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「轰趴館」= 若者に人気の新しい遊び場【アジア生活者のリアル Vol.4:中国篇】

2017.03.31
#中国#生活総研

博報堂生活綜研(上海)は、株式会社博報堂の独資子会社として2012年に上海に設立された、中国の博報堂グループのシンクタンク組織です。日本で蓄積してきた生活者研究のノウハウを生かし、中国における企業のマーケティング活動をサポートしていくと同時に、これからの中国の新しい暮らしのあり方を、中国現地で洞察・提言しています。その活動の一つとして、中国の生活者についてレポートします。

最近、中国の都市部では、若者が集う場所として、「轰趴館」(轰趴(ホンパー)は、英語Home Partyの当て字読み)というレンタルルームサービスに人気が集まっているようです。利用者はさまざまですが、会社の同僚との飲み会の場所として利用しているケースもあれば、複数世帯の親戚同士で集まる場所として利用しているケースもあります。また会社の研修やオフサイトミーティングの場として「轰趴」を利用している企業も増えている様子です。ネットで検索すると、上海エリアだけでも800を超える数の店情報が上がってきます。また上海のみならず、北京、広州、蘇州、成都など他の先進都市部でも、同様の状況が起きているとの報道がありました。

「轰趴」のダイニングルーム

先日、利用経験者である会社の同僚に話を聞いたところ、自分がそれまでイメージしていたホームパーティーとは、ちょっとスタイルが異なることが分かりました。「轰趴」と言われている場所は、個人経営者が運営している場合が多いようです。家主が自宅スペースを単に貸し出すだけではなく、そのスペースを拘りや遊び心を持って作り込んでいる方もいます。一例をご紹介しますと、メゾネットタイプの自宅マンションを全面的に改装し、個々の部屋に利用目的に合わせた設備や道具、備品を用意して、エンターテイメント施設として提供している本格派のオーナーもいます。

その家の中に入ると、大画面で楽しめるシアタールームから、貸衣装を楽しめるコスプレルーム、麻雀、テレビゲーム、書斎など複数のエンターテイメントを楽しめる部屋まで様々な部屋が並んでいます。パーティーの参加者が自分の好みに合わせて自由に遊ぶ場所を選んで、仲間と一緒に自分達の時間を存分に過ごすことができます。一見団体行動のように見えるホームパーティーですが、実は参加者が複数のグループに分かれて楽しんでいるといえます。まるでテーマパークを訪れているように、参加者が好きな時に好きな内容を楽しむという感覚です。

「轰趴」のエンターテイメント部屋:シアタールーム・コスプレルーム・麻雀ルーム・TVゲームルーム

「食べて、飲んで、騒ぐ」という従来型のホームパーティーにちょっと物足りないと感じ始めている中国の若者が、どんどんと新しい消費スタイルを求めています。別の生活者が自らの資源(自宅)を開放し貸し出すことで、そのニーズに答えようとしています。またネットインフラの整備により、生活者同士の間でニーズと供給が簡単に繋がることが可能になりました。IT技術の進化によって、生活者同士の間で日常的に行われている「シェア経済」という事象が、中国でも着実に増えていると実感しています。それは利便性、経済性への追及という消費ニーズに答えるだけでなく、生活領域のバリエーションの広がりと消費の楽しみの創出にも確実に影響を与えているといえます。「轰趴」(ホームパーティーのレンタルサービス)は、あくまでもその一例に過ぎないと思います。

鐘 鳴(ショウ メイ)
博報堂生活綜研(上海) 主席研究員/総経理

1998年 博報堂C&Dにコピーライターとして入社
2002年 博報堂に転籍。マーケティングプラナーとして自動車、嗜好品、飲料、化粧品等、幅広い業界のプラニングに携わる
2012年 博報堂生活綜研(上海)の設立とともに上海に赴任。各種研究、講演、ブランドコンサルティング業務などの領域で活動
2016年 博報堂生活綜研(上海) 総経理

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