
瀧﨑
今回はメタバース生活者と「配信メディア」をテーマに対談していきたいと思います。それでは、まずは赤川さんと妻木さんから自己紹介をお願いします。
赤川
新卒で入ったDeNAでは、Yahoo!モバゲー事業立ち上げや海外事業も含めて新規事業の責任者を数多く経験しました。ここで一貫して意識していたのは、自分の趣味や興味を通じて、人と人をつなぐサービスを作ることでした。その延長線上で2015年に「Mirrativ(株式会社ミラティブ )」を立ち上げ、当初はスマホだけでゲーム実況ができるサービスとしてスタートしました。現在は日本で最も多くのライブ配信者を抱えるスマホゲーム配信アプリへと成長しています。また、会社としては、2025年の12月に東証グロース市場へ株式上場をいたしました。

妻木
アイブレイドでは、大手プロダクションに所属していない個人VTuberをキャスティングするサービス「ぶいきゃす(ぶいきゃす)」を通じて、インフルエンサーマーケティングを展開しています。また、プロモーションだけでなく、VTuberと一緒に音楽イベントやポップアップといったオフラインイベントにも力を入れていて、さまざまな形でVTuberとコラボレーションを行っています。

瀧﨑
VTuberはメタバースと少し違うものの、私たちが大切にしている「(デジタル上の)もう一人の自分」という考え方にはぴったりな存在だと思っています。そのうえで、昨今における配信活動の実態がどのように変化してきたのかについて教えてください。
赤川
まず、ゲーム実況は、2000年代半ばのニコニコ動画やニコニコ生放送を中心に広がり始めました。その後、2010年代にはYouTubeが急成長し、あわせてゲーム実況もマス化していき、YouTuberが注目された2015年頃には既に視聴時の中心コンテンツでした。一方、その頃は、「自分で実況する」こと自体のハードルが高かったんですね。そんな状況のなかでMirrativはスマホだけで簡単にゲーム実況できる仕組みを提供したことで多くの人が配信を始めるようになり、爆発的にゲーム実況をする側の裾野も広がったんです。
そして2017年末に第一次のVTuberブームがやってきます。

さらにコロナ禍を経て、モバイルゲームだけでなくPCやコンソールゲームの実況者も増加しました。VTuberだけでなく元eSportsプレイヤーなども含め、ゲーム実況のライブ配信を日常的に行う「ストリーマー」が、自分にとって身近で影響力のある“メディア”として存在感を強めていきました。
瀧﨑
Mirrativは10代〜20代の利用が多い印象ですが、日本は匿名のVTuberのように、リアルとは切り離した「(デジタル上の)もう一人の自分」として配信するニーズがあるのではと思うのですが、その辺りはどのようにお考えですか?
赤川
やはり、顔を出さない匿名文化というのは日本特有のものだと感じていますし、最近の大手VTuber事務所が世界的に展開しているのは、日本ならではの匿名のコミュニケーションがグローバルに受け入れられている証拠だと考えています。
海外と日本のユーザーにおける違いについて説明すると、前者は「自分を映して顔出しで実況したい」というニーズが中心だったのに対し、後者では「顔を映さずに配信する」というスタイルが多かったんです。また、日本では2016年にKizuna AI(キズナアイ)さんの登場以来、VTuber文化が盛り上がりを見せたため、私たちもVTuberのようにアバターを使って配信できる機能「エモモ」をリリースし、アバターを使った配信活動をサポートするようになりました。

瀧﨑
確かに、顔出ししないことで得られる「安全性」、肩書きや社会的な立場から少し離れて「自由に個性を表現できる」などの理由から、匿名で配信するスタイルを選ぶ方が増えていると感じています。
赤川
最近で言うとSNSでの炎上が増え、言論が過激化するなかで「実名や顔出しでの発信は怖い」という感覚が2〜3年前より明らかに強まっています。その結果、DiscordなどのクローズドなSNSに人が流れ、自己表現の手段としてアバターを使うのも当たり前になってきています。これはVTuberに限らず、メタバースやバーチャル空間全体に共通する流れで、この数年間で急速に加速していますよね。
瀧﨑
妻木さんは日頃から沢山のVTuberの方と接していると思うのですが、「もう一人の自分」としてアバターを持つことに、どんな魅力やメリットを感じているという声をお聞きになりますか?
妻木
VTuberの方々を見ていて面白いなと感じるのは、「バーチャルだからこそ、よりリアルな自分を出しやすい」という点です。VTuberの中には私生活のことや自分の気持ちを率直に話している方がすごく多い印象がありますが、どうしても顔出しをしてしまうと言いづらいことがあったり、肩書きや立場が邪魔をしてしまったりする部分もあると思うんですよ。
それがバーチャルで活動することで、そうした制約から解放され、自分らしさを自由に表現できるのが大きな魅力になっています。さらに配信を見ている視聴者もまた、「バーチャルを通じて感じるリアルさ」に惹かれているように思います。そういう意味では、VTuber文化が“バーチャルの中でリアルを楽しむ”という、すごくユニークで面白い側面を持っているのではと考えていますね。
