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「しりとり」検索で探る必勝法(連載:デジノグラフィで読み解く〇〇Vol.4)

2022.11.10
#デジノグラフィ#トレンド#生活総研
ネット上には多様な生活者の声があふれています。中でも、ブラウザ検索のキーワードとして打ち込まれた文字列には、生活者自身の思考が素直に投影されています。あの細長い検索窓には、生活者が疑問に思っていること、分からないこと、悩んでいることが、時として検索ワードというより心情を吐露する文章になって打ち込まれているのです。
本連載では、そんな検索ビッグデータに現れた生活者の移ろいゆく心を様々な博報堂社員の視点でご紹介していきます。ベースになっているのは、博報堂生活総合研究所が提唱する、デジタル上のビッグデータをエスノグラフィ(行動観察)の視点で分析する手法「デジノグラフィ(https://seikatsusoken.jp/diginography/)」の考え方です。
ビッグデータ分析、というとなんだか肩に力が入ってしまっていけません。リラックスした気分で、データの向こう側にある現代社会を生きる生活者の日々に思いを馳せられる半分エッセイのようなコラムを連載でお届けします。
※本コラムは、Webメディア「NewsPicks」の「トピックス」に掲載された記事の転載です。

博報堂生活総合研究所 上席研究員
酒井 崇匡

「しりとり」
ことば遊びの一つ。2人以上が代わり合って、「やま」「まつ」「つる」などと、前のことばの終わりの音をとって、後のことばの初めに置きながら、ものの名を順々にいい続けてゆくもの。
(コトバンクより)
https://kotobank.jp/word/%E3%81%97%E3%82%8A%E3%81%A8%E3%82%8A-80981
(参照2022.11.8)

早いもので、2022年も残り2ヶ月を切りました。年末年始には旅行や帰省に向かう車中でお子さんと延々としりとりをされる、という方も多いのではないでしょうか。今回はこの「しりとり」に関連した検索行動をご紹介していきます。

ただ、厳密に言うと今回のフックワード(データを引き出すフックになる言葉)は「しりとり」そのものではありません。というのも、実は「しりとり」を含む検索上位を調べると「しりとり るから始まる言葉」というのがランクインしてきます。

ご存じの方もいるかも知れませんが、しりとりには“る攻め”という“る”で終わる言葉ばかりを言って相手を手詰まりにするという戦術(?)があります。その対抗策となる言葉が調べられているのです。

他にも色々な「○から始まる言葉」が調べられているのでは…?ということで、今回のフックワードは「始まる言葉」です。

ヤフー株式会社が提供するデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使って、2021年1年間の検索データの中から「始まる言葉」を含む検索の上位10位をランキングにしてみました。
※「DS.INSIGHT」では統計化されたデータのみを扱っており、個人を識別可能な情報は含まれません。

決定!10大しりとり文字

“る攻め”に対抗するための「るから始まる言葉」が突出して検索ボリュームが多いですが、次点は「んから始まる言葉」。しりとりのルールを根本から覆す言葉が検索されています。そんな言葉あるのか、と思われるかも知れませんが、調べてみると沖縄ではウナギのことを「ンチャンナジ」と言ったり、竹富島には「ンブフル」という地名があったりします。また、方言以外にも古典落語には「ん廻し」という演目があるようです。

海外に目を向けると、例えばアフリカの世界遺産に指定されている「ンゴロンゴロ保全地域」がありますし、「んから始まる言葉」が相当あります。渋滞に巻き込まれて今日はもうエンドレスでしりとりがしたい、という場合にはぜひ使ってみてください。

3位以下は、り、ぷ、う、す、い、ず、ら、し。念の為、2019年、2020年のランキングも見てみましたが、順位の多少の変動はあれどTOP10に来る言葉は見事に変わらず。これらを日本の10大“しりとりで思い浮かびにくい最初の文字”と認定して差し支えなさそうです。皆さん、攻めるならこの10文字です。“ん”はそもそも言っちゃだめですけど。“ぷ“ とか、ついプリンって言っちゃいそうになりますよね。

「終わる言葉」で検索されているのは?

これらの文字で相手を攻めるためには、当然ですが、その文字で終わる言葉を言わなくてはなりません。であれば、「○で終わる言葉」ももしかして検索されているのでは…?そう思って調べたTOP10がこちらです。

「始まる言葉」よりだいぶボリュームは少ないですが、確かに検索されていました。しかも10文字中7文字(下線を引いてあるもの)が「始まる言葉」でもTOP10に入っており、ちゃんと?事象がリンクしていることが分かります。

ちなみに、「始まる言葉」「終わる言葉」ともに、検索ボリュームの約半数を10代以下が占めます。少年少女達が放課後の教室で、青春をかけてしりとりをしているところを思い浮かべると、胸が熱くなる気がしないでもありませんね。

酒井 崇匡
博報堂生活総合研究所 上席研究員

2005年博報堂入社。マーケティングプラナーを経て、12年より現職。 デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。 行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。 新刊に『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』(共著) https://www.amazon.co.jp/dp/4883355101/ その他の著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。 2018年1月よりNewsPicks Pro Picker。NewsPicks内特集では『コロナ後の世界』、『イノベーターズ・トーク 消費の次』、『ProPickers NOTE』などで寄稿。

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