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博報堂クロスバウンド・ビジネス・ラボの外国籍スタッフが解説「クロスバウンド成功の鍵」
~韓国人訪日客の最新トレンドー3大訪日スタイルが示す賢く、速く、社交的な消費行動~

2026.01.14
連載コラム「クロスバウンド成功の鍵」の第2弾として、今回はインバウンド市場において、以前にも増して存在感を高めている韓国からの訪日客に焦点を当てます。
コロナ前の2019年には、中国に次ぐ規模で訪日客数を記録し、地理的な近さや文化的な親和性から、日本を最も身近な海外旅行先の一つとして認識してきた韓国人旅行者。コロナ禍による壊滅的な打撃を経て渡航制限が緩和された現在、韓国からの訪日客は急回復を見せ、2024年には880万人を超える韓国人が訪日しました。平均訪日回数4.54回(5か国中1位)、平均滞在日数3.87泊(5か国中最短)、更に訪日中の平均消費額も24万円弱(5か国中最小)という韓国訪日客は、国内旅行に行くような気分で日本に訪れています。
本稿では、そんな彼らの訪日スタイルや買物スタイルを捉え、いまどきの韓国人訪日客をどのように攻略していくべきか、博報堂クロスバウンドビジネスラボの5カ国インバウンド顧客購買意識調査(2025年3月)データとともにご紹介いたします。
韓国訪日客の3大変化
1.多頻度・短期間旅行の常態化―定着した「プチ日本」需要
2.賢い消費の徹底―「間違いのない選択」と「コスパ」へのこだわり
3.人間関係を重視する「評価軸」消費

調査でわかった、韓国人訪日客訪日スタイルの3大変化

1.多頻度・短期間旅行の常態化―定着した「プチ日本」需要

韓国人訪日客の旅行スタイルにおける最大の特徴は、滞在日数の短さと、それに反する高いリピート率です。
調査によると、韓国人旅行者の平均訪日滞在日数は3.87泊であり、これは調査対象5か国(アメリカ6.77泊、インド6.65泊など)の中で最も短い結果を示しています。この「1~3泊のプチ旅行が多い」という傾向は、地理的な近さが可能にした、日本を週末の延長のように楽しむライフスタイルが定着していることを示唆しています。
一方で、平均訪日回数を見ると、韓国は4.54回と最も多く、頻繁に日本を訪れるリピーター層の厚さが際立っています。これは、韓国人にとって日本が「一生に一度の観光地」ではなく、「日常を彩る延長線上のデスティネーション」になっていることを明確に示しています。
この「多頻度・短期間」スタイルは、旅行の検討や決定の時期にも影響を与えており、旅行先を日本に決めた時期、航空券や宿を予約した時期を見ても、アメリカやインドといった遠方からの旅行者と比較して検討期間が短い傾向が見られます。

こうした気軽さは、旅行中の行動にも顕著に表れています。
韓国以外の4か国の人々が必ず訪れる歴史的観光名所等に対し、韓国人旅行者が熱心に訪れるのは、現地の生活密着型スポットです。具体的には食文化スポットはもちろん、コンビニエンスストアやディスカウントストアへの訪問率が極めて高いのが特徴です。これは、彼らが日本を「特別な旅行先」ではなく、「良質な日用品やトレンドのグルメを、わずかな時間と費用で満喫できる、身近な消費地」として捉えていることの裏返しです。観光名所を巡るよりも、日本らしい日常の中に入り込み、安くて質の良いものを購入し、ローカルグルメを楽しむことに重点が置かれています。この傾向は、日本が韓国にとって「海外」というよりも「ちょっと遠出した国内の充実したショッピング・グルメエリア」と同等の存在感を確立したことを示しています。

2.賢い消費の徹底―「間違いのない選択」と「コスパ」へのこだわり

韓国人訪日客の消費行動を根底で支えているのは、「失敗を回避したい」という強い意識と、徹底した費用対効果(コスパ)の追求です。
彼らの生活意識のトップ項目は、「商品や体験を選ぶときに、間違いのない選択がしたい」であり、これに続いて「日常用品や食料を購入する際に、最もお得な商品を見つけたい」というコストパフォーマンス重視の意識がランクインしています。クラスター分析の結果からも、どの国もTOP3にランクインしていないコスパ実利重視派が韓国では2位に位置しており、他国と対照的に消費における確実性と合理性が韓国人にとっての優先事項であることを示しています。

この「賢い消費」の姿勢は、日本旅行中の買い物に対する価値観にも表れています。
A) 事前リサーチの重視: 日本旅行中の買い物価値観として、韓国人観光客の買い物スタイルを分析すると、「徹底的な事前リサーチに基づいた計画消費」という特徴が顕著に現れています。調査では、「事前に情報を得てから購入を決めたい」層が63.2%(下図のAに近い、ややAに近いの合計)に達する一方で、「店頭での一期一会」を重視する層は20.5%(同じくBに近い、ややBに近いの合計)に留まりました。更に特筆すべきは、検討時期の早さです。旅行直前ではなく、「1週間以上〜3ヶ月未満」から検討を始める層が約6割を占めており、「旅行に行くまで検討しない」層(8.9%)を大きく引き離しています。これらの結果から見える様に、韓国人訪日客の中では事前に計画を立てる層が依然として多数派です。

B) 商品イメージと継続購入理由の合致: 韓国人にとって、日本の商品イメージは「信頼できる」「高品質」「費用対効果が高い」などが上位にくる傾向があります。特に医薬品/サプリメントといった信頼性が求められるカテゴリーでは、「信頼できる」(33%)と「費用対効果が高い」(26%)が中国や台湾と比べても高いイメージを持たれています。更にその他の化粧品・美容用品や、お菓子のカテゴリーの中にも費用対効果が高いというイメージが持たれています。そして、彼らが一度購入した日本商品に対して継続購入を望む理由も、前記の三つのカテゴリー等の主要カテゴリーで一貫して「コストパフォーマンスが良く、値段以上の価値を感じた」がトップにランクインしています。

C) パーソナルな商品での価格重視: 化粧品・美容用品のみならず、パーソナルケア商品の継続購入理由についても、韓国は自分の物との相性や品質に加え、コストパフォーマンスを最優先(50.0%)しており、アメリカ(期待通り・以上の品質/機能48%、周囲からの反応 40%、ブランドへの信頼33%)とは明確に異なる合理性重視の姿勢が見られます。

要するに、韓国人訪日客は、時間をかけて「失敗しない、お得な商品」を見極め、信頼できる日本の「品質」を「費用対効果」が高いと判断した場合にのみ、継続的な購買に繋げるという、極めて合理的かつ緻密な消費スタイルを持っていると言えます。

3.人間関係を重視する「評価軸」消費

A) 「お土産」意識と 周囲の評価への意識: 韓国の買い物客は、友人や家族とのつながりや人間関係を重視し、購入品の評価を気にします。特に食品やお菓子といったカテゴリーの購入後の満足理由を見ると、「周囲からの反応が良かった」という項目が他国に比べて相対的に上位にランクインしています。これは、彼らの購入品が、自分自身の満足だけでなく、他者からの肯定的な反応を得るための手段としての役割も果たしていることを示唆しています。
B) 店頭での「周囲の客」への高い依存性: 特に注目すべきは、店頭での衝動買いの理由です。お酒類を購入した韓国人のうち、「周囲の多くの客が買っていたから」という他者の行動が購買決定に強く影響していることが明らかになっています。また、薬や健康食品においても「お土産として最適そうだった」という理由がトップクラスに挙げられており、彼らの買い物は実用性だけでなく、「誰かに渡すための、失敗しない間違いのない選択」という側面を強く持っています。

これらの結果から、韓国人訪日客は、自身の合理的な判断(コスパ)と、周囲の評価や流行の動向を組み合わせて購入するという、現代的で社交的な消費スタイルを確立していると言えます。

韓国人訪日客を攻略するための視点

この調査から、韓国人訪日客の訪日スタイルは、単なる地理的近さや円安の恩恵だけではない、「短期間・高頻度」の旅行様式に最適化され、「賢く、失敗を避ける」という合理的な価値観を基盤とし、さらに「社交的な買い物をする」という具体的な行動様式が定着していることが分かりました。
日本の観光・小売業者は、以下の点に注力することで、この成長する市場に効果的にアプローチできるでしょう。

A) 短期滞在者向けの高効率な情報提供と商品展開

滞在時間が短いため、NAVERや地図情報など、彼らが普段使い慣れている、旅前から後まで一貫して使用されるプラットフォーム上での「移動中」や「短時間」で意思決定できる情報(正確な位置情報、効率的なルート、即座の価格比較情報など)の提供が不可欠です。

B) 「確実なコスパ」の提示

品質が良いことは当然として、彼らが最も重視する「コスパ」や「間違いのない選択」であることを、広告や店頭POP、SNS上で明確に示す必要があります。特に継続購入意向が高い商品群(化粧品、食品、お菓子)では、「値段以上の価値」と「ブランドの信頼性」を同時に訴求することが重要です。

C) 周囲の「共感」と「流行」を刺激する店頭戦略

周囲の評価や流行の動向に影響を受けやすいという特性を活かし、店頭では、「他者からの肯定的な反応」につながる状況を視覚的に伝えるアプローチが有効です。具体的には、売れ筋ランキング、SNSでの話題性、多くの客が手に取っている様子などを積極的に提示し、「みんなが選んでいるから安心」という周囲の動向を購買決定の強力な後押しとします。また、友人や家族への最適な「間違いのないお土産」としての価値を強調することは、贈る相手からの評価を気にするという購買動機として非常に強く機能します。

D) スケールさせるクロスバウンド発想

韓国人訪日客の「多頻度・短期間」の旅行スタイルを、ブランドの製品認知と試用サイクルを短縮する機会と捉え、訪日体験を帰国後の日常的な購買行動へ直結させます。

① デジタル・トリガーとしてのインフルエンサー活用

商品魅力の高速伝達: 韓国のKOLを起用し、日本の限定品やローカル感のある商品を「賢い選択」「高コスパ」という切り口で紹介する短尺動画を継続的に発信することで、日本旅行前から新しいマストバイ商品としての位置を確立していきます。

② 帰国後の行動変容を促す「即時性フック」

「生活の延長」として再接続させます。訪日中に購入した製品の使用レビューの投稿や、特定のハッシュタグ使用を促し、参加者全員に韓国現地での次回購入時に適用できる特典を付与します。これにより、購入後の満足度を可視化し、日本での購入のみならず韓国内でのリピート購買へと繋げます。

韓国人訪日客の消費行動は、「単なる観光客」から「賢く、高頻度で日本の日用品・トレンドを消費するパートナー」へと進化しています。彼らの合理性と社交性という二つの軸を深く理解し、情報提供と店頭での提示方法を最適化することで、この成長し続けるインバウンド市場からの収益最大化が実現できるでしょう。

金 乘主(キム スンジュ)
グローバルストラテジックプラニング局
マーケティングプラナー

韓国ソウル出身。博報堂入社後、グローバル拠点と連携し、韓国市場をターゲットとしたマーケティング戦略の立案から、訪日インバウンド韓国人客を対象とした戦略立案まで幅広く従事。韓国人としてのネイティブなインサイトと、日本での実務経験に基づく客観的な分析を融合させ、日韓の文化・商習慣等の差を捉えたプラニングを得意とする。現在は、グローバルな視点からクライアント企業の海外マーケティング支援に注力している。

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