THE CENTRAL DOT

人生100年時代の
キャリジョのサステナブルライフ
第1回 恋愛・結婚編

2020.01.15
#キャリジョ研

トレンド研究から見えてきた兆し

こんにちは、博報堂キャリジョ研です。私たちは、働く女性(キャリアを持つ女性)=「キャリジョ」たちの意識や行動を研究しています。そうした日々の研究の一つで、ジャンルを問わず最近のトレンド事象をいろいろ集めていて分析をしているうちに、あることに気づきました。

ファッションは、エフォートレスなアイテムが流行り、美容は美容医療など高級ドライヤーなどの高額投資をする傾向が出てきている。
情報は、作り込まない自然体の方が好まれ、ダラダラ見られるゆる~いコンテンツが受け入れられている。
家事スタグラマーをフォローして、おしゃれなだけでなく、役立つ掃除や収納などのテクニックを学んでいる。

これまでも「がんばりすぎない」ことは重要視されてきており、“ラク”や“ゆる”にシフトしている様子は見られましたが、投資や学習など基礎を整えるものにはお金や労力を使う様子も見られます。メリハリというとこれまでもあった考え方ですが、何のために少し「がんばる」のか?を突き詰めていくと、一時的なラク、安い、楽しいというメリットだけでなく、「長い目で見た」ときにラクであるもの、身になるものを求めているのではないか?という共通点を見出しました。
世の中全体として、人口分布やIoTや5Gといった通信環境が変化する中、年金制度の崩壊や待機児童、孤独死など社会問題が次々と取り上げられる現代において、人生100年時代と言われるほど長く「自分で生き抜いていかなければならない」という意識が高まっているように感じます。その中でも、特に平均寿命も男性より長く、ママになっても働き、「私」を持ち続ける女性たちが増えてきているからこそ、「長い目」を持って考える意識がより芽生えやすいのではないでしょうか。

サステナブルライフ=ゆるく、ながく、ここちよく生きる

こうしたキャリジョ研究を通して、今、そしてこれから、「ムリせず持続可能であることを選択する」キャリジョの意識を注目したいと思い、コラムのタイトルに「サステナブルライフ」とつけました。この意識は、エコやエシカルという社会テーマだけでなく、日常生活の非常に身近なテーマで起こっているということが面白い点で、具体的な内容をキャリジョになじみのあるテーマで5回に分けて取り上げたいと思います。
まず第1回目は、キャリジョにとって関心ごとの一つ「恋愛・結婚」について。サステナブルな恋愛・結婚とは、どういうことなのでしょうか?

キャリジョたちの関心ゴトの「恋愛・結婚」

キャリジョにとって、プライベートの中でも「恋愛・結婚」は関心が高いテーマです。男性と比べても「もっとよくしていきたい」領域として、より意識が高いことがわかります。

出典:「若い世代の働き方やリフレッシュの意識と実態に関する調査」(2019)

三高、三低から、「三共」へ

バブル期の女性がパートナーに求める条件に「三高(高学歴、高身長、高年収)」という言葉がありました。バブル崩壊後、女性たちの条件ハードルは下がっていき、その後、「三平(平均的な年収、平凡な外見、平穏な性格)」「三低(低姿勢、低依存、低リスク)」という条件が登場しました。そして、元号も令和に変わった今、女性がパートナー選択に求めることとは?
時代の流れや女性たちの定性意見をまとめ、私たちはそれを「三共」と置いてみました。金銭感覚が「共通」で、家事・育児を「共有」でき、価値観に「共感」できるという3つの「共」という意味を込めています。今のキャリジョたちは、結婚と恋愛は別物と捉える人も少なくありません。そして、マッチングアプリの利用率もどんどん上がり、恋愛の効率化が進んでいます。結婚相手には、周囲に自慢できることでも、一緒にいてただラクなことだけでもなく、「一緒に居続けられる人なのか?」を見るようになってきたと感じます。
「三低」の時点でも、「家事など身の回りのことを女性に依存しない」「仕事など安定的でリスクが少ない」など、お金や家事・育児など、結婚後の先の暮らしを見据えた項目が入ってきていますが、「三共」ではもっと積極的に「分かち合えるか」という考え方が強くなっています。目指す生活の多様化が進み、一つの物差しだけでは捉えきれなくなってきたため、「高い」「低い」という縦の尺度ではなく、「同じ方向を目指して共に歩んでいけるか」を意識した横の尺度が出てきたのだと思います。ここでは、良し悪しという概念もなく、合うかどうかが重要になってきますし、必ずしもぴったり「合う」だけでなく、「自分や相手の不得意を補い合える」「許容できる」というだいたいの生活像を描けるかが確認したいポイントです。

三共を求める背景とは

また、女性たちが現実的になってきた背景には、SNSを通じて様々な人の生活が見られるようになってきたことも大きく影響しているように思います。キャリジョ研では「俯瞰志向の高まり」として分析していますが、友達や周囲の人だけでなく、芸能人もプライベートを発信する機会が多くなりました。たとえば、特別な日は家族みんなで贅沢するカップルもいれば、DIYなど工夫して家族みんなで楽しむカップルもいたり、仕事でお互い忙しくしつつ、食事の一工夫で、日々の生活の中で楽しみを見出すカップルもいたり。これまで見えにくかった様々な生活・家族パターンがわかるようになり、自分の目指したい生活も思い浮かべやすくなってきています。
あわせて、結婚・出産しても働き続けるつもりの女性も増えているので、その後の生活をどれだけ「独身時代との変化を少なくできるか」も気になる点だからではないでしょうか。完全に変えないことは難しいにしても、仕事をがんばりたい姿勢を応援してくれたり、飲み会に参加したり、友人と会う時間をつくってくれたり、まさに持続可能な生活を志向するからこそ、自分と同じ目線でいてくれ、一緒に分担できるかという「共」の部分が重視されるようになってきているのだと感じます。

次回は、情報収集や発信をテーマとして、キャリジョたちの「サステナブルライフ」を覗いてみたいと思いますので、お楽しみに!

松井 博代
キャリジョ研 リーダー
統合プラニング局

2008年博報堂入社。マーケティング担当として主に女性ターゲットの新商品開発、ブランディングに従事。買物研究所でのショッパーマーケティングや買物研究を経て、2019年より行動デザイン研究所でデジタル時代の購買行動も研究中。2013年に社内プロジェクト「博報堂キャリジョ研」を立ち上げ、20~30代の働く女性(=キャリジョ)についての考察・発信を行っている。趣味は海外旅行で、今まで旅した国は34カ国。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事