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ヒット習慣予報 vol.213『五感マルチタスク』

2022.04.05
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの鈴木です。

2022年度一発目のコラムです!4月から環境が変わる方もいらっしゃるかと思いますが、本コラムも気持ちの上では心機一転。中身のフレッシュさを意識しながらも今年度も変わらずにお届けしたいと思います。

さて、今日のコラムは会社で少し面白かった光景をもとに書きたいと思います。弊社はリモートワークをしている社員も多いため会社のデスクでオンライン会議をしている人をよく見るのですが、先日オンライン会議でパソコンの向こうの相手と打ち合わせをしながら横に座っている人とも何やら会話をしている人がいることに気がつきました。一方の耳ではオンラインの人の話を聞きながらもう一方の耳は横にいる人とのやりとりに使う。なんとも器用なことをするなあと感心すると同時に、こういった「聞きながら聞く」だったり「見ながら見る」等の五感を複数の目的で利用して拡張するケースが増えているのではないかと考えました。この習慣を「五感マルチタスク」と名付けてみました。

「五感マルチタスク」でまず気になっているのが冒頭にも登場した「聞きながら聞く」です。先程は右耳と左耳の使い分けでしたが、最近は耳を塞がないオープンイヤーイヤホンや骨伝導イヤホンが注目を集めています。通常のイヤホンとは違い耳を塞がないためイヤホンからの音を聞きつつ外部からの音も聞けるので、リモートワークで仕事をしながら子供の世話をしたり、散歩をしながら外の音も楽しみつつ音楽を聴くことができるようになります。実際私の奥さんもオープンイヤーイヤホンを付けて自宅で仕事をすることでコロナ禍で増えた宅配が来た時にインターホンの音を逃すことが減って便利だと喜んでいます。

試しに「骨伝導イヤホン」で検索をかけてみると過去3年間で検索数が伸びていました。骨伝導ヘッドホン自体は2006年頃に登場していたようですが、ここ最近になってより注目を集めていると言っても良さそうです。

出典:Googleトレンド

続いて「見ながら見る」です。コロナ禍で友人と一緒に映画を見に行ったりスポーツ観戦に行く等同じコンテンツで盛り上がりにくくなった中、友人と同じ動画をそれぞれの家で見ながらみんなでチャットを見て盛り上がるという行為が人気を集めています。テレビを見ながらSNS等でその内容を実況するということは今までもありましたが、とある動画サブスクリプションサービスが離れている人と一緒に映画を見ながらチャットもできる機能を搭載し正式なサービスとしてリリースする等、習慣化が進んでいます。視覚の一方を映画やコンテンツの視聴に使いながら、もう一方では友達とのチャットを楽しむという視覚を使った「五感マルチタスク」の一例と言えます。

またこれは少し将来的な話ですが、「見ながら見る」をより進めたものとしてスマートコンタクトレンズも注目されています。通常のコンタクトのように目に装着することで実際には存在しない情報や物を見ることができるというもの。今は実用化に向けて開発が進められている段階ですが、「見ながら見る」を大きく進化させることが期待されています。

それではなぜ今このような「五感マルチタスク」が注目を集めているのでしょうか?
ひとつは圧倒的な情報量の増加が挙げられます。博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査2021」によると、1日あたりのメディア総接触時間は450.9分で過去16年で最高値を記録。とりわけ携帯電話/スマートフォンの伸長が顕著です。現代人は処理すべき情報が多すぎて、五感も一つのことに使っているのでは処理しきれなくなっているようです。

出典:【博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 「メディア定点調査2021」】

もうひとつはマルチタスキングの増加です。特にコロナ禍をきっかけに家事をしながら仕事をしたり、リモートワーク中にパソコンで電話会議に出ながらスマートフォンで緊急のメールの返信を行うといった複数のことをこなす機会が増えました。同時に複数のことをこなすために五感をフル活用する「五感マルチタスク」が必要となっているのです。

以上、「五感マルチタスク」を見てきましたが、今後もデジタル化でさらに処理しなくてはならない情報が増えることが予想されますし、VRやメタバース等の技術の向上で「五感マルチタスク」はさらなる進化を遂げそうです。そしてそれに伴い新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

「五感マルチタスク」のビジネスチャンスの例
■ 右耳と左耳で流れる情報が異なるイヤホン。どちらかに集中したいときは左右でボリュームの調整が可能。
■ テレビ番組等で見ている視聴者のSNSでの生の反応がそのままタイムライン的に流れる、副音声ならぬ「副画面」の搭載。
■ 動画配信サービスでの2画面表示。一度に2つのコンテンツが楽しめる。

ところでオープンイヤーイヤホンは個人的に音漏れが気になり敬遠していたのですが、よく考えてみると奥さんの音漏れは気になりませんし見ていると便利そうなので自分も4月からの心機一転としてオープンイヤーイヤホンデビューしてみようかと思います!

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

鈴木 康司(すずき・こうじ)
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2007年 博報堂に入社。
ヒット商品やヒット習慣には飛びつかずにはいられない、ドミーハー。好きが高じて、ヒット商品やヒット習慣を生みだせると良いなと思い日々奮闘中。休日は家でアイドルのDVDを見るのが好き(主にジャニーズ)。

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