THE CENTRAL DOT

「”好き”を起点に、SNSでゆるくつながる」は本当か?(後編)
~界隈に存在する5つのクラスター~

2024.03.01
世間がミレニアル世代・Z世代に抱く当たり前や通説とは異なる、新たな一面を発見する連載コラム「解剖MZ!」。前回の第4回コラム前編では、「Z世代はSNSで自分の好きなものについての考えを積極的に発信している」というイメージについて検証しました。前編では、Z世代は「自分の好き」の発信には積極的ではないものの、「友だち限定型」「インフルエンサー予備軍型」の発話パターンが存在していることがわかりました。続く後編では、好きなものに関する「界隈」への参加スタンスにはどのようなタイプが存在するのかを探っていきます。

Z世代は「分散型コミュニティ」で好きを深める

本コラムの前編では、Z世代のファンコミュニティは一部に憧れが集中する「単一ピラミッド型」ではなく、同じ対象でも異なる楽しみ方をする人が集まる「分散ピラミッド型」であるというお話をしました。

後編では、この「分散型コミュニティ(≒界隈)」の中に、ハマっているものに対してどのようなかかわり方をするタイプがいるのかを探っていきます。今回は、15~24歳の1,000人に対してインターネット調査(※1)を実施し、発話や情報特性、好きなものに対する価値観などの回答から、界隈への参加スタンスに関して似た特徴を持つ人をグルーピングする「クラスター分析」を行いました。

界隈には5つのクラスターが存在する

分析の結果、「界隈」には大きく分けて5つのクラスターが存在することがわかりました(※2)。

① オピニオンリーダー型(19.7%)
② マイペースエンジョイ型(9.8%)
③ コミュニケーション回遊型(30.8%)
④ ひっそり自己研鑽型(15.8%)
⑤ 静観型(23.9%)

5つ目の「静観型」は、発信や情報収集が非常に少ないタイプなので、Z世代の発話にフォーカスする今回のコラムでは他の4タイプの詳細を見ていきたいと思います。

クラスター①:オピニオンリーダー型

リアルでもネットでもとにかく発信量が多いタイプ。特にリアルの友人を沼に引き込む力が強いです。好きなものにはお金をかけて長期間ハマり続けますが、活動的であるがゆえに、他の対象にも同時にハマっていることが多いタイプです。

クラスター②:マイペースエンジョイ型

スキルアップ意欲が高く、一つの沼に没頭するタイプです。ハマっているもの別にアカウントを作ったり、SNSでの検索が多かったりと、SNSを工夫して活用します。周囲の意見に流されたり、周囲を強引に沼に引き込んだりすることは少なく、まわりとうまく距離感を保つタイプです。

クラスター③:コミュニケーション回遊型

沼を極めることそのものよりも、SNSを中心に界隈の人との交流を楽しんでいるタイプ。仲が良い人だけでなく、知り合いレベルの人に対しても発話します。一方で、周囲の目を気にしており、好きなものが叩かれたり、メジャーになったりすると好きな気持ちが揺らぐことが多いです。

クラスター④:ひっそり自己研鑽型

好きなことについて自ら発信することは少ないですが、自分で情報を集めながらスキルや知識を高めていくタイプです。好きな気持ちが周囲の影響で揺らぐことは少ないですが、知識・スキル獲得意欲が高いこともあり、広い対象に興味を持ちます。

楽しみ方が多様な界隈で、コミュニケーションを波及させるために

同じ対象を好きな人の集まりでも、ハマるきっかけとなる入り口や楽しみ方は人それぞれ。前編でも触れたように、Z世代だからと言ってみんながSNSで積極的に好きなものについて発信しているわけでもありません。
若年層向けのコミュニケーションを考える際には、界隈に存在する各クラスターの情報流通における役割(下図)を把握したうえで、話題化の施策を整理することが大切です。例えば、「オピニオンリーダー型」は火付け役として初期から話題を拡散してくれる可能性が高いですが、さらにロイヤリティの高いファンを育てるために、次は「マイペースエンジョイ型」が好きになってくれそうな体験型施策を考えるといった戦略も考えられます。さらには、「コミュニケーション回遊型」がつい発話をしたくなるような施策として、知識・経験を語りたくなるSNSのハッシュタグを考えたり、ひっそり自己研鑽型のスキルアップ意欲をくすぐるオリジナル検定を作ったりと、柔軟な波及戦略が重要だと考えます。

まずは企業やブランドが、「どのような情報を発信したいか」「どんなファンに増えてほしいか」を考えたうえで、クラスターの特徴と照らし合わせながら、相性の良いコミュニケーション戦略を探ることが大切です。また、ハマっている対象のジャンルによって、各クラスターの割合も変化するため、ジャンルごとに相性のいいコミュニケーション手法も異なってくると思います。重要なのは、一気に話題化を狙うだけではなく、好きになってもらう入り口と興味を深めるルートをしっかりと考えて用意することです。このコラムが、好きなものとの向き合い方に寄り添った施策を考えるヒントになれば幸いです。

※1 博報堂実施「好きなものに関する意識調査」
【調査エリア】全国
【調査対象者】15~24歳1,000人
【実施時期】2024年1月

※2 各クラスターのボリューム(%)は、「ハマっているものがある」と回答した15-24歳における割合(n=874)

工藤真帆
博報堂 博報堂 ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 マーケティングディレクター

女性向け・ファミリー向け商材を中心に、幅広いクライアントのブランド戦略・プロモーション戦略、IMCプラニングを担当。メディアプラナー、アクティベーションプラナーの経験も持つ。マヌルネコにハマり中。

太田誠也
博報堂 博報堂 ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 マーケティングプラナー

総合印刷会社にて企画制作や事業開発を経験し、2023年に博報堂入社。日用品を中心に消費財のマーケティング戦略立案に従事。生活者の暮らしや心の機微に関心がある。趣味は映画鑑賞、街歩き。

小野万優子
博報堂 博報堂 ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 マーケティングプラナー

2022年に博報堂入社後、自動車や消費財のマーケティング戦略業務を担当。日々さまざまな角度から生活者のくらしに向きあう。恐竜のグッズを集めるのが好き。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事