

博報堂Woman Wellness Program安並まりやの進行で始まったSession1には、クレアージュ東京レディースドッククリニック婦人科顧問大島乃里子氏、テレビ東京制作局クリエイティブ開発チーム部長チーフプロデューサー工藤里紗氏、博報堂Woman Wellness Program成重深愛が登壇しました。
最初のセッションでは、博報堂Woman Wellness Programが全国1万人を対象に行った「女性の人生で関わりの深い15の不調・疾患についての実態調査」の結果について、成重より解説を行いました。
そこで明らかになったのは、現在PMS・PMDD、更年期、子宮内膜症、乳がんなど15の不調・疾患のうちいずれかに悩まされている人は約半数、過去悩まされた人も含めると8割にのぼること。
特に20~40代において多い不調(PMS・PMDD、月経困難症・月経過多、片頭痛)と50~70代において多い不調(骨粗しょう症、認知機能低下)があり、その二つの山の間に更年期があることから、女性の「不調山脈」として示しました。
続いて、不調を経験する女性の半数以上はケアアクションを投じており、特にメンタル起点の心がけや、食生活・睡眠環境の改善といった生活改善による対処の割合が高いという結果を紹介。さらに、骨粗しょう症を除いて医療機関受診率が2割程度にとどまっている理由として、重要性を認識していないケースや対処への諦めが見られることを指摘しました。最後に、骨粗しょう症以外の主要な不調・疾患において、周囲や社会からのサポートがなかったとの回答が6割を超えており、特に年齢が上がるにつれサポートが得られにくい傾向が見られたと報告しました。
クロストーク最初のテーマは、「女性特有の健康課題で『変わったこと・変わらないこと』」。
産婦人科医の大島氏は「変わらないのは女性の身体そのものです。一方この20年で女性の健康課題領域が学術的にも大きく扱われるようになりました。専門医制度も始まり、サポート体制がつくられ始めています」と話しました。続いて工藤氏はメディアの視点から、「テレビメディアでは90年代後半頃から少しずつ女性の健康課題が描かれ始めました。いまは誰もが見る番組でも話題になりますし、ネットで大量に情報を入手できるようにもなりました」と語りました。しかし、情報が増えたからこその課題があるとも工藤氏は指摘します。「一方で関心が高く知識がある人と、専門的な情報に触れる機会が少なかった方々との格差が広がっているのが現状です。メディア側としては、後者の人たちもなるべく自分事として捉えやすいよう、丁寧に情報発信するよう意識しています。」
続いてのテーマは、「医療機関を受診するハードルをどう下げるか?」。
ここで大島氏は医療機関以外の受け皿として「地域の検診」を挙げ、相談のきっかけにできるはずと話しました。またかかりつけ医は必ずしも持つ必要はなく、検診を通して地域の医療機関と“ゆるく”つながっておくことを勧めました。これに対し工藤氏は、メディアを通じて専門家が受診を勧めることの効果を実感しているとし、「テレビなどのメディアが専門家と連携して発信を続けることが、受診を迷っている方の背中を押し、心理的なハードルを解消していく一助になり得ると考えています。」と語りました。
クロストーク最後のテーマは「“不調山脈”を歩む女性に向けてサポートできること」。大島氏は医療従事者の立場から、「女性ホルモンの状況で体調が左右されることを医療者もしっかり認識すべき」と提言。工藤氏は「メディアとしてできるのは情報を知らせること、そして『我慢を強いてしまう社会の雰囲気』を見直し、誰もが声を上げやすい環境づくりを後押しすることです。」と語りました。
最後に、モデレーターの安並が「企業も含めて、知識を広めたり相談のきっかけづくりを進めていけたら」と締めくくり、それぞれのアクションの重要性が明らかになりました。

博報堂Woman Wellness Programの杉本奈穂、児玉理紗がモデレーターを務めたSession 2では、立命館大学産業社会学部准教授の藤嶋陽子氏、kelluna.代表でコラムニストの前川裕奈氏両名をゲストに迎え、「ルッキズム」についての生活者意識やその課題に迫りました。
まず杉本が、「ルッキズム」に関する生活者の意識を調査したデータを報告しました。
調査データからは、「ルッキズム」の認知度は年代が若くなるほど上昇すること、対象を「顔の造形」とする回答が突出して多いことなどが明らかになりました。特に若年層は、「ルッキズム」によって起こっていることとして、「可愛い・美しいと判断される基準の上昇」「良い見た目であることへのプレッシャー」「見た目のために多大な努力やコストをかける傾向」などを認識しており、自分のなかで外見についての悩みを深め、つらく感じてしまう傾向があると述べました。
また、10–70代全体の調査データからは、外見を磨くための行動(生活習慣の改善、肌や髪のセルフケア、サロンでのケアなど)を行った人はポジティブな気持ちに、ネットなどでの外見に関する情報収集を行った人はネガティブな気持ちになる傾向も見られたと説明。最後に、「ルッキズム」が抱える課題を是正していくためには、「外見についての個々人の考え方や価値観の変容」「ルッキズムが引き起こす(心身の不調などの)問題の周知」に効果があると感じる人が多いと述べました。
これを受けて、20代の児玉は次のように語りました。「SNSなどで美に関する情報に触れる時期が若年化しており、かつ骨格など簡単には変えられない美の基準が増えていると感じます。外見を磨くための行動を起こした人がポジティブな気持ちになれたように、自分を大切にする気持ちとつながれば美がよりよいものになるはずです。」
クロストークでは、まず「ルッキズム」の問題点について議論が交わされました。藤嶋氏は、ルッキズムの定義と課題について次のように説明しました。「ルッキズムとは、画一的な美の規範に縛られて、それを体現するプレッシャーを感じたり、その基準と照らして自分や他者に対して価値判断を下したりすること。心身の健康を害するまで美しい容姿を追い求めてしまうことがある点が課題と言えます。」これを受け、前川氏は「誰もが無意識にルッキズムをやってしまったことがあるはずで、ルッキズムは皆が当事者として考えるべき社会課題だ」と切り出しました。さらに、「女性は男性と比べて、幼少期から容姿が評価基準として重視される傾向にあり、それが心身の健康にも影響しています」と話しました。
続いてのテーマは、「ルッキズムの問題点を改善する有効策は?」です。
藤嶋氏は、ダイエットや整形をエンタメコンテンツとして消費する状況を危惧しているとし、「他人の身体は他人のものであり、介入すべきではないという考えを持つことが大事」と話しました。前川氏は、個人ができるアクションとして、「まずは日常でルッキズムに遭遇した時のモヤモヤを言葉にして発信していくこと。ルッキズムの問題点に気づき、考え続ける人が増えることが一番の近道だと思います」と話しました。
議論の締めくくりに、杉本が「ルッキズムの原因が、社会・文化・歴史に深く織り込まれて何か一つには特定できないからこそ、私たちはまず、目の前の商品・サービスや関連するメッセージを世に出す際に、それぞれのお客様に対して美の規範のプレッシャーや苦しみをもたらしていないかを深く考えることが重要なのではないか」と述べると、前川氏は、「商品や事業を通して、つくり手が込めた想いは伝播すると思っています。そうして共感する仲間が増えることで社会は変えていけると思う」と力強く語り、セッションを終えました。

Session3には株式会社CRAZY執行役員事業創造統括 マネージングディレクターの吉田勇佑氏、ハピキラFACTORY代表取締役の正能茉優氏、博報堂Woman Wellness Programの白根由麻、瀧川千智が登壇。博報堂キャリジョ研プラスが行った調査をベースに、「女性も男性も多様な選択ができる社会にするには」をテーマに議論が展開されました。
冒頭、瀧川より「結婚」に対する意識の変化について、博報堂キャリジョ研プラスが実施した調査結果を提示しました。生涯未婚率はここ30年で急速に上昇し、結婚してもしなくても経済的な自立や自分の時間を求める女性が8割、さらに「結婚=妊娠出産」とは限らないとする人が8割にのぼるという結果を紹介。
特に注目すべきは、博報堂キャリジョ研プラスではかつての「3高」に代わる価値観として、共通の金銭感覚、共有できる家事・育児、共感できる価値観の「3共」を求める傾向があると話しました。「子育て・仕事」については家事育児分担を希望する声も多く、男性育休については現在、20代の3人に1人が1カ月以上の育休を取得していること、「仕事意識」については、女性はキャリア意識も高く仕事に意欲的で、4割を超える女性がリーダーになりたいと積極的であること、キャリアの積み上げ方は一本道の「はしご型」から多様な経験を積む「ジャングルジム型」へと変容していることなどを紹介しました。
続くクロストークでは、元博報堂社員で一児の母でもある正能氏が、「私は育児中の今も、パラレルキャリアという選択肢や周囲の支えに助けられ、自分の働き方に納得しています。出産や育児といったライフイベントは、キャリアの中断ではなく、視野や価値観を更新する機会。多様な働き方を望む人がいることを前提に、個人の努力のみに任せるのではなく、ライフイベントと仕事を両立できる仕組みを企業や社会も整えていくべきです」と提言しました。
一方、第2子誕生時に100日間の育児休暇を経験した吉田氏は、「妊娠出産育児期間を種に次のステップにつなげることもできる。そういうライフイベントを経験したからこそパフォーマンスが上がる傾向もあるのです。企業は個人の変化と向き合い、互いのハッピーをいかに掛け算するかという発想が必要です」と話しました。
続いて、「ライフイベント×キャリア」をかなえるための会社での取り組みをうかがったところ、吉田氏は「当社は子育ては偉大な仕事であると定義し、産休に入った人を“39(サンキュー)”と名付けた組織内に表示している」と紹介。またCHO(Chief Happiness Officer)というハピネスにコミットする役員が産休前や復帰前の社員に伴走する仕組みや、個人の人生の目標を仕組みに落とし込んだ人事制度について紹介しました。
正能氏は、個人ができる工夫として“宣言すること”を挙げ、「家族にも上司にも、具体的なキャリア目標、そして望む働き方や背景を明確に伝えています。いわば、限られた時間で最大限成果にコミットする宣言ですね。AIを活用し、効率よく成果を出せる時代のおかげで実現できつつあります」と話しました。
最後に、「多様な選択肢を応援するために事業やサービス、個人ができることは何か」という問いが投げかけられました。
正能氏は、「まずは覚悟です。ライフイベントと仕事をどういうバランスで大事にしたいのか。その上で、宣言し協力してくれる人を探す。さらには、当事者として困り事に声をあげ、不満を課題化して諦めず発信し解決の道筋を探り続けること」が大切だと語りました。吉田氏は、「会社や家族の関係において、寄りかかりあえる相互依存関係をつくりやすくすること」を挙げました。同社では入社時に、自身のこれまでの人生や「これからどう生きたいか」をプレゼンテーションする機会を設け、共に理想の人生を歩む意識を醸成しているほか、研修でも互いの関係性づくりを重視し、いかに社員の幸せを事業にリターンできるかを考えているといいます。
セッションの締めくくりとして、正能氏は「覚悟は共有したうえで、貸し借りの意識を持ち、“今はごめん。でも互いに同じ北極星を見ているし、この借りは必ず返す”と言い合える社会がハッピーなのではないでしょうか」とメッセージを送りました。吉田氏も、「人生のさまざまなライフイベントに対してどう捉え、いかにシェアするかが肝要。自社の取り組みを社会にも広げていくという決意が深まりました」と語り、熱気の中でセッションは終了しました。

イベントを締めくくるKeynoteに登壇したのは、昨年第1子を出産したお笑い芸人のバービー氏。博報堂Woman Wellness Programの安並まりや、本橋彩と共に、女性を含めたみんながハッピーに生きられる社会のあり方や、私たちが起こせるアクションについて意見を交わしました。
1つ目のテーマは、「自分を大切にするチカラ」について。バービー氏は冒頭、「田舎で比較されることなく伸び伸び育ったので、基本的に自己肯定感は高いほうなんです」と自身のスタンスを語りました。しかし、あるときSNSで「テレビでいじられるバービーさんを見て、自分が言われているようで悲しくなった」という視聴者からのコメントに接し、ハッとし、「自分を大切にしていることもきちんと見せなければ」と思い至ったそうです。
具体的な心身との向き合い方については、小さな不調でも頻繁に婦人科に相談に行く習慣があることを紹介。そのほかにも、ピルの使用や月経カップ、月経ディスクなど、新しい選択肢を積極的に調べ、自ら試しているという実体験が語られました。
続いてのテーマは、「自分らしく働くチカラ」について。気を付けていることについて問われたバービー氏は、「あらゆることが仕事につながると思える。こんなに選択肢のある時代で幸せです」と切り出しました。
そう思うようになったきっかけとして語られたのが、バラエティ番組の撮影で大怪我を負ったまま、カットがかかるまで動き続けてしまった際のエピソードでした。「あの頃は“芸人はこうあるべき”という固定観念にとらわれて、自分の身体のことを一番に考えられていませんでした」と話します。そして、怪我によって体を酷使する仕事が出来なくなってから、既に芸能活動のかたわらで始めていた「町おこし」や「下着づくり」の活動や、自身の本音についてラジオ番組で語ったところ、それが共感を呼び、後の仕事につながっていったといいます。「芸人としての仕事に限界を感じて新しい活動を始めた背景には、“自分をもっと大切にしたい”という気持ちが芽生えていたのだと思います」とのこと。
また、バービー氏はこれからの働き方について次のように語りました。「仕事の柱が1本だと不安定ですが、柱が複数あると“面”になって安定します。いまは選択肢があるぶん、柱を多く立てられる幸せな時代ですよね。」

最後のテーマは、「自分らしく生きる社会をつくるチカラ」について。
フェムケア領域の認知を高めるべく、自らを「もの配りおばさん」と称し、フェムケア商材のサンプルを配る活動を展開しているバービー氏。「フェムケアの無関心層との間にある壁を打破したい」とし、「最終的な目標は、女性に選択肢の多さやトライアンドエラーしてもいいことを伝え、自己決定する後押しをすること」だと熱く語りました。
また、個人的な見解として、「女性が自分らしく生きる社会をつくるためには、男性の抱える生きづらさも知り、彼らを解放することも重要」と指摘。「特に一定の年代以上の男性に、『もっと楽にいこうよ、もっとワクワクすることがあるよ』と伝えていきたい」とバービー氏は語りました。
この言葉に安並、本橋も深くうなずき、「自分が満たされていれば他者に優しくなれるはず。男性も固定観念から解放され、セルフケア、セルフラブを意識することで、男女共に自分らしく生きられる。そんな選択肢を増やしていけるといいですね」と話し、セッションを締めくくりました。
不調をケアするために検診に行くこと、違和感を言葉にしてみること、パートナーと価値観を共有すること。そして、Keynoteでバービー氏が語ったように、「こうあるべき」という固定観念から解放され、まずは自分自身を大切に(セルフラブ)してあげること。
今回のイベントで語られたのは、決して難しいことではありませんでした。一人ひとりが日常の中で小さな「アクション」を起こすこと。それが積み重なって、女性も男性も、誰もが心地よく生きられる「あした」が作られていくのだと感じさせられる一日となりました。
博報堂Woman Wellness Programは、これからも調査研究を通じて社会の課題を見つめ、皆さんと語り合いながら、「あしたを変えるアクション」を共に考え、サポートし続けていきます。