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「オンライン化」でシニアは生活を防御する/安並まりや(連載:アフター・コロナの新文脈 博報堂の視点 Vol.2)

2020.06.22
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、企業や生活者を取り巻く環境はどのように変化したのか。また、今後どう変化していくのだろうか? 多様な専門性を持つ博報堂社員が、各自の専門領域における“文脈”の変化を考察・予測し、アフター・コロナ時代のビジネスのヒントを呈示していく連載です。
第2回は、コロナ禍で見えてきたシニアとデジタルの新たな関係をテーマに、博報堂シニアビジネスフォース 安並まりやの意見を紹介します。

Vol.2 「オンライン化」でシニアは生活を防御する

博報堂 シニアビジネスフォース 新大人研 所長 安並まりや

「つながり」「防犯・防災」「自走できるUI設計」でシニアのオンライン化が加速する

 博報堂シニアビジネスフォースは、シニアのマーケティング、商品・サービス開発などを手掛けるタスクフォースです。私はその中のプロジェクトのひとつ「新大人研」という研究所の所長をしています。今年の4月、大人世代のSNS「趣味人倶楽部」を運営しているオースタンス社と共同で、新型コロナウイルスがアクティブシニアの生活や意識にどのような影響を及ぼしているかについての調査を行いました(*1)。一番大きな発見としては、コロナに関する情報収集で、アクティブシニアの約8割がインターネットを使っていました。これはテレビの次に高いという結果でした。また動画視聴を行ったり家族・友人とつながるなど様々な場面でのオンライン活用が、コロナをきっかけに加速していることがわかりました。

 デジタル化をアクティブシニアだけでなくシニア層全体に促進させるには、様々な課題が存在します。シニアのオンライン化を促進させるインサイトやビジネス機会について考察してみました。

1.オンラインで「つながり・見守り」孤独を回避

 自粛を余儀なくされ、人と実際に会う機会が減ったことが生活における大きな変化のひとつだと思います。調査結果でも約4割がコロナ前と比べて孤独を感じていると回答しています。高齢者は他の世代よりも一人暮らしの割合が多く、若者と比べオンラインでのつながりが少ないため、孤独はより一層深刻な問題になってくるでしょう。それを回避するためにオンラインでのつながりや友人・家族で見守る動きが出てくると予想します。今回共同調査を行った趣味人倶楽部は、コロナを機にZoomを活用した「オンラインイベント」を開催、導入1カ月で約1000人の方がこれまで参加されたそうです。コロナで帰れない子供世代が親世代とつながる「オンライン帰省」や、ドアをノックするような感覚で友人・家族とオンライン上で顔を見て会話する機会がシニアにおいても増えることを予想します。

2.オンライン整備で「災害・厄災」に備える

 コロナ感染拡大前 、シニアがデジタルを導入するきっかけは、外出先でカメラが使える、友人や孫とつながれるなど、「新たな楽しさが広がる」からということでした。そこは引き続き導入の背中押しになりつつも、Afterコロナはさらに「防災・防犯」視点でオンラインの必然性が高まるのではないでしょうか。近年の大規模災害による犠牲者のうち、高齢者の占める割合が6割以上(*2)とシニアは災害弱者になる可能性が他の世代と比べて高くなっています。前述の調査でも、コロナによって9割以上のシニアは不安を感じているという結果も。インターネットがテレビに並ぶ2大メディアになったのも、不安を感じるからこそ、自分が気になる情報をいち早く入手し、生活防衛したい気持ちの表れなのではと分析しています。食料や水を備蓄して災害・厄災に備えるように、オンラインで情報整備していくシニアが増えていくのではないでしょうか。少なくともそのような、商品・サービスへのニーズが高まることを予想します。

3.「自走できるUX」でドロップアウトしない仕組みづくり

 つながりや防災視点でシニアがオンライン化する必然性がコロナによって高まっていることはお話ししましたが、導入するだけでなく、実際に使い続けるための仕組みづくりが必須になってきます。今まで多くのデジタル化したシニアの方にお話を伺いましたが、みなさん家族、特に子供世代の全面的なサポートを受けていました。アプリのダウンロードができない等、はたから見るとなんでもないところでつまずいて、そのまま使わなくなってしまったというケースや、迷惑を掛けたくない・恥ずかしいという気持ちがオンライン化を阻む要因になっています。デジタルに詳しくなくても使える、自分で使いこなせるようになるUX設計が重要になってくると思っています。まだ仮説レベルですが、例えばテレビ等、この世代の方々が慣れ親しんでいるインターフェイスを使うという視点が考えられます。地デジ化を機に情報が双方向に流れたり、サブスクリプション動画配信サービスのボタンがリモコンについているテレビも珍しくなくなりました。大画面で操作性も難しくないテレビを使ったサービスがシニアのオンライン化を促進させる一つの出口になりそうです。また、シニアにとって複雑な取り扱い説明書や、ウェブサイトで該当するQ&Aを探すのは非常に困難です。例えば主要な機能の使い方を「学習ドリル」のように課題化し、ドリルを全てこなせばオンラインサービスを使いこなせるようになれるような仕組みもいいのかもしれません。どうしても自分で解決できない時に電話や窓口で人を介して助けてくれる受け皿もこの世代の方においては安心材料になってくるでしょう。

*1【調査概要】
○調査名:新型コロナウイルスによる生活への影響に関するアンケート
○実施期間:2020年4月4日(土)〜2020年4月9日(木)
○調査対象:趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)会員 https://smcb.jp/
○回答数:1,829名(うち60歳以上1,549名のデータを分析)
○調査主体:博報堂シニアビジネスフォース、および趣味人倶楽部シニアコミュニティラボ

*2 総務省「高齢者の社会的孤立の防止対策等に関する行政評価・監視 第2行政評価・監視結果」

安並まりや(やすなみ・まりや)
博報堂シニアビジネスフォース 新大人研 所長

2004年博報堂入社。ストラテジックプランナーとしてトイレタリー、食品、自動車、住宅・人材サービス等、さまざまな業種のマーケティング・コミュニケーション業務に携わる。15年より新大人研のマーケティングプランナー兼研究員として、シニアをターゲットとしたプラニングや消費行動の研究に従事。19年5月、当研究所所長に就任。共著に『イケてる大人イケてない大人―シニア市場から「新大人市場」へ―』(光文社新書)。

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