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ヒット習慣予報 vol.93『ヨソモノ報連相』

2019.10.29
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの植月です。
今年は10月になっても暑い日が続いていましたが、だんだんと肌寒くなり、秋らしくなってきましたね。
私は“食欲の秋”に乗じて、旬のおいしいものを食べては友達に送りつけて自慢する日々を過ごしています。

今回は、そんな風に何かを報告したり、連絡・相談したりする報連相をテーマとした「ヨソモノ報連相」を取り上げます。
報連相という言葉は、どちらかと言えば学校や会社などの公的コミュニティで使われることが多いです。そのため、報連相の対象となる相手は、友人・同僚・上司などの知り合いが前提とされてきました。一方で、最近は、あえて自分のことを知らない相手に、ちょっとした出来事を話したり、相談をしたりすることが増えてきています。

イメージしやすい例としては、SNSでのつながりが挙げられます。
「#○○好きな人とつながりたい」等のハッシュタグを用いて、好きな趣味を通じて見知らぬ人とつながることは、もはや珍しいものではなくなってきました。特に若い層では、SNSで見知らぬ人とやりとりしたことがある人は、6割にものぼります。

今回は、具体的にどんなところでどんな人に相談しているのか、いくつか事例を紹介させていただきます。
まずは、SNSを通じた「インフルエンサー」への報連相です。
最近では、インフルエンサーの方が自ら質問お答えタイムと称して、フォロワーに質問を募る機会があります。そこで、恋愛相談や人生相談など、パーソナルな出来事を打ち明けてアドバイスを求める人が増えているのです。また、インフルエンサーの方からの呼びかけでなくても、ダイレクトメッセージで積極的に相談事をする人もいるそうです。

次に、スマートフォンやスマートスピーカーを通じた「人工知能」への報連相です。
テクノロジーの進化により、人工知能も簡単なコミュニケーションであれば違和感なく行えるレベルにまで性能が上がりました。それを利用し、今日あった出来事を報告してちょっとした会話をする人や、暇なときの話し相手として利用する人が出てきました。実際にそのような使い方をしている友人によると、まだパターン性を感じる返答が多く、人間ほどの柔軟性は感じられないようですが、一人暮らしの寂しさを紛らわすときにはちょうどいいとのことでした。

他にも、マッチングツールで出会った「一般人の赤の他人」への報連相があります。
具体的には、おっさんレンタルなどのサービスで出会った相手が挙げられます。この場合は、実際に相手と会って、悩みごとを聞いてもらったり楽しく会話したりして過ごします。お金がかかる場合とそうでない場合両方ありますが、どちらにしても返答に対してリアルな人のぬくもりを感じたいという層から需要があるようです。

では、なぜ「ヨソモノ報連相」は増えつつあるのでしょうか?
理由は大きく2つあると考えられます。
1つ目は、忖度社会です。特に若い層では、相手にどう思われるかを気にしやすい傾向があります。そのため、知り合いには相談しにくい内容でも、ヨソモノであればどのように思われてもいいという意識が働き、気軽に話せるのだと考えられます。

2つ目は、マッチングアプリの一般化です。以前は“出会い系”と呼ばれて敬遠されがちだったマッチングアプリが普及し、知らない人とコンタクトをとったり会ったりすることが珍しいものではなくなりました。それにより、見知らぬ人とコミュニケーションをとることに対するハードルが下がったことも大きいかもしれません。

最後に、「ヨソモノ報連相」のビジネスチャンスとしては下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?

◎「ヨソモノ報連相」のビジネスチャンスの例
■100人の恋愛マスターの知見を機械学習した「恋愛マスターロボ」の相談室をつくる。
■インフルエンサーが「握手会」ならぬ「相談会」イベントを開催する。
■子どもになった気持ちで、古民家の縁側でおばあちゃんとお話しできる「レンタルおばあちゃん家」というサービスを開発する。
など。

私も、リアルの友達に一方的においしいものの写真を送りつける飯テロを続けた結果、友達を失いつつあるので、そろそろ「ヨソモノ報連相」に乗り換えようかと思っています。
「リアル報連相」とうまく使い分けできたら、人生がなんだかちょっと豊かになる気がしています。

植月ひかる(うえつき・ひかる)
統合プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2017年 博報堂に入社。
3年目のマーケターとして、社会の荒波に揉まれながら、社会に新たな潮流をつくることを夢見て奮闘中。最近の考えごとは、ほぼ「牡蠣食べたい」です。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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