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【チイキノベーション!】vol.11-地元愛を支えに、静岡茶の新しい価値を創造していく(静岡博報堂 岩﨑美咲)

2019.10.31
#地域創生
博報堂は、全国の各地域で、地域が抱えるさまざまな課題解決のサポートをおこなっています。その中心となっているのが、2015年に誕生した「地域創生ビジネス推進室」です。
本連載では、地域創生ビジネス推進室を中心に地域創生に携わるメンバーがリレー形式で登場、それぞれの活動内容や地域の魅力、大切にしている想いなどについて語っていきます。

11回目に登場するのは、静岡博報堂制作部の岩﨑美咲。地元静岡でも大いに話題となった「静岡茶ガールプロジェクト」を立ち上げた背景や、プロジェクト成功に欠かせなかったことなどについて聞きました。

地域創生につながる仕事がしたい!そんな想いで広告会社に就職

私が静岡博報堂に入ったのは2015年です。当初から制作部所属で、デザイナーとして勤務していました。とはいえそこまで社員数の多くない地域会社ですから、デザインだけではなく、コピーを書いたりCMの絵コンテを描いたりといったデザイナーの仕事の域をこえた業務も当たり前のようにやっていました。なので、幸いにも最初から、クリエイティブディレクター的な視点や考え方で業務を組み立てるという部分を勉強できていたように思います。実は行政の仕事でとあるラジオCMを手がけたのですが、そのコピーで初めてACCの賞をいただき、「私デザイナーなのに」とびっくりしました(笑)。でもアイデアを考えること自体が好きだったので、仕事は面白かったです。当時の師匠にあれこれと自分がやりたいことを言っては怒られ、それでも「だったらこういうやり方がいいのでは」などとアドバイスをいただきながら、いろんなことをやらせてもらえてきたのは本当にありがたかったです。

もともと大学でデザインを学んでいたのですが、デザイン会社ではなく広告会社を志望したのは、自分の故郷である静岡の地域創生につながるような仕事をしたいとずっと思っていたから。卒業制作でも地域の産品のリデザインをテーマにしたんですが、実際には、デザインした後、それを多くの人に見てもらい、伝えることが不可欠です。そのための施策を幅広く考えられる仕事として、広告会社を選びました。「地域に埋もれている、まだPRしきれていない良いものを探し出し、若い人たちに向けて素敵な形に編集し直す」――ずっとやりたかったそれを、今現場で実現できているのかなと思います。あと、実は私自身の実家がミカン農家なこともあって、一次産業や食品に関することに関わっていきたいとずっと思ってきたんです。

一般に知られていない、お茶の希少品種に光を当てたい!

静岡の名産品と言えばお茶ですが、県民にとっては当たり前すぎる存在で真新しさを感じられなかったり、若い人にとっては急須でお茶を淹れる機会自体が減っていることもあって、流通量が落ち込んでいることに課題を感じていました。そんな中、一生活者の感覚で土産店などを覗いてみたところ、「もう少しかわいいパッケージだったらいいのに」とか、「お茶を飲むという体験につながるような商品があれば」といったアイデアが浮かんできたんです。そこで、まず弊社内のお茶好きな女性社員数名に声を掛け、雑談のような形でしたが、私が感じていた課題を共有したところ共感してもらい、静岡の茶業振興を目的として立ち上げたプラットフォーム「静岡茶ガールプロジェクト」を立ち上げました。そのうち、メンバーの一人がお茶問屋である本山製茶の茶匠の女性にも声を掛け、「茶ガール」として一緒に魅力的な商品をつくってみようということになったんです。

まず行ったのは市場調査です。お茶の振興協会や茶業会議所、そして農家さんといった各所へのヒアリングを行ったところ、静岡では山間の地形を活かして20種類以上のさまざまな品種の茶葉を生産しているにも関わらず、実際の市場では「やぶきた」という1品種が8割のシェアを占めていて、香味の画一化、産地の無個性化が生じていることを知りました。収穫量の少ない個性的なお茶は「残品種」と呼ばれ、市場に出る機会もなく、生産者が自分たちで消費しているんです。そこで、そんな希少な茶葉の数々に光を当て、静岡でつくられるお茶にいろんな味があることを広く伝えられないだろうかと考え、考案したのが、8種の残品種の茶葉を飲み比べできるティーバッグセット「8茶くらべ」です。8種類の残品種は、メンバーに加わってくれた茶匠の方と農家さんを回り、選定。パッケージも、店頭に並べると茶畑に見えるようなデザインにし、一般のお客さんに少しでも興味を持ってもらえるようにしました。その後は自主プレです。各所に商品を持っていき、プレゼンをして回りましたが、そんな中で私たちと同じように「お茶をもっと若い人に楽しんでもらいたい」という想いを抱いていた小山園さんの賛同を得て、専属で販売網を提供していただくことになりました。

またPRの面でも、リリースを出した後に地元メディアを数カ所説明に周ったところ、発売当日の試飲会イベントに県内テレビ5局、新聞社やラジオ局が取材に来ていただき、広告換算値にして2200万円のPR効果を記録。もともと持っていた地元メディアとの強固なつながりを活かし、効果的なPRを実践することができました。そして今年、公益財団法人世界緑茶協会が主催する「世界緑茶コンテスト2019」と、「おもてなしセレクション2019」において金賞を受賞することもできました。味や品質はもちろんですが、パッケージや残品種を活用するというバックストーリーも含めて評価してもらった結果だと思います。これを機に、もっと多くの方に残品種の魅力を知ってもらえたらと思います。

プロジェクト成功を支えた広告会社ならではの戦略、キーマン、そして地元愛

魅力的な商品をつくったら、どんなパッケージにしたら多くの人が手に取ってくれるか。どういったコンセプトのもと、どういったリリースを出せば、メディアが取り上げてくれ、ひいては一般の人に興味を持ってもらえるか――。そこはまさに、広告会社として普段の業務の中で培ってきたノウハウが大いに活用できた部分でした。たとえば“8種の飲み比べができる”という体験自体が、生活者にとっては一つの価値になるということ。残品種を活用することも、社会全体の価値になりうるということ。そうした部分もきちんと仕込んでおくことで、新聞などのメディアも記事として伝えやすくなる。そのあたりは、広告会社の発想の強みかなと思います。

それから、何より欠かせなかったのは、キーマンとなる「人」との出会いです。お茶に限った話ではないと思いますが、地域の伝統産業に対し、外部から「何か新しいことをやりましょう」といっても、地元の人からすればどうしても腰が重くなるものだと思います。でも時代は変化しています。昔ながらのいい部分はもちろん大切にしながらも、違った視点から地元の産業を見つめ直し、何か新しいことを仕掛けていく必要もある。そこに理解を示してくれた本山製茶の茶匠の方や、小山園さんと出会えたことで、この「静岡茶ガール」プロジェクトをぐっと前に進めることができました。

広告会社という立場ではありますが、私自身の根底にあるのは地元愛です。そして、今回プロジェクトに賛同し、力を添えてくださった方々すべてに共通するのは、やはり地元に対する想い。何よりこの地域が好きだから、その大事な産品であるお茶をもっと素敵な形に見せて、その素晴らしい価値をより多くの人に伝えていきたい――。茶ガールはじめ、業種を超えてこのプロジェクトに関わってくれた人たちとは、そんな地元愛でしっかりとつながれた感じがしています。

今後も静岡のお茶の魅力をたくさんの人に伝えていけるよう、さまざまなアイデアを準備中です。広告会社である私たちならではの視点から、フラットに「面白い!」と思えるような新しいお茶の楽しみ方を、これからも提案していけたらと思っています。

■プロフィール■

岩﨑 美咲
静岡博報堂制作部

2015年、静岡博報堂にデザイナーとして入社。
現在はデザインに限らず、コピーやCM制作など幅広く担当。
地元静岡のためになる仕事を中心に、クライアントの課題、地域の課題に向き合っています。
コンセプトからネーミングやパッケージ、PRまで関われる商品開発など…広告の枠を超えた領域の仕事にも興味が増す今日この頃。生まれ育った大好きな静岡を、クリエイティブの力でもっと元気にしたい!そんな熱い地元愛を胸に、地域の新しい可能性に挑戦中。
【受賞歴】ACC地域ファイナリスト優秀賞、ピンクリボンデザイン大賞優秀賞、静岡県CMグランプリ優秀賞、世界緑茶コンテスト金賞など。

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