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ヒット習慣予報 vol.184『平成レトロ』

2021.08.31
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの山本です。

みなさん、今年の夏はいかがお過ごしでしょうか。昨今の状況を鑑みて、去年の夏に引き続き、イベントがキャンセルになったり、家族や友人と気軽に出かけにくかったり、例年楽しんでいたはずの夏の風物詩を満喫しきれていない、そんな想いをされている方も多いのではないでしょうか。僕もその一人で、夏祭りとか行きたいよなあと思いつつ、当たり前だった夏の日常にどこかノスタルジーを感じてしまう今日このごろです。笑

今日は、そんな懐かしさやノスタルジーをテーマにしたお話です。

下のグラフを見てみてください。Google Trendで、「レトロ」と検索してみると、2010年代から緩やかに上昇傾向にあります。

ご存じの通り、2010年代には若者を中心に、使い捨てカメラ、レコード、順喫茶、メロンソーダ、シティポップなど、いわゆる『昭和レトロ』なアイテムやカルチャーがリバイバルされました。
昭和レトロの流行で、伸び続けるレトロトレンドですが、今は令和の時代。昭和を超えて、平成すらも懐かしい過去の時代です。そういった背景もあり、レトロトレンドの中心が、『昭和レトロ』から、『平成レトロ』に移行しつつある、というのが今回のお話する新習慣『平成レトロ』です。

『平成レトロ』とは、1990年代~2000年代の平成初頭に流行したアイテムやカルチャーに再注目し、それを自分の日常や習慣に取りいれ始めた人が増えている新習慣です。
特に若者を中心に広まりつつある新習慣ですが、まずはいくつか事例を見ていきましょう。

まず最初にあげられるのが、ギャルカルチャーの再燃です。
渋谷を発信地に、平成初期ごろまで流行していたギャル文化が、若者世代の間で再び盛り上がりを見せているようです。『思ったことははっきり言う。仲間との友情や、明るく陽気なポジティブマインドを大事にする。』といった当時のギャルをイメージさせるYouTuber出身のタレントが、10代の若者から人気を集めていることからも、ギャルカルチャーへの支持が高まっていることが見てとれます。
当時ギャル発信の文化だった、ガラケーや交換日記などにシールを張ったり、落書きを書いたりするデコカルチャーもリバイバルされているようです。
たとえば、コロナ禍で必需品になったマスクです。マスクも、10代の若者を中心にシールやペンでデコレーションする対象になっているようで、実際にインスタグラムで「デコマスク」と検索してみると、キラキラしたマスクを自分たちで制作して楽しむ若者の投稿が数多くありました。ほかにも、スマートフォンのケースに落書きしてみたり、自分たちの顔にシールを張って、インスタ映えな自撮りを楽しんだりと、あらゆるものをデコレーションして可愛くする、ギャル発信のデコカルチャーが再流行しています。

平成レトロの事例としては、ファッション業界でも、『Y2Kファッション』という2000年代に流行していたファッションがトレンドになりつつあります。今年になってからメディアでもよく取り上げられるようになった、このY2Kという言葉は、『2000年代(Year 2000)』を意味する言葉で、若者にとっては「一見ダサいけど、それが逆にクール」なスタイルなんだとか。Y2Kファッションは、当時流行していたピチピチなTシャツ、短丈のトップスや厚底ブーツ、原色やパステルカラーをふんだんに使ったカラーリングや、ファンシーな柄のデザインなどが特徴的なファッション。きれい目にまとまるファッションではなく、個性やキャラクターがにじみ出るようなカラフルでキャッチーなスタイルが人気を集めているようで、インスタグラムで「#Y2K」と検索すると、海外投稿も含めて、200万件以上のファッション投稿がポストされていました。古着を着るという習慣が若者の間で浸透していることも、当時のアイテムが流行することに影響があるように思いました。

上記の事例のほかにも、様々な領域で、平成レトロの流れが起きています。
エンタメコンテンツの業界でも、当時流行した家庭用ゲーム機の「ミニ版」が発売され、懐かしさを感じる大人にヒットして話題になったことや、平成に流行したトレーディングカードの価格が高騰していることからも、平成時代のものに光を当て、新しい趣味やライフスタイルとして、生活に取り込んでいく『平成レトロ』の流れが見て取れます。

ところで、なぜいま『平成レトロ』なのでしょうか。

大きな背景としては、流行を生み出す若者の世代が、平成に幼少期を過ごしたという世代にまで若返ってきたということがあると思います。「子供のころの懐かしいあれ、良かったよね」「今見るとダサいけど、このダサさもいいよね」そんな若者感覚が、世代を重ねていま、平成のライフスタイルやカルチャーに光を当て始めているのではないかと感じます。特に現代は令和となり、新型ウイルスの流行をきっかけに、生活スタイルが大きく変わったターニングポイントです。平成の生活や時代の空気感に、より郷愁の入り混じる羨望の眼差しが、向けられやすい時代になっていることも要因の一つであるといえそうです。
また、「あえて昔のものを取り入れる」「ダサいものをスタイルに」的な価値観が若者の中に浸透している中で、「このアイテムに再着目しているセンス」という視点から、個性を表現したい若者が多いのではないかと思いました。特に今は、SNSの流行も相まって、自分らしいオリジナルな目線やスタイルが大事という価値観が若者の間でも広まっていますから、共感性の高い、懐かしのアイテムやカルチャーを発掘すること自体が自己表現の手段になっており、懐かしき平成のお宝により注目が集まっているのかもしれません。

さて、ここまで見てきたように、『平成レトロ』は、若者を中心に平成のアイテムやカルチャーを趣味やライフスタイルに再び取り入れてみる新習慣ですが、最後に、『平成レトロ』をめぐるビジネスチャンスについて考えてみました。

「平成レトロ」のビジネスチャンスの例
■ 平成に流行した自社商品の現代復刻版の企画販売
■ 平成に一世を風靡したCMのリブートコミュニケーション
■ デコ文化やY2Kファッションなど、平成レトロトレンドにあわせた商品開発

僕自身も最近、幼少期を過ごした平成初期の懐かしいドラマ主題歌やCM曲を聴きなおすことで、その魅力を再発見する楽しさを覚えました。
平成レトロが本格化する時代。ぜひ、みなさんも身のまわりの平成レトロ探しを楽しんでみてください。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

山本 健太(やまもと・けんた)
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2017年に博報堂入社以来、ストラテジストとして、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。ミレニアル世代/グローバル領域の業務経験多数。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。

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