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「1国1マネジメント」制の実装で、海外拠点の戦力を最大限に /伊藤曜久(連載:「博報堂のグローバルビジネス」Vol.3)

2020.12.16
#グローバル#タイ
ボーダーレス化する企業活動への対応力の更なる強化のため、海外事業を強化している博報堂。現在、海外19の国と地域、105を超えるオフィスで事業を展開しています。
連載「博報堂のグローバルビジネス」では、博報堂の世界における新しい挑戦について、各領域のリーダーへのインタビューを通じてご紹介してまいります。
第3回は、Hakuhodo International初の海外統括会社として「1国1マネジメント」を推進するためにバンコクに設立されたHakuhodo International Thailandについて、同社社長の伊藤曜久に話を聞きました。

「1国1マネジメント」体制がタイで始動

──2020年1月に発足したHakuhodo International Thailand(HIT)とはどんな組織なのか、お聞かせください。

HITマネジメント

HITは、一国ごとにエリアを統括する組織をつくって戦力向上と効率化を図る「1国1マネジメント」を推進する「地域統括会社」として発足しました。
タイにHakuhodo International初となる地域統括会社を設置した背景には、拠点数が多く、歴史的にも博報堂の東南アジアビジネスのハブとして極めて重要な位置を占めてきましたことがあります。
現在、6つの広告事業会社に加え、デジタル会社、メディアバイング会社、アクティベーション会社、生活者研究に特化したシンクタンク「博報堂生活総研アセアン」の12のグループ会社があり、800名以上が働いています。この12社のリソースと知見を統合し、従来の何倍ものパワーを発揮すべく有機的に機能させ、その成功事例をビジネスモデルとして他の国のモデルとしても適用することを目的としています。

──具体的なHITのミッションは何でしょうか?

主に2つあります。
1つは、12社の人事・総務・経理といったバックオフィス機能の集約と効率化です。
人事、人材開発、総務、経理といった、屋台骨として会社を支えるシェアードサービスを行い管理部門としての体制を整えました。就業規則や社内規定も12社で共通化を開始しています。2020年からは新人研修なども含め、あらゆる社員研修をHITが主導で行うようになりました。タイ拠点のアドミニストレーションを支え、会社の垣根を越えて社員が気持ちよく仕事ができる環境が整いつつあります。

経理、人事担当メンバー

もう1つのHITの大きな役割は、6つの広告事業会社のビジネスを戦略的にサポートすることです。
各社はそれぞれがクライアントと良好な関係を築いていますが、多角化するクライアントニーズにしっかりと応えていく中で、高度なデータマネジメント力や、社会にインパクトを与えるようなクリエイティブ力が喫緊の課題となっています。
HITは、ストラテジックプラナー、クリエイターといった各領域に精通した専門家部隊が常駐し、各拠点の悩みを聞き、個々の拠点単位では開発が難しい高度なソリューションを携えて拠点員と共に動き、アカウント拡大に貢献しています。
具体的には、ローカルアカウント/グローバルアカウントの開拓支援を目的にHIT内に設置した新組織「ニュービジネスチーム」や、タイのローカルクライアントによるカンボジアやミャンマーなど周辺国への商圏拡大を支援する「インドチャイナチーム」、そして各広告会社のさらなるデジタル強化を図る「デジタルタスクフォースチーム」など、2020年にはいって次々とタスクフォースが立ち上がり、精力的に活動しています。

──HITが本格始動して約1年、手応えはいかがですか。

前章でも述べましたがタイでは総勢約800人もの陣容を抱えているわけですが、HITのさまざまな施策によって、スタッフの交流が格段に増えました。結果、「博報堂グループ」としての一体感が少しずつ強まっているのを感じます。今までは、博報堂グループの一員という感覚は現地スタッフ間では薄かったのですが、1国1マネジメント体制がここ、タイでスタートしたことで、各社間での連携がしやすくなり、仕事でもシナジーが生まれています。
また、月に1回、各事業会社のマネジメントが一堂に会して集まって、事業の近況や強みなどをプレゼンテーションして共有する場として「タイ・カントリーミーティング」もスタートさせているのですが、そのような場でも、HITとしての一体感が醸成されていっているのを毎回感じています。

タイ・カントリーミーティングにて(右から2人目:伊藤社長)

──アカウント獲得など、成果は出始めていますか?

特にデジタル領域で成果が出始めています。タイでもトラディショナル・メディアだけを想定したキャンペーンから、ソーシャルメディアを活用した年単位のキャンペーンをマネジメントするようなコミュニケーションへのシフトが進んでいます。
「デジタルタスクフォースチーム」がクライアントに提案したデータマーケティング関連のビジネスがいくつか実を結びました。特にタイでは今、ネットを使ったモノやサービスの売買が急速に進み、クライアントからEC領域への対応要請が増えています。今後チームとしては、本領域のソリューション開発に一層注力していきます。

また、「ニュービジネスチーム」では、コロナ禍で疲弊した観光業の経済を再興させることを目的としたタイ政府の施策や、その他ローカルクライアントの業務を次々と獲得しています。

──伊藤さんご自身はすでに18年間もタイでのビジネスに携わり、タイ語も大変堪能でいらっしゃいます。タイのローカルスタッフとのコミュニケーションを円滑にする秘訣のようなものはありますか。

タイに限りませんが、「自分は日本人だから」という意識を捨て、ローカルの人々の中に溶け込んでいく姿勢が大切だと思っています。
常に心がけていることは、社員でも、パートナーでも、「とにかく人の話に耳を傾ける」ことです。タイは日本には無い豊かなDiversity文化の中から、想像を超える素晴らしいアイデアが出てくることが多いからです。そして、タイの人々はみな、たとえ自分の考えと対立するような主張が出ても、それを否定せずにリスペクトを持って受け入れる度量の広さと、その多様性をソリューションに反映していく応用力の高さを持ち合わせています。そうやって活発な議論ができたり、多様な答えが導きだせたりすることがタイにおけるビジネスの魅力だと日々感じています。 また、タイのスタッフたちに支えてもらっているおかげで、外国人である我々がタイでビジネスをさせて頂いているということを忘れずにいたいと考えています。

連載第1回で近藤常務が言っていたように、我々が日系エージェンシーから脱却し、グローバルエージェンシーを目指す上でも、こうした意識は大切です。今後は優秀なタイの人材にどんどんマネジメントとして参画してもらい、あくまで現地主導でビジネスを強くしていくことが、博報堂グループのグローバル展開において重要になってくると思います。

1973年から博報堂グループはタイにおけるビジネスを開始しておりますが、新たなステージに入りました。Hakuhodo International Thailandは、タイ拠点をサポートし、高度化し続けるクライアントの課題解決に向けて、貢献していきたいと考えています。

伊藤曜久(いとう てるひさ)
Hakuhodo International Thailand 社長

2000年に博報堂入社。営業職としてキャリアを積む。2002年にタイの駐在員事務所にRegional Account Planning Directorとして赴任。2004年にタイ博報堂(後のSPA博報堂)のClient Service Director/Strategic Planning Directorに任命され、2010年にSPA博報堂のGeneral Manager(GM)に就任。2016年から東南アジア地域を統括する博報堂アジアパシフィックのDeputy Managing Directorに就任し、SPA 博報堂のGMを兼務。2018年からはASEANの域内の他の国も担当しつつ、Spicy HのCEOに就任。2020年1月より現職。

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