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博報堂生活綜研・上海 第13回「生活者“動”察」研究成果を発表

2026.03.17
#リサーチ#中国#生活者研究
AI浸透の先に、中国生活者に芽生える新欲求「智向(Zhi Xiang)」
AIを巧みに取り入れ、自分らしさを磨きながら、進むべき方向性を見出していく中国生活者

博報堂生活綜研・上海は、中国伝媒大学広告/ブランド学院との共同研究「生活者“動”察」を行い、13回目となる研究発表会を中国・上海市にて開催しました。

今年のテーマは、「AI浸透の先に、中国生活者にみえてきた新たな意識と行動の兆し」です。2025年頃からの自国発生成AIの発展を機に、中国社会でAIが急速に浸透し、生活者の意識と行動にも大きな影響を与えています。AIの浸透が国家戦略として推進されていることに加え、ECやモバイル決済などのテクノロジーが利便性を高めてきたという実感もあり、中国生活者はAIの活用に積極的です。

現在、中国におけるAIの活用は、仕事や情報収集の効率化といった「タスク効率化ツール」としての側面が主流ですが、趣味を深めたり、学びたい知識や技能を習得したりする際にAIを活かす人も多く見られます。さらに、AIとのやりとりを通じて自身の情緒をコントロールしたり、AIとの共同作業や対話を通じて自分の強みやらしさを再発見したりする生活者も現れてきています。

中国内外のAI関連の研究や論文では、特に「(AIによって)仕事が奪われる」、「社交意欲や能力が失われる」、「主体的な学習意欲が後退する」といったリスクも議論されています。しかし中国生活者は、こうした懸念を多少は抱えているものの、AIを使いこなす人ほど自分ならではの強みに気付いたり、AIとの対話から得られる新たな視点や気づきを自らのインスピレーションへと変えるなど、AIと上手に付き合っている様子がみえてきました。自分の強みを研ぎ澄ましたり、本当に好きなことを見つけ、それを深めたりするためにAIを活用し始めているのです。

「AI(中国語:人工能)を巧みに取り入れ、自分らしさを磨きながら、自身の進むべき方性を見出していきたい」。私たちは、中国生活者のこの新たな欲求を『智向(Zhixiang)』と名付けました。

3月17日に開催された研究発表会「生活者“動”察 2025」では、AIの普及が進む中で、中国生活者がとり始めている新たな行動や意識の変化を、データや具体的な事例を交えながら紹介しました。本発表のレポート(日本語・中国語・英語)をご希望の方は、博報堂生活綜研・上海<sei-katsu-sha.info@hakuhodo-shzy.cn>までお問い合わせください。

<参考データ>

①【AIの利用頻度と受容意識】
「AIを利用している」と回答した人は61.6%。そのうちの約85%が週1回以上、10~30代では半数以上が週5日以上利用。AIに不安を抱く利用者は少数で、期待を感じている人が多い。

・「AIを利用している」と回答した人は61.6%。(データ1)

・AIを利用している人に利用頻度をきいたところ、「週5日以上利用する」と回答したヘビーユーザーが46.2%に達し、ミドルユーザー(週1〜4日利用)の38.1%と合わせると、AI利用者のうちの約85%が週に1日以上利用。特に30代ではヘビーユーザーが54.2%と最も多く、仕事や育児などで忙しい日々の中、AIを活用することで時間を効率的に活用しているようです。(データ2)

・AIに対する意識も前向きで、AI利用者の約7割(68.6%)が「期待している」と回答しました。(データ3)

<データ1> AI利用者の割合

<データ2> AIの利用頻度 ※AI利用者ベース

<データ3> AIに対する意識 ※AI利用者ベース

②【AIの主な利用目的と意向】
AI利用者へのインタビュー調査から、AI利用の主な目的を「タスク効率化」「趣味技能の深化」「情緒コントロール」「内省」の4つに分類。現在は「タスクの効率化」と「趣味技能の深化」のための活用が主流だが、今後は「情緒コントロール」や「内省」を目的とした活用も広がっていくとみられる。

・AI利用者が実際にどんな時にAIを利用しているのかその行動実態をインタビュー調査で集め、AI利用の目的を、「ラクにする/軽くする行動」か「深める/高める行動」かという横軸と、「目に見える変化のための行動」か「内面的な変化のための行動」かという縦軸の4領域に整理し「タスク効率化」「趣味技能の深化」「情緒コントロール」「上手に内省」の4つに分類しました。(図)

・AI利用者に、各目的のために現在AIをどの程度活用しているのかを複数回答できいたところ、「タスク効率化」が80.0%と最も高く、次いで「趣味技能の深化」が65.2%となりました。(データ4)

・各目的に対し、今後の利用意向を5段階できいたところ、「タスク効率化」(96.8%)や「趣味技能の進化」(92.8%)のために利用したい(「利用意向が高まる」+「やや高まる」)と回答した人は9割超に。また、AI活用を通じて癒しを得たり、ストレスを解消する「情緒コントロール」(78.1%)や、AIとの対話を通じ自分らしさややりたいことをみつめる「内省」(70.8%)のために利用したいという人も7割を超えました。AI利用の目的が、精神的な充足や自己探求といった内面的な領域へと広がっていく兆しがみられます。(データ5)

<図> AIの主な利用目的

<データ4> 現在の利用目的 ※AI利用者ベース

<データ5> 今後の利用意向 ※AI利用者ベース

③【AI浸透への懸念に対する中国のAI利用者の意識】
AIの急速な普及に伴い、さまざまなリスクも懸念されている。しかし、中国のAI利用者はAIのポジティブな側面により着眼し、自分の強みや好きなことを発見する好機とみている。

AIの普及が進むなか、「仕事が奪われる」、「人との交流意欲や能力が失われる」、「主体的な学習意欲が後退する」といったリスクも懸念されています。しかし利用者にインタビューすると、リスクを意識して委縮するのではなく、AIの活用を通じて自分の強みを見出したり、AIを情緒のバランスを取るためのサポーターや社交のアドバイザーにしたり、AIによって学習や情報探索のハードルを下げて、自分の好きなことややりたいことを探求したりするようになってきています。(表)

<表> AI浸透に伴うグローバルな懸念と中国のAI利用者の対応行動

④【AI浸透の先にある中国生活者の新たな意識】
中国生活者は、AI(中国語:人工能)を巧みに取り入れ、自分らしさを磨きながら、自身の進むべき方性を見出していく「智向(Zhixiang)」

不確実性の高い時代において、将来への不安や迷いを抱く中国生活者は、AIを単なる「効率化のためのツール」とは考えていません。むしろ、AIを主体的に使いこなすことで自分ならではの強みを高めたり、自らの可能性を拡張したりし続けています。
「AI(中国語:人工能)を巧みに取り入れ、自分らしさを磨きながら、自身の進むべき方を見出したい」。AIが生活のあらゆる場面に浸透した先には、この「智向(Zhixiang)」という欲求が、中国生活者の間でさらに広がっていくと私たちは考えます。

【本研究にあたり実施した調査の概要】
■AIを活用した定性調査(300サンプル)
対象者条件:18-59歳男女、1-4級都市在住、生成AI利用者
調査手法:AIによるインタビュー
調査時期:2025年11月
調査機関:JIU YUAN QIAN CHANG (SH) Management Consulting Co., Ltd.

■AI先端利用者&一般利用者インタビュー調査(30サンプル)
対象者条件:20-59歳男女、1-3級都市在住
調査手法:1対1のデプスインタビュー(90分)および生活写真の分析
調査時期:2025年9-10月
調査機関:Shanghai Horizon Research Co., Ltd.

■AI利用実態定量調査(3,000サンプル)
対象者条件:18-59歳男女、1-4級都市在住、生成AI利用者
※スクリーニング調査(対象者4,871サンプル)で、「生成AIを利用している」と回答した人
調査手法:インターネット調査
調査時期:2025年10-11月
調査機関:Shanghai Zhongyan Network Technology Ltd.

【博報堂生活綜研・上海(Hakuhodo Institute of Life and Living Shanghai)】
博報堂生活綜研・上海は、2012 年に中国・上海に設立された博報堂グループのシンクタンクです。日本で蓄積してきた生活者研究のノウハウを生かし、中国における企業のマーケティング活動をサポートしていくと同時に、これからの中国の新しい暮らしのあり方を現地で洞察・提言する活動を行っています。

現在の主要業務は、以下の通りです:
・生活者の本質的な欲求を洞察し、新しい暮らしのあり方を提言する「生活者“動”察」
・自動車、化粧品などの特定のカテゴリーや、若者、富裕層など特定の生活者を分析する「特定テーマ研究」
・生活者発想を基盤とした企業のマーケティング活動に対する「コンサルティング」

「生活者”動“察」は博報堂生活綜研・上海と中国伝媒大学広告/ブランド学院との共同研究発表です。毎年開催される「生活者“動”察」研究発表では、中国の生活者の行動と欲求の変化を分析し、独自のキーワードを提言します。今回の「智向」は、昨年の「自築消費」に続く13回目の研究成果となります。

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