
「Greentap」とは

Greentapは専用の蛇口とユニットを取り付けるだけで、家庭で手軽においしい水を楽しむことができるサービスです。 LIXILの浄水カートリッジでろ過した水道水に、サントリー食品が開発した植物ミネラルエキスをプラスすることで、おうちの蛇口をひねるだけで、雑味がなく冷たくておいしい「ミネラル in ウォーター(※)」を楽しめます。
※飲用水に、サントリー食品が独自開発した植物ミネラルエキスをプラスした水のこと。この商品のミネラルとはナトリウムのことを指します。(https://www.greentap.jp/)
―まず、「Greentap」とは具体的にどういった製品、サービスなのか教えてください。
竹之内
具体的には、家庭で使っている水栓を「Greentap」専用水栓に交換したあと、シンク下に機能ユニットと呼ばれる小さい装置を取り付けます。装置には浄水機能が組み込まれていて、さらにそこにヤシ殻由来のミネラルエキスをプラスすることで、蛇口をひねるだけでおいしいミネラル in ウォーターを飲むことができるというものです。さらにアプリと連動していて、利用した水道水の量や、ミネラルボトルの交換時期などが確認できるようになっています。

大野
いくつかあるコースのうち、サブスクコースを選んでいただくと、ミネラルエキスが減ってきた段階でミネラルボトルが自動発注され、自宅に届けられる設計になっています。2社で決めた「優しさの先回り」というコンセプトに沿った、痒い所に手が届くサービスになっています。
竹之内
発売時には試飲会を実施し、水道水とミネラルウォーター、「Greentap」の水の飲み比べをしました。僕も実際に飲んでみたのですが、味の違いに驚きました。
―実際にお2人がプロジェクトに参画したのは、プロダクト/サービスデザイン確定後のタイミングだったそうですが、どんなところが大変でしたか。
竹之内
僕は生活者にどのように届けていくかというコミュニケーション検討段階から参加しました。この新しい技術、新しいサービスを世の中の人に「いいな」と思ってもらうためには、一体どんな伝え方が最適なのか、徹底的に考え抜きました。というのも、たとえば健康効果に関する文言など、実証されたデータや魅力的な要素があったとしても、広告表現のルール上、それをそのまま言葉にしてはいけないという壁があったからです。
そういった広告表現の制約があるなかで、私たちとしてはただひたすらいいものを作るしかなかった。そして、2社がOKと言ってくれ、そのうえで生活者が「Greentap」を本当にいいなと思ってくれるようなデザインを作ることに、責任をもって取り組ませていただきました。

大野
私が参加したのは、ブランドガイドラインの検討段階からでした。
コピーライティングの観点において、大切にしたのは、2社の既存事業への「リスペクト」です。 「ペットボトルを買わなくていい」とか「浄水器よりおいしい」といった「比較」で語るのではなく、両社の既存商品とも共存できる、「Greentap」だけの新しい価値をどう定義するか。 既存の言葉に頼れない分、その「解」を見つけ出すのは非常に高いハードルでした。
それから、サントリー食品もLIXILも、扱っている商品の価格帯から、マーケティングの手法、会社の考え方もまったく異なります。その両社に「いいね」と言ってもらえるクリエイティブに着地させるまでは非常に長い道のりでした。デザインもコピーも実際に見ていただいて判断してもらうしかないので、とにかく膨大な数のサンプルを制作し、検証を重ねました。

―もっとも議論を重ねたのはどんなポイントでしたか。
大野
当初LIXILとしては、サントリー食品の持つ自然や天然水のイメージをうまく活かしたいという考えが、サントリー食品としては自社事業との共存という観点で、「ミネラル」「おいしい」といったプラスオンの価値にフォーカスしたいという考えがそれぞれありました。
そういった議論を喧々諤々続けた結果、冷静になってこの商品を見てみたとき、やはりLIXILとサントリー食品という2つの企業が一緒につくった、というところに、生活者にとっての一番の驚きや価値があるのではないかと思ったんです。そして、最終的に「LIXILの蛇口にSuntoryのおいしさがやってきた!!」というキャッチコピーにたどり着きました。

竹之内
デザイン面においても、よりインパクトを重視したいという意見と、何年も使い続ける商材としてのたたずまいを重視する意見とで、白熱した議論が続きました。結果的に、2社のロゴを大きく並べるなど、2社の協業であることをいかにわかりやすく印象的に伝えられるかを念頭に置きながら検証していきました。
最終的には、シンクの下に入れる機能ユニットをロボットのキャラクターにし、そのロボットに「Greentap」についての説明を託しました。また生活者の代表として、小さい女の子に出てもらい、その女の子とロボットが共存するようなビジュアルになっています。キービジュアルも、「Greentap」の名前の通り、蛍光グリーンをベタとして使っていて、店頭やショールームでも存在感が出せる色使いを意識しました。

大野
全員がようやく納得できるアウトプットに着地できてほっとしましたね。それぞれ異なる領域をリードする2社ですが、共通していたのは、いままでにやったことのない事業に挑戦しているということ。社内的にも相当プレッシャーがあったでしょうし、プロジェクトに関わる誰もが譲れない戦いをしていたと思います。
―2024年3月に「Greentap」が発売となってから、一番嬉しかった瞬間はいつでしたか。
大野
ここしばらく、個人的にいくつか家のショールームを見て回っているのですが、LIXILのコーナーに「Greentap」が並べられていたのを見たときは感動しました。生活者として行動していた先でふいに出会った感じが嬉しかったですね。参加してから商品になるまでの2年半、生活者にとってどんな体験になったら嬉しいかを考えながら、商品やアプリ、定期的に届くミネラルボトルのデザインとコピー、パンフレットの一言一句まで関わることができました。ここまでやり切れる業務はまだそれほど多くはないので、いい経験になりました。
また、住宅設備のショールームでは、商品のデザインや機能面がフォーカスされがちですが、「Greentap」はそのような中でも「おいしさ」という基準を打ち出している。すごく新しいことだなと肌で感じました。
竹之内
最終的にロボットのデザインに決まったのが年末で、年明けにはプレゼンをすることになったので、年末年始はロボットのスケッチに明け暮れていました。なので、年明けに案が通ったときはかなり嬉しかったです(笑)。あと発表会も嬉しかったですね。僕はあまり商品発表の場に行く経験がなかったので、「ついに出たんだ」と、感動もひとしおでした。
―社会課題に対して、クリエイティブの力はどのように寄与できると考えますか。
大野
美味しい水を飲むための選択肢として、ペットボトルの水やウォーターサーバーなどの購入が挙げられるかと思います。ペットボトルはリサイクルシステムも整っていますし、生活に欠かせない便利な存在です。 ただ、家の中で毎日お水を飲むシーンにおいては、「買い置きをせずに暮らしたい」「エシカルな選択をしたい」という新しいニーズも生まれています。家庭内においても、乳幼児に手軽に安心安全な水を飲ませたいという親の希望をかなえてくれたり、力の弱い子どもや高齢者でも簡単に設置することができたりと、安全でおいしい水が日常的に手に入るという点で、社会的意義があるのかなと思います。
社会的に正しいことや、世の中を変えうることでも、人は「やれ」と言われたらやっぱりやりたくなくなります。ソーシャルイシューだからこそ、何か面白そうだな、わくわくするな、と感じてもらうことが大事。その面白さ、わくわくをつくることができるのが、博報堂の強みだとも思います。
竹之内
実は多くの人が求めていて、でも世の中にはなかった新しい価値や仕組みを、クリエイティブの力で一からデザインしていくことには大きな社会的意味があると思います。「Greentap」が生活者の日常の中に新しい選択肢をもたらしたということ、そして、あらゆる面で異なる2つの企業をつなぎ、力を合わせてひとつの新しい価値を生み出したということ自体にも、博報堂のクリエイティビティが活かされたのではないかなと思います。

―今後の展望についても教えてください。
大野
コピーライターとしての通常業務では、オリエンシートにある要件から、それをどう魅力的に変換していくかという作業が多いのですが、今回は商品のコンセプトから、ブランドビジョンまで入り込んでいく仕事の面白さを経験できました。マーコム領域に限らず、ブランドや商品づくりにおいて、コピーライターとして力を発揮できるところはあるのではないかなと思いました。
竹之内
LIXILにとってもサントリー食品にとっても未知なる挑戦に、デザイナーとして携われたのは本当に嬉しかったです。新しい価値観や考え方をデザインして広めていくという仕事に、今後も関われたら嬉しいです。
日本は水道水が飲めることは当たり前ですが、そんな国は世界に10カ国ほどしかないと聞きます。「Greentap」を海外にも展開して、より多くの人が日常の中でおいしい水を飲めるようになれば、非常にインパクトがありそうです。そんな未来にも期待しています。

2017年博報堂入社。強さとアイデアのあるキービジュアルをつくり、社会や事業などフォーカスの大きいアートディレクションをすることで、カルチャーに昇華するデザインを目指す。 ヤングカンヌ2023デザイン部門GOLD日本代表、ACC YOUNG CREATIVITY COMPETITION グランプリなど。

2018年博報堂入社。TBWA\HAKUHODOを経て博報堂クリエイティブ局に所属。言葉を起点にグラフィック、CM、アクティベーションなどの広告制作だけでなく、商品、事業開発など幅広い業務にチャレンジしています。