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博報堂のソーシャルアクション
Vol.2 ロコモチャレンジ!

2019.11.21
#CSR#SDGs
*本活動は、SDGsの17の目標と169ターゲットにおいてSDGs3.8、4.7、17.17に貢献しています。

「ロコモ」とその予防法を、全国民に届けるためのコンソーシアム。

「立つ」「歩く」といった移動機能が低下した状態のことを「ロコモ( ロコモティブシンドローム)」と言います。日本整形外科学会と博報堂は「ロコモ チャレンジ!推進協議会」を2 0 1 0 年に立ち上げ、進行すると介護が必要になるリスクが高くなるロコモを予防するための正しい知識を普及・啓発するための広報活動を行っています。2 0 1 9 年3 月時点で、本活動の認知度は4 4 . 8 % にのぼります。

左: 二荒雅彦/博報堂 PR局 中央左:野口真理子/博報堂 テーマビジネスデザイン局
中央右:大江隆史 /日本整形外科学会 専門医  右: 室健 /博報堂 グローバル統合ソリューション局

健康のための新しい概念を、日本に定着させたい!

― ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は、医学界にとっても新しい概念だったと聞いています。その発端を教えてください。

大江(日本整形外科学会): ことの始まりは、2007年でした。私が所属する日本整形外科学会の当時の理事長であった中村耕三先生が「高齢化・長寿化によって、整形外科が扱う病気や疾患にも影響が出てきている。これは、新しい概念を提唱すべきタイミングではないか」ということをおっしゃったんです。確かに、現場の感覚としても納得できるところがありました。と言うのも昔は、整形外科に来る人といえば、交通事故やスポーツで怪我をした、若い人たちが多かったのです。ところが2000年頃から、加齢にともなう患者さんが増えてきたなという実感がありました。若い人は、怪我を治せばそれで終わりです。ですが高齢者は、悪くなった部分を治しても、またすぐ別の疾患で通院する必要が生じてしまうのです。そのイタチごっこへの徒労感と言いますか…。事後的に治しているだけでは、根本解決にならないということを確かに感じていました。そこで、骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、「立つ」「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態を「ロコモティブシンドローム」と名付け、その予防に向けた啓発活動を日本整形外科学会として取り組んでいこう、ということになったのです。こういった普及活動は、学問的な活動とリンクしていなければいけません。また、打ち上げ花火で終わるのではなく、持続可能な活動にする必要があります。そのための座組として、2010年に日本整形外科学会と博報堂で、ロコモ チャレンジ! 推進協議会(以下、協議会)という任意団体を作りました。そこから、医学界の外を巻き込んだ普及活動がスタートしたのです。

室(博報堂): 協議会には当初、民間企業8社に協賛して頂きました。医学界と患者さんと民間企業、それぞれにメリットがある座組を作ることを目指したわけですが、我々としても新しい試みでしたから、試行錯誤の日々でした。

野口(博報堂): 今でこそ「コンソーシアム」という言葉を聞くようになりましたが、当時はその言葉に市民権がなかった。博報堂としても、きちんとコンソーシアムを作って運営したのは初めてだったと思います。

共創は、共通言語を育てるところから。

― ベースの概念も、座組も、初めてずくめでしたね。これは大変だったのでは。

大江: そもそも、共通言語がないわけです。学会が民間企業と一緒に何かをするのは、初めての経験でした。全くの異文化同士が集まって、とにかく始めなければということで、月1回2時間、必ず集まることをルールにしました。

野口: 議事録をとっていくわけですが、最初はもう、先生方が言っている専門用語が全く理解できなくて。

室: 基本的な行動指針も、やはり違いましたね。広告会社である私たちは、どうしても「広げる」ことを重視してしまいます。けれど医師の皆さんにとっては「正しく」広まることが非常に重要なわけです。これまで、普及用のパンフレットや、「ロコモ度テスト」といったコンテンツを生み出してきましたが、「正しさ」と「強さ」の両立を目指して、お互いの立場から毎回、真剣な議論を重ねました。

― ロコモという言葉は認知され、広報普及キャンペーンとしては大成功だと思えます。その成功の秘訣は何だったのでしょう。

野口: 月2時間と言いながら、実際は3~4時間をかけて、実質的で真剣な議論を繰り広げたことは重要でした。延べ100回以上でしょうか。議論は毎回、真剣勝負でした。予定調和はなく、一方で裏表も後腐れもない。そんな時間を先生方と一緒に過ごしていくうちに、私たちの間にも共通言語ができていったように思います。

大江: 厚生労働省が定める「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の項目に、ロコモを入れよう、という大目標ができたことも重要でした。10年に一度切り替わる国の方針にコミットしようと、メンバー全員が同じ目線を共有できて、ステージががらっと変わった感覚がありましたね。結果、「健康日本21」の項目の一つに、ロコモが選ばれました。これは実質的にも重要でした。というのも、「健康日本21」の項目には、自治体の普及義務が発生するからです。

高齢化問題への対応には、分野を超えた連携が欠かせない。

― その後の反響や今後について、教えてください。

二荒(博報堂): PR視点で言えば、「ロコモ」に注釈が必要なくなってきた、という事実はあります。当初はやはり、本文に「ロコモ」とでてくれば、脇に必ず「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは」という解説がセットでした。それが最近は、もうロコモだけで何も書いていない、という記事も増えています。

大江: 医師の間でも、ロコモというテーマが、共通の話題として話しやすくなってきたという感覚はあります。とは言え、予防が大事だと心から納得しているかどうか、整形外科医の間でもまだ温度差があるのも事実です。今後研究が進めば、例えば手術の効果をロコモ度テストで定量化するといったことも可能になり、手術を重視する整形外科医との連携がしやすくなるかもしれません。学会のインナーコミュニケーションは、引き続きの課題です。

野口: 実感としては、まだまだやれることはあると思っています。共創相手もこれから増えるでしょうし、テクノロジーという要素が加わって、さらに色々なカタチの普及活動が考えられますから。

大江: 「高齢化」の問題を扱うためには、整形外科医が整形外科の中で閉じていてはいけません。まず、他分野の医療との連携が必要です。また、医師だけでなく、企業や自治体など様々なステークホルダーと連携していかないと、この問題を扱いきれないと思います。そういう意味で、まだまだできることは沢山あります。

こちらのインタビューの他、博報堂DYグループの事例を「新しい幸せをみんなでつくろう! Hakuhodo DY Group SDGs Collaboration Book 2019」に多数掲載しております。ぜひ、上のリンクよりご覧ください!

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