THE CENTRAL DOT

日本トコトコッ/#26 測候所

2019.06.27
#地域創生

どんな記号だったろう
社会か、地理か、山登りか。
そういえば昔紙地図をよく見てたけれど、
今となっては全くもって思いだせない

海のそばだよな、きっと

最近できた、いい測候所らしい
そんな専門家のことばに背中を押され
いつも通う海岸のまちから、電子地図を広げ
少しだけ足を伸ばしてみる

地図に残るしごとが気になって、もう10年
その前は、
カタチのないしごとを約10年
カタチをつくるしごとをほぼ10年
振り返ればだいたい1/3ずつ

いつもの審議会を終え、帰路とは反対の電車に乗り1時間ほど
海近の駅に降り立った

<写真1|駅から眺める海>

どこかで見たこの景色
太平洋側なのに山陰のとあるエリアとシンクロしはじめる
日本は海だ
その海岸沿いは、美しいところが本当に多い
この奥行きと広角さがたまらない

改札を抜け
こじゃれたお出迎えバスに乗り込み、
ゆらゆらと山道を上がっていく

<写真2|送迎バス>

最近オープンしたらしい
そんな測候所がほんとうにあるんだ
既”聴”感のある案内フレーズを聴き流しながら
測候所新設は最近の気象異常のせいかな〜
などと適当な思いを巡らせているうちに、ひょっこり現地に辿り着いた

ここにも案内役の方が
お揃いの法被を纏い、そこここにいらっしゃる
少しテーマパークのようでもある
らしさとかおもてなしとか、その意味も変容して随分と経つ
いつの間にか、いろんなことがどんどん可視化され、魅せる化され、
時に既”視”感あるスタイルになっていく

もう少しお登りください
声に背中を押されながら曲がりくねった坂道をいくと
大きな門構えが眼に入ってきた

<写真3|門構え>

武家屋敷か?
冬至の用意をしているんだそうだ
そうか日時計
夏至冬至、春分秋分
陽に想いや奇跡を重ね、一直線上に人工造作物を配置する
軸線こそ都市計画のコア
時に日本人は、やはり凛としている

その先を超えていくと期待通り視界が開け
日本人好きの心地よい見晴らし台になっていた

<写真5−1〜3|開放感あるエントランス>

エントランスで心地よい接客を受け振り返ると、
馴染み深い風景に
予想外の建物群
想定外の超ロングな一直線の直方体が鎮座し、海を突き刺している
穏やかな空気を切り裂く、鋭角なる直線
心も抉る自然と人工のアンビバレントな装い

<写真6−1〜4|直方体>

あの建築家に聴いたことを思い起こす
Kさんにとって直線とはなんですか?曲線とはなんですか?
どよめく会場内の空気を穏やかな口調で元に戻していった語り口のなかに、
その応えは内包されなかった

夏至光遥拝100メートルギャラリーと名打つこの直方体には、嫌が応にも作者の強い意志と地場を感じずにはいられなかった
張り付くように洞察した後、少しふんわり歩いて広場的スペースへとすすんでみる

石を並べる
竹を編む
生鉄を組む

読点を感じる
陰影が語り出す
錆びが息づく

ここちよさは
質感が一定・同じがないこと
乱れなんだな
今更ながら、そんなことに気づく

<写真7−1〜4|石肌・止め石・錆びが活きる・新結合>

小高い山の上から、斜面に沿って散策路があり、ところどころにポケット広場が、家屋が、アートが、点在する
言葉は自身を箱に閉じ込めようとする
測候所から得る自分のメタ認知は、この場の事実とかけ離れ知覚を削いでいく
場は場として全身で受けとめる、そこからなにかが生まれるか否かである
勝手な解釈をしながら、気づけば何時間もこの場に吸着している

<写真8−1〜5|家屋1〜アート3>

時間が過ぎるのが早いと感じるのは
向き合う質量が上がり・そこに没入できているから
いつもぽかんとしている私を妙に哲学的な気分にさせてくれるのは、
作者の意志が深く内在し
私の非認知を
雑踏たる日常に
刺激と喝をいれてくれているからなんだろう

おなじものをつくる
便利で快適で効率的

おなじようにつくれない
不便で手間で魅力的

ひとは自由で奔放
ある種身勝手でもある
トコトコッと歩んできた道に、なにが残っているんだろう
地域はゆさぶられ、向かう先が見えないようだ
ここは圧倒的なベクトルを定常的に指し示し続ける

焦点を決め
絞りをあわせ
光をあつめ

地形を弾かしたひとのいとなみ
縁側のようなところだった
自然と人工をそこに置く 繋げる

<写真9|彼方に>

写真家がつくったんですよ
待合棟に戻り、案内役の方々のお話を伺う
へ〜っ、どおりでフォトジェニック
たくさん内から語りかけてきてくれた

写真・彫刻・インスタレーション・演劇・建築・造園・執筆・料理

領域外のひとが、多様な活動家が、ふわっとなにかを革新していく
乱反射を受け自らを診る、近隣を再認識する、遠くを思い馳せる
ひとのいく末を照らしてくれる

ここにあるのに
デジャブを感じさせる
地形を活かしているのに
安々と裏切っていく

こういう時を思考を乱れを消す場所が、地域にも必要なんだな

<写真10|鳴り物>

辺りいっぱいに太鼓の音が響いた
身を任せることの大切さを教わりながら、
まだまだ日本人は凛としていける
そんな血潮が立ち上がってきた

<写真11|夕暮れの海>

そして、なかなか思い出せなかったその作者である写真家は
自宅書棚の左斜め上部に生体し佇んでいた

つぎは、バララットです

にっぽんトコトコッ
トコトコカウンター* ただいま301トコトコッ
  • トコトコカウンター:2016年4月より訪れた場所ののべ数

江之浦測候所
https://www.odawara-af.com/ja/enoura/
*見学は完全予約制となっております

地図記号(国土地理院)
http://www.gsi.go.jp/KIDS/map-sign-tizukigou-h14kigou-itiran.htm

深谷 信介(ふかやしんすけ)
株式会社 博報堂
博報堂ブランドデザイン副代表、スマートx都市デザイン研究所所長、地域事業統括局兼務
富山市政策参与、総務省地域人材ネット地域力創造アドバイザー、千葉県地方創生総合戦略推進会議委員、神奈川県茅ヶ崎市景観まちづくり審議会委員、島根県雲南市地方創生アドバイザー 他
名古屋大学未来社会創造機構客員准教授、茨城大学社会連携センター顧問 他

メーカー・シンクタンク・外資系エージェンシーなどを経て、博報堂入社。
事業戦略/新商品開発/コミュニケーション戦略等のマーケティング・コンサルティング・クリエイティブ業務やプラットフォーム型ビジネス開発に携わり、都市やまちのブランディング・イノベーションに関しても研究/実践を行っている。

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