度合いなどをまとめた「ハイプサイクル」を毎年発表していますが、その2020年度版に、いきなり「ソーシャル・ディスタンス・テクノロジー」が登場しました。ソーシャル・ディスタンスがテクノロジーの分野でも話題になるのは、それだけ世の中に与える影響が大きいことを物語っています。
Downsizeでは、家にいる時間が増えたり、衛生用品などを持ち歩く機会が増えたりで、大型化と小型化の二極化が進むとみられています。家で飲む飲料は大型化し、持ち歩くアルコールの消毒ジェルなどは小さくなるという具合です。大型化は価格競争に陥りがちですが、小型化は、小さくなって、ちょっとリッチになるというところにビジネスチャンスがあったりします。また、オフィスが分散化すると、スペースが小型化します。分散化と小型化が同時に進む中で、ビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
Delightは、コロナ疲れなどのストレスを感じ、冒険をしづらい状況の中で、日常にささやかなハッピーをもたらすというビジネスチャンスがあるのではないかと思います。海外でも「リップスティック・エフェクト」というのがあります。すごく高級なものものではなく、ちょっと高い口紅を買ったりすることで、息抜きをするということなんですね。
これら5つのDについてどのようなビジネスチャンスがあるかを皆さんには事前に考えてもらっているので、それを掲げてもらって、大喜利のように進めたいと思います。

■Digital――鍵は「リモート」と「ライブ」

中川:
ではDigitalから、一斉にどうぞ!

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鈴木:AR留学
植月:リモート特化型賃貸
江:本人目線から体験できるオンラインインターン
楠田:お笑いライブスタジアム
馬場:ライバープロダクション
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鈴木:
「AR留学」です。リアルでないとできないといわれていたものが、コロナ禍で加速度的にデジタルに変わっています。オンライン授業も、オンライン診療もそう。留学も、海外で現地の人と生活しながら学ぶことが大切ですが、これからは日本にいながら留学できるようになりそうです。

中川:
もはや海外に行く必要はないということですね。

鈴木:
寂しいですが、そういうことです。

中川:
リモート系はほかにありますか?

植月:
リモートに特化した部屋の売り方ができるのではないかと考え、「リモート特化型賃貸」にしました。たとえば、部屋にグリーンバックなどがついていて、ユーチューバーが入居したら、すぐに配信できるといった賃貸物件です。

中川:
いいですね。配信環境を整えるために、グリーンバックは自宅でもニーズがあるかもしれません。江さんの「本人目線から体験できるオンラインインターン」は?

江:
コロナによって、インターンを含めて就活がオンラインで行われるようになって、就活生は困っていると思います。オンラインでは職場の雰囲気や仕事の内容を理解するのはなかなか難しいので、ARのインターンや、インターン先の社員がカメラつきの眼鏡をかけて仕事をすることで、社員の目線で仕事を体験できる仕組みがあればいいなと考えました。

中川:
なるほど。楠田さんの「お笑いライブスタジアム」は、リモート系ではなくライブ系ですね。

楠田:
アーティストやスポーツのライブ配信は結構ありますが、お笑い系はライブではなく、ユーチューブに上げるケースが多くなっています。お笑いをライブ配信するには、お客さんとのかけ合いや、そこで生まれる「間」などをどうするかを考えなければなりません。VRの技術などを駆使する必要があると思います。

中川:
お笑いのライブ配信は、たしかにありそうでないですね。笑うといったお客さんのリアクションがあったほうが面白いものは、意外に難しいのかもしれません。

馬場:
ライブコマースを行うタレントをライバーと呼び、ライブコマースが増える中で、報道によるとライバーのマネジメントを専門に扱う事業が生まれているそうです。「ライバープロダクション」は、ライバーのスキルを生かして、ものの売り方やスキルの広げ方などを考えるものです。

中川:
ライバーは次世代型実演販売士という感じですね。ここまでをまとめると、Digitalには、「リモート」と「ライブ」のふたつの大きな流れがあるようです。リモートは、これまでは距離があってできなかったことができるようになるところに、ライブは、生中継や同時多発で起きることが広がるところに、それぞれビジネスチャンスがあると見て取れました。

■Domestic――地域経済を回し、生活環境に変化を加える

中川:
次はDomesticです。

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江:サブスク型近距離タクシー利用
馬場:バックグラウンドロケーション
鈴木: ON・OFFハウス
楠田:ウィークリーオフィス
植月:マンスリーレジデンス
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江:
「サブスク型近距離タクシー利用」は、定額制のタクシー利用です。人との接触を避けられるし、公共交通機関を使わずに移動もできて便利。しかも定額制なので安価です。また、スーパーなどで割引になるようにすれば、地域の活性化にもつながり、結果としてタクシーのドライバーも助かるはずです。

中川:
なるほど。大変な状況にあるタクシーの手助けになって、地域経済も回すということですね。

馬場:
「バックグラウンドロケーション」は、旅行先に合う音楽や小説などを考えるのではなく、音楽などに合う場所を教えるということ。近距離の旅行が増え、身近なところは行き尽くしたということもあるので、新しい切り口を見つけることが必要になってきます。小説に合う喫茶店を紹介するということでもいいかもしれません。

中川:
今まで気づかなかった地域の楽しみ方を見つけるわけですね。ほかに地域活性系は?

鈴木:
二拠点生活にしようかとか、最近、住む場所を変える人、変えたいと考える人が増えています。しかしお金もかかりますし、実行できる人ばかりではありません。それで「ON・OFFハウス」です。一戸建てでもマンションでも、ふつうは統一したイメージにしますが、「ON・OFFハウス」は逆に統一感を持ちません。リモートワークで使う部屋は、集中できるようにブラックベースになっていて、リビングはリラックスできるように木目調になっているといったように、ONとOFFをはっきりさせた住まいです。

中川:
こっちの部屋はカリフォルニアで、向こうは丸の内っぽくなっているとか。これはメチャメチャいい。

鈴木:
壁紙やインテリアを変えることで、比較的簡単に対応できるような気がします。

中川:
二拠点生活のように住まい自体を変えることで切り替えるのは難しいから、暮らしや生活圏を変えるということですね。

楠田:
「ウィークリーオフィス」は、ウィークリーマンションはあるけどオフィスはないな、という単純な発想です。週によって働く場所を変え、自由にできるようになれば、自分をリセットすることができる。働き方を更新することにもつながると思います。

中川:
これもかなりいいですね。本社を縮小し、その分いろいろな場所で働けるように再配分し、住まいを移動する交通費は会社から出ると。そうなったら嬉しいですね。「マンスリーレジデンス」も同じ発想かな。

植月:
実際に、住まいを持たずにマンスリーマンションで暮らしている友人がいるんです。1カ月の料金は家賃より安いし、掃除もしてくれる。Wi-Fiもついています。

中川:
実に今っぽい暮らし方ですね。周期的に環境を変えるというのは、暮らしでも仕事でもありそうです。Domesticは、定額制のタクシーのように「生活圏の経済を回す」という方向、ON・OFFハウスのように「暮らしを変える」という方向に、それぞれビジネスチャンスの可能性があると見えました。

■Distance――物理的・精神的距離をとるためのビジネス

中川:
3つめのDistanceに移りましょう。

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植月:個室サウナ
馬場: Pick Upサービス2.0
江:間仕切りのデジタルサイネージ化
鈴木:戦略的別居
楠田:ランチおひとりさま脱出
=====

植月:
ひとり専用カラオケのサウナ版として考えたのが「個室サウナ」です。ひとりでゆったりとでき、自分が整う個室スペースが、サウナ施設の中にあればいいなと思います。

馬場:
「Pick Upサービス2.0」は、コロナ禍で増えている商品の持ち帰りを、より便利にすることが広まるように思います。ネットでオーダーした商品を店頭に設けたロッカーに入れ、お客さんはそこから持ち帰るとか、商品を店舗の駐車場まで持ってきてくれるとかといったサービスが、ファストフード店などですでに始まっています。こうしたサービスは、コロナ禍でなくても便利ですね。

中川:
個室サウナやピックアップサ-ビスは、「物理的な距離」をとるものですね。

江:
「間仕切りのデジタルサイネージ化」は、目に入るものをすべて媒体として捉えるということ。演出方法もいろいろとあると思います。

中川:
間仕切りも広告媒体になるということですね。

鈴木:
「戦略的別居」は、いい意味での別居があるのではと考えました。家で過ごす時間が増えて、家族仲が良くなったと同時にいつも同じ人と会ってばかりだと次第に疲れてしまうという話も聞きます。そこで、よりずっと仲良くい続けるためにたまに誰かがホテルで過ごして距離を取る等、ポジティブなプチ別居が増えるのではないでしょうか。

中川:
ファミリーディスタンスが重要といいますから、それもありですね。

楠田:
「ランチおひとりさま脱出」は、戦略的別居のライト版。在宅勤務で朝、昼、夜とずっと一緒に食事をするので、ランチぐらいは、脱出してひとりでというのもあっていいかなと思います。

中川:
飛沫感染などを避けるために物理的な距離をとるというところと、家族と一緒にいるので精神的な距離をとるというところに、それぞれビジネスチャンスが考えられます。Distanceは、物理的と精神的のふたつの距離が大切です。

残り2つのD-Downsize、Delight-については、後編でお届けいたします。こちらも是非ご覧ください。

中川 悠(なかがわ・ゆう)
統合プラニング局チームリーダー
ヒット習慣メーカーズ リーダー

鈴木 康司(すずき・こうじ)
統合プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

楠田 勇輝(くすだ・ゆうき)
関西支社MDB推進局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

馬場 郁実(ばば・いくみ)
マーケティングシステムコンサルティング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

江 源(こう・げん)
統合プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

植月 ひかる(うえつき・ひかる)
第一プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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