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若者の「いま」と令和の価値観【アドテック東京2020レポート】

2020.12.17
#アドテック東京2020#若者研
マーケティングとテクノロジーに関するカンファレンス「ad:tech東京2020」において、『若者の「いま」と令和の価値観』というタイトルでセッションが行われました。スピーカーとして株式会社電通ソリューションプランナーの木伏美加氏、株式会社SHIBUYA109エンタテイメントエキスパートSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏、株式会社L&Gグローバルビジネス代表取締役の龍崎翔子氏が登壇、博報堂ブランド・イノベーションデザイン若者研究所リーダーのボヴェ啓吾がモデレーターを務めました。

木伏 美加
株式会社電通
ソリューションプランナー

長田 麻衣
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント
エキスパート SHIBUYA109 lab.所長

龍崎 翔子
株式会社L&Gグローバルビジネス
代表取締役

モデレーター
ボヴェ 啓吾
株式会社博報堂
博報堂ブランド・イノベーションデザイン若者研究所/リーダー

■人間関係、社会のあり方に若者が求める“ヘルシーさ”

ボヴェ
博報堂のボヴェです。大学生を中心にした若者たちと議論しながら、企業や組織の活動を一緒に考える若者研究所でリーダーを務めています。このセッションでは、さまざまに変化する今の若者の姿を捉えつつ、具体的な事象や行動だけでなく、その背景や先にある価値観の変化をうまく抽出できればと思います。今回は特に、人間関係、自分自身に対する意識、社会に対する意識、情報行動、消費行動、労働意識といったポイントを題材に、若者の価値観の変化について自由に議論していけたらと思います。

まずは議論の土台となりそうなキーワードを共有させてください。それはヘルシーという言葉。若い人が従来の意味とは異なる使い方をしていて、ここに大きな価値観が表れているような気がしています。Twitterを見ていても、ヘルシーなサービス、ヘルシーなスタンス、ヘルシーな社会…など、「心地よくて無理がない、かつ自然で継続性があるような状態」をヘルシーと言っている。個性や自分らしさを大切にするよう言われて育っているので、幸福のあり方も人それぞれと理解していて、そのうえで、誰かの我慢や無理を強いる状況は望んでいない。「誰もが無理をすることなくそれぞれに主観的に幸福になっていける」ことがヘルシーで、それを望むという価値観なのかなと思っています。

龍崎
全国5カ所でホテル経営をしている龍崎です。私自身はミレニアル世代とジェネレーションZ世代の境目くらいにいるので、同世代的な感覚といったことを踏まえながら今日はお話しできればと思います。最近は、たとえばペットショップ産業に対する問題意識がある人が増えているように感じていて、ペットを飼う際に保健所やブリーダーから引き取る人が多かったり、肉や乳製品の生産過程を問題視し、ペスカタリアン(ベジタリアンの一種)になった人も身近にいます。現状を知り、それに対してどうするかをそれぞれが選択して、ヘルシーな生き方を模索しているように感じます。

ボヴェ
動物の幸福度も考えたり、SDGsやエシカルの文脈も含まれそうですね。
では改めて、まずは人間関係に見られる価値観の変化について話していければ。

長田
私は普段SHIBUYA109 lab.という若者研究機関で、around20、15歳から24歳の若者の実態、トレンドを探る活動をしています。
特にコロナを受けて、若者の人間関係は大きく変化したと思います。今までは学校で浅く広くいろんな人とつながっていたのが、学校にも行けなくなった結果、交友関係がどんどん凝縮されています。結果的に、そもそもそんなにたくさんの友達は必要なかった、本当に大事にしたい関係性だけを大事にできればいいという方向に変わってきているようです。

木伏
電通の木伏です。若い人たちのいまとこれからを考える電通若者研究部、通称ワカモンというプロジェクトを社内で進めており、クライアント企業の若年層向けのコミュニケーションや商品開発のお手伝いなどをしています。
ワカモンでもコロナで変わった人間関係について調査したところ、高校生や大学生でポジティブな返答をした人が多かった。これまでは価値観の違う人たちともうまくやる必要があったけど、それがなくなって無理のない人間関係を構築しやすくなったからということでした。コロナに関わらずですが、いまは恋愛意識でも変な圧力がなくて、彼氏彼女がいなくても自分が快適だったらそれでいいし、周りもそれを受け入れている感じですね。

ボヴェ
コロナ前に僕が感じていた傾向は、この世代はあらゆる情報をSNSを軸にしてやりとりするので、友人やフォローしている人のフィルターのかかった情報が大量に入ってきて、それに対して自分も発信する感じだった。でもコロナ後に話を聞いてみると、どこにも行けないから皆暮らしが同質的になり、そこから入る情報の重みが減った代わりに、自分自身に向き合ったり、より大きな社会的な話題についての関心が増えたという意見を多く聞きました。

長田
SNSで育ってきているので、基本は周囲からどう見られるかで自分を認識する世代だと思いますが、より自分を見つめ直すようになったり、自分がどう思うかを考えるようになったのは、コロナ後のポジティブでヘルシーな変化だと思います。

木伏
たとえば以前からSNSで複数アカウントを使い分けていたのは、自分にとってそれぞれ無理のない環境をネット上で整えるためだったと思う。それがコロナによって、リアルにも広がったように思います。

ボヴェ
なるほど。いくつかのポジティブな変化に触れましたが、実際はコロナによって苦しんでいる学生も多いです。特に大学の授業はほぼオンラインで、大学1年生の子は友人をつくるきっかけすらない。それも忘れてはいけませんね。

龍崎
そうですね。この世代で普遍的だと思うのは、実際に一緒にいるのは本当に居心地がいい一握りの人だけでよくて、それ以外はSNSでゆるくつながるくらいでいいという感覚です。コロナによって確かに以前のようにリアルで会えなくはなったけど、実際その人のTwitterのタイムラインをずっと見ていた方がその人のことを深く知れるというのはありますよね。

長田
皆そう言います。Instagramなどでその人のフィード投稿を見て、この子はこういうニュアンスが好きなんだ、友だちになれそうと思ったらDMを送るとか。そういう友人関係のつくり方もあります。

■この世代ならではの情報への接し方と消費行動

ボヴェ
長田さんがおっしゃったのはまさに若い人ならではの情報行動。ある情報が流れてきた時、それを信じるかどうか、どう接するかは、それをアップした人のプロフィール欄や投稿、その人が何にいいねを押しているかを見て、その人の価値観が直感的に自分と合うと思えるかどうかによる。

木伏
動画や画像から瞬時にそういうものを感じ取る感受性もこの世代ならでは。共感のポイントを掴むスキルが高いと思います。

龍崎
私もホテルの新しいコンセプトを決めるときは、トンマナを重視していて、Pinterestで集めてきた写真を見ながら、ざっくりしたイメージを考えていきます。たとえばマッチングアプリでも、写真1枚からその人の好みとかスタンスなどすごい量のメッセージを読み取っている。たとえば、2017年に新しいホテルをつくったときも、まだ工事中の場所にベッドを持ち込んでモデルさんを撮影し、プレスリリースに使いました。通常ホテル業界のリリースって、3Dパースやイラストなんですが、ホテルの建築すらできていない工事中の状態でモデルさんの写真をメインに持ってきて出したので色々な方に驚かれました。でもその写真1枚から、これは私のためのホテルなんだと感じ取ってくれたお客様がたくさんいたんですよね。

ボヴェ
言葉を介さない、ビジュアルや空気感のようなもので何かを感じたりやり取りする若者たちの能力はすごいですよね。それだけおそらく、ごく自然に写真を撮ってアップするというのをやってきた世代なんだと思います。

長田
そうした時に、より共感を得るのは、きれいに着飾った様子よりも、途中でもいいから“生っぽいもの”かもしれません。そこをさらけ出せる自信のようなもの、表裏のないところが信頼につながるような気がします。

木伏
裏側を見ることで親近感がわき、もっと知りたいと思うのかもしれませんね。いまの若者の消費の特徴に、アイドルなどを応援する「オタ活」があると思うんですが、結局ステージ上の姿やビジュアルよりも、バックヤードでの努力や人となり、仲の良さなどに惹かれて応援しているという声が多い。ちなみに少し前だと、アイドルなりアニメなりにはまることに抵抗があったかと思いますが、最近の若い子は堂々とそれについて話すし、自信を持っています。聴く側も揶揄するでもなく、その人の趣味だし、逆に熱中できるものがあって素晴らしいという感覚を持っているのは、これまでと大きな違いかなと思います。

ボヴェ
自分が何者で何が好きかを発信すれば、同じ価値観の人が集まってきて、コミュニケーションになっていく。趣味だけではなく、そういう風に企業や商品を好きになって応援したり、好きなこと自体がその人の人となりになっていたり。面白いですね。

龍崎
消費傾向にも同じような変化はあります。たとえば推しているアーティストがいれば、音源を買うよりグッズを買う方が彼らの収益につながるからそちらをたくさん買おうとか、好きな漫画家がいれば、古本屋ではなく書店で買って売り上げに貢献しようとか、消費リテラシーが高い。若者はお金を使わないと言われるけど、老舗ホテルの話を聞いていると、若者ほど躊躇なくお金を使うんだそうです。いいと思ったものにはその価値に見合う額を払う。好きなものがちゃんと持続的に維持される状態をつくろうという意識が、一人一人にあると感じます。

ボヴェ
博報堂が隔年で行っている「生活定点調査」でも、「モノを定価で買うのはバカげている」という価値観の人が若者を中心に減ってきているというデータがあります。実際いまの若い人はかつてと比べてお金を持っているわけではありませんが、できるだけ安く買うのではなく、時間をすごく短縮できるならそこにお金を払うとか、本当に応援したいものには正当なお金を払いたいと思っている。

龍崎
自分を大きく見せようという、虚栄心を満たすための買い物をする人が減っていて、等身大のあり方が広がっているようにも思えます。「りゅうぺこ」カップルはある意味その象徴だと思っていて、昔のような、“モテることが正義”ではなく、心地よい人間関係をしっかり築き、同じ人と長く付き合い若くして結婚するといった、新しい世代の理想を体現している。

長田
等身大の、無理のない生活は共感ポイントが高いですよね。先ほどの話でいくと、SDGsのエシカル文脈もあって、裏側の情報に触れる機会があるからこそ、安いものを買うことで結果的に社会によくない影響を及ぼしているという意識があります。さまざまな社会課題についても小学校から教育として受けているので、いまの大人よりもずっと、自分たちがどう行動すべきかを考えるタイミングが多かったようです。SDGsの取り組みに対する姿勢も、大人世代よりずっと大きいです。

龍崎
企業でも組織でも、そこに反するスタンスが見えたりすると、結構なスピードで心が離れますよね。

ボヴェ
世界的にも世の中を正していこうという若者たちの動きはありますが、日本がちょっと違うのは、大きな社会問題などについては「自分はそこまで言える立場じゃない」という遠慮や、「若者起点で社会を変えていけるとは思えない」といった諦めのような感覚もあって、なかなかアクションには出てこない。でも生活の中にある小さな違和感を見過ごさずに、変えていきたいという意志はあるんですね。その辺りの日本独特の機微も押さえておきたいポイントです。

■正解はない「労働意識」のギャップ。互いに難しさを打ち明け、協力することが必要

ボヴェ
最後に、労働意識の変化についてはどうでしょうか。お三方は若い世代でありつつも、これから入ってくる仲間を育てたり、トレーニングする立場にもあるわけですが、いかがですか。

龍崎
結構難しいと感じることが多いです。私はフルゆとりの世代ですが、この世代以降の子たちは、ハードワークはしたくなくて、ヘルシーな状態で成長実感を得たいと考えている。一方で少し上の世代は、旧来型の“しごき”を受けて大人になってる人たちなので、私と同世代やそれ以下の世代にとってはロールモデルがいない状態です。だから教える側も難しいし、教わる側もどこを見据えて走ればいいかわからない。

長田
私も日々悩んでいます。若者の価値観を理解はできても、一緒に働くとなると違うマインドになります。ただ、教育の仕方はこれから確実に変えていくべきなので、彼ら彼女たちが目指すところを確認しながら、それに合わせた教え方にカスタマイズしていくスキルがこちらにも求められているのかもしれません。

木伏
私自身は先輩に言われたことをやるのが正義と考えていたけど、今の子には間違いなくその感覚はないなと感じています。自分の行動がどう周囲に影響するかを気にする子も多いので、なるべく、この仕事はこういうところに影響する、役立つんだということを伝えようとしていますが、実際難しいですね。

龍崎
個人的に若い子のロールモデルになりそうだと思っているのは、生理に対する社会の意識を変えようという、『#NoBagForMe』プロジェクトを率いてらっしゃるユニ・チャームの社員の方。もともとご本人の中で明確な課題意識や想いがあって、組織の中で実現しているのは偉大だと思います。自分が好きな対象が明確な“推し活”だったり、自分はどう思うかを考える機会がたくさんあるといったことは、これからの若い世代の働き方を変えていく可能性がありそうな気がしています。

長田
一方で、好きなことがわからないという子も多いですよね。早い段階でそれが分かれば、働くことのイメージもつきやすいのかもしれません。

龍崎
好きなことは、見つからないわけがないと思いますよ。やりたいことはあるはずだけど、いまの日本社会ではライフスタイルと仕事が切り離されているから、好きなことと仕事が結びつかないだけだと思う。人生と仕事は実際ボーダーレスだということを自覚することも大事かなと。

ボヴェ
流動性がすごく高い社会になったから、この企業に入れば安泰ということもないわけで。若い世代はいくつかのコミュニティ、いくつかの収入源を分散させながら、変化を乗りこなそうとしているように見えます。とはいえ仕事は時間も労力もマインドもとられるから、企業の在り方含めて今後問われていくところかもしれません。
実際企業の方と話をしていると、従来型の労働観を決していいとは思っていなくて、若い人の考え方も理解できると。どちらが正解というわけではないと思うので、そういう互いが感じている難しさを明るみにし、一緒にやっていこうとすれば、チームとしてはよくなるのかなと思いました。

最後に会場からの質問で、「若い人を理解するために、意識調査やヒアリング以外で行っていることは?」というものがありました。一人ずつお願いします。

木伏
調査を兼ねてワークショップ形式の会を設けたり、なるべく若者と一緒に考える場をつくるようにしていますね。本音を引き出すために、1年など時間をかけて一緒に考えていくような取り組みをしています。

長田
プライベートでも若い子たちの投稿を見たり、流行っていることをハッシュタグで検索したりと、その子たちの生活に溶け込むことを意識しています。

龍崎
少しずれるかもしれませんが、新しくL&Gに入った社員の方が、私がtwitterでフォローしている人を全員フォローしていてなるほどと思いました。そうすれば相手が見ている世界が見えてくる。大事だと思います。

ボヴェ
今日の議論が、皆さんのこれからの企業活動や若者との関係性の中に、何かいい示唆を提供できていればと思います。今日はありがとうございました!

木伏 美加
株式会社電通
ソリューションプランナー

2013年株式会社電通入社。アウト・オブ・ホームメディア局でメディアバイイングに従事した後、マーケティングセクションへ異動。ソリューションプランナーとして、クライアントワークでマーケティング戦略やプロモーション設計を行う。また、電通若者研究部ワカモンメンバーとして10代~20代の若年層インサイト研究を行い、企業向け若者セミナー、若年層ターゲット戦略立案等を実施。

長田 麻衣
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント
エキスパート SHIBUYA109 lab.所長

総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPR サポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109 エンタテイメントに入社。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018 年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround 20(15歳~24 歳の男女)と接する毎日を過ごしている。

龍崎 翔子
株式会社L&Gグローバルビジネス
代表取締役

2015年にL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を設立。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5店舗のホテルをプロデュース。今年4月よりホテル予約システム「CHILLNN(チルン)」を本格始動。

ボヴェ 啓吾
株式会社博報堂
博報堂ブランド・イノベーションデザイン若者研究所/リーダー

法政大学社会学部社会学科卒。2007年(株)博報堂に入社。マーケティング局にて多様な業種の企画立案業務に従事した後、2010年より博報堂ブランド・イノベーションデザインに加入。ビジネスエスノグラフィや深層意識を解明する調査手法、哲学的視点による人間社会の探究と未来洞察などを用いて、ブランドコンサルティングや商品・事業開発の支援を行っている。2012年より東京大学教養学部全学ゼミ「ブランドデザインスタジオ」の講師を行うなど、若者との共創プロジェクトを多く実施し、2019年より若者研究所リーダーを兼任。著書(共著)『ビジネス寓話50選-物語で読み解く企業と仕事のこれから』

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