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ヒット習慣予報 vol.109 『自己表明タグ付け』

2020.02.25
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの鈴木です。

2月ももう中旬。東京では徐々に暖かい日も多くなってきて春が近づいて来る雰囲気を感じます。

さて、今回のテーマは「自己表明タグ付け」です。SNSでは自分のプロフィール欄に「#サッカー好き」「#カメラ女子」「#おしゃれさんとつながりたい」等、自己紹介代わりにハッシュタグをつけて自分を「タグ付け」することがよくあります。これがハッシュタグでタグ付けするだけではなく、しかもネットの世界、リアルな世界問わずに自分について知ってもらうための「タグ付け」をする習慣がはじまっていることについてみていきたいと思います。

日常生活で自分の状況について知ってもらうためのツールとしてよく知られているのは、「マタニティーマーク」ではないでしょうか。「マタニティーマーク」は2006年に厚生労働省が推進する国民運動計画「健やか親子21」推進検討会が発表したもので、妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保を目指して作られました。これを身につけると公共交通機関等で席を譲ってもらいやすくなる等の効果を見込めます。

また、援助や配慮を必要としていることが外見では分からない人々が、周りに配慮が必要なことを知らせる、2012年に東京都で活用が始まった「ヘルプマーク」もあります。赤地に白の十字が入っているマークと聞けばピンと来る方も多いのではないでしょうか。こちらも最近目にする機会が増えた印象がありますが、検索数を見てもやはりここ数年で大きく向上していました。

出典:Googleトレンド

このように、助けを必要とする人が自分の状況を周囲に伝える意味での「自己表明タグ付け」はここ数年でかなり一般的になっていますが、本コラムではそういった目的以外の「自己表明タグ付け」についてもみていきます。

先日電車で座っている時、「マタニティーマーク」をつけている女性に席を譲ることがありました。しかし、「マタニティーマーク」をしている人の助けになりたい気持ちは大きいのに、そのことを表明して席を譲ることに少し勇気が必要だった自分がいたのです。そのことが情けなくも、もしかしたらそういう人が自分以外にもいるのではという発見もありました。

そんな気持ちの中見つけたのが「逆マタニティーマーク」です。これはマタニティーマークのデザインに、「席ゆずります 声かけてください」という一言が添えられたキーホルダー。作成者は一般のサラリーマンですが、Twitterでトレンド入りもしていました。Twitterの投稿を見ると、「普段席を譲るか躊躇してしまうけどこれなら自分も譲れそう」「早速買った」等の好意的な意見が多く、さらには「妊婦さんに限らず、困っている人には席を譲りたいというメッセージを込めた「逆ヘルプマーク」を自作してみた」という人までいました。人の助けになりたいことを表明するツールに少なからず需要があることが分かりますし、一般の方から自然発生的にこのような「自己表明タグ付け」のツールが生まれている点も興味深いです。

他の例で少し前に話題になったのはある百貨店がスタッフ向けに作成した、自分が生理であることを伝える「生理バッジ」。生理中であることを伝えることでスタッフ同士の気遣いを促すことが目的です。この取り組みはSNSで賛否を呼びましたが、「病気ではないけど、自分の今のコンディションやステータスを周囲の人に知らせる」という意味で、「自己表明タグ付け」の新しい試みだといえます。

最近会社員の方を中心に目にするようになったのは「SDGsバッジ」です。SDGsは2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発を目指した国際目標です。この活動に賛同する気持ちや、具体的に取り組む意思表明として企業が社員に配布したり個人で購入しているケースも見られました。また、少し前にはSNSで自分の写真のアイコンを虹色にすることで、LGBTを否定せず受け入れるという意思表示をするという活動も話題になり、多くの人が取り入れていました。こちらもネットの話ではありますが、ハッシュタグ以外の自己表明の形として習慣化する可能性があります。

以上いくつかの「自己表明タグ付け」の例を見てきましたが、「自己表明タグ付け」にはいくつかのパターンがあることがわかります。

①助けが必要であることを表明する
(例)マタニティーマーク、ヘルプマーク、認知症マーク 等
②助けを提供する意思があることを表明する
(例)逆マタニティーマーク等
③自分のコンディションやステータスを表明する
(例)生理バッジ等
④自分の思想を表明する
(例)SDGsバッジ、SNSのプロフィール写真等

自分がどんな助けが必要なのか。どんな助けを提供できるのか。どんな状況にあるのか。どんな思想の持ち主なのか。色々な人が手を取りながら助け合い、生きていく多様性の時代だからこそ、自分を表明する「自己表明タグ付け」はさらに拡がっていくのではないでしょうか。また、それに伴い様々なビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

◎「自己表明タグ付け」のビジネスチャンスの例
■スポーツジムが作る、「今ダイエット中なので食事に誘わないで!」Tシャツ。
■働き方改革を推進する企業が作る、育児や介護が特に大変な時に着用できる「今だけお仕事お手柔らかにしてください!」バッジ。
など。

私事ながら先週急遽妻が出張で不在にしており、1週間子供の送り迎えをしつつ、仕事やこのコラムを執筆していました。もっと頑張っている人はたくさんいると思いますが、今まさに「今だけお仕事お手柔らかにしてください!」バッジが欲しいです!!

鈴木 康司(すずき・こうじ)
統合プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2007年 博報堂に入社。
ヒット商品やヒット習慣には飛びつかずにはいられない、ドミーハー。好きが高じて、ヒット商品やヒット習慣を生みだせると良いなと思い日々奮闘中。休日は家でアイドルのDVDを見るのが好き(主にジャニーズ)。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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