THE CENTRAL DOT

「不便」や「失敗」が未来の自分らしさに?2055年を生きる 「バーチャル慶應生」と語り合った、未来の働き方
~博報堂×慶應AIC 「AICチャレンジ2025」実施レポート~

2025.12.23
博報堂は、11月25日に慶應義塾大学日吉AICラウンジにて、同大学AI・高度プログラミングコンソーシアム(AIC)が主催する課題解決型イベント「第1回AICチャレンジ」にテーマ提供企業として参画。学生と共に、生成AIを活用した未来洞察ワークショップ「未来の『バーチャル慶應生』と対話して、未来の働き方を考えよう」を実施しました。
ワークショップでは、生成AIで生活者を再現する博報堂のソリューション『バーチャル生活者』開発ノウハウを活かし、「30年後の未来を生きる慶應生(バーチャル慶應生)」を生成。参加学生たちは、博報堂の「生活者発想」とAIプロンプト技術、そしてAIとの対話を掛け合わせることで、データ予測だけでは見えてこない2055年のリアルな学生像とキャリア観を浮き彫りにする取り組みにチャレンジしました。

■ ワークショップ実施の背景

生成AIが急速に普及する中、「業務効率化」が叫ばれる昨今。しかし、だれもが瞬時に答えを出せる時代だからこそ、「どう活用すれば新しい価値が生まれるか分からない」という問いはより切実さを増しています。 博報堂は「生活者発想」をフィロソフィーのひとつに掲げ、AIにおいても効率性だけでなく、人の感情や本音に寄り添う活用を模索してきました。今回、慶應義塾大学AICと協働し、AIを「効率化の道具」から「思考を拡張するパートナー」へと昇華させるプログラムを開発。あえて30年後という未来を設定し、AIと学生が対話することで、予測困難な時代における「働く意味」や「キャリアの自律性」を育む機会としました。

■ ワークショップの内容~未来を紐解く3つのステップ

本ワークショップは、学生4名と博報堂社員1名の混成チーム(計3チーム)で実施しました。社会課題やビジネスを知る博報堂の社員が伴走し、3つのステップを通じて、共に未来のインサイト(本音)を探求しました。

Step1:未来を探る【環境設計】 AIが生きる舞台となる「2055年の世界」を設計しました。博報堂社員が提示する「マクロな社会環境」の予測データに、学生ならではの視点による「ミクロな生活実感(流行、恋愛観、価値観など)」を掛け合わせ、リアリティのある未来環境を定義しました。

Step2:未来を生成【AIプロンプト設計】 定義した未来環境を基に、生成AIを活用して「30年後の未来を生きる慶應生(バーチャル慶應生)」を生成しました。博報堂のソリューションである『バーチャル生活者』開発ノウハウを用いたプロンプト設計により、単なる情報検索ではなく、その世界観の中で一人の生活者として思考・発言する「人格」を創り上げました。

Step3:本音を引き出す【対話・インタビュー】 創出したバーチャル慶應生に対し、現役学生がデプスインタビューを実施。「何のために働いていますか?」「AIによって最適化された世界は面白い?」「最近のくだらないけど笑えるエピソードは?」「いつ幸せを感じますか?」「30年後の大学生として、今の私にアドバイスをください」といった、様々な確度からの問いを投げかけ、対話を重ねることで、データ予測を見るだけでは得られない、未来の当事者としての葛藤や「生の声」を引き出しました。

最後に、各チームが得たインタビュー結果を、参加学生12名全員で共有・発表しました。異なる性格や背景を持つ「未来の慶應生」たちの多様な言葉を重ね合わせることで、AI時代におけるキャリアの共通課題や、時代を超えて変化しない価値観を浮き彫りにし、これからの「働き方」に対する新たな視座を獲得しました。

■ ワークショップで得られたインサイト~未来との対話で見えたもの

バーチャル慶應生との対話は、学生たちにとって「働くこと」の意味を、少し違った角度から見つめ直す時間となりました。バーチャル慶應生との対話を通じて浮かび上がった、未来社会で主流になりうる価値観や働き方の一例をご紹介します。

1. AIに代替されないヒトとして、自らの存在証明のために働く
AIが様々な最適解を即座に提示する未来において、「人間にしか生み出せない価値」を求めて学び続け、働こうとするバーチャル慶應生が多く出現しました。多くのバーチャル慶應生が、例えば、介護や物流の現場でAIには察知できない微妙な不満を読み取ってAIロボットの行動を修正する、企業のAI活用の在り方に人間らしい制約を課す倫理コンサルティングを提供する、AIでは癒せない孤独を抱える人の話を傾聴するなど、人間らしい特性を生かした働き方のエピソードを語り、AIには到達できない領域にこそ、人間ならではの存在価値を見出していました。

2.「学生」と「社会人」の境界線が消滅。人生はマルチステージへ
AIが到達できない人間ならではの価値を出し続けるため、人々は絶えず自らをアップデートする必要に迫られます。社会に出た後で学び直しに来たバーチャル慶應生も多く、彼ら彼女らは、より明確な目的意識や得意領域を持ち、それらを生かせる活動に取り組んでいました。例えば、人手不足の現場に遠隔操作ロボットを用いて労働力を提供するサークル活動をする、メタバース研究をしながらデジタルアート制作のアルバイトをするなど、学びと仕事、課外活動がシームレスになり、学生と社会人を兼ねるキャリアステージが標準化している様子が伺えました。

3. 非効率や失敗、無駄こそが、人間らしさを堪能する贅沢品になる
そうした緊張感のある日常の反動として、AIによって取り除かれた「くだらない無駄」や「独学で一から学ぶ体験」「予測不能な感情のバグ」などを贅沢品として求めるようになったバーチャル慶應生も複数存在しました。例えば、「人の生産性を極度に低下させる完全オフライン・キャンプ」や「調理の失敗を可能にする、AI非搭載のオーブンレンジ」といった商品・サービスが語られ、未来の大学生が、あえて非効率や失敗、無駄の体験を取り入れることで、評価や効率から解放され、本当の意味での「人間ならではの豊かさ」を感じる様子が伺えました。

■ 参加学生の声

本ワークショップは、デジタルネイティブである学生たちにとっても、AIの新たな可能性に触れる原体験となりました。「便利なツール」から「思考を拡張するパートナー」へ。AIに対する意識の変容や、未来への希望を感じさせる感想が多く寄せられています。

想定外の人格形成に驚き 「与えた情報を元に、自分の想定を遥かに超える深い人格が形成されたことが非常に面白かったです。AIがこれほどリアルな『他者』になることで、対話を通じて自分でも気づかなかった新たな一面を発見できる可能性を感じました。」

思考のプロセスを楽しむ 「自分の疑問や興味をとことん深掘りし、思考するというワークショップは非常に刺激的でした。単に、良い回答を作り出していくのではなく、『なぜその回答に至ったのか』『なぜその人物設計なのか』を問い続け、その人物の核に迫るというプロセスは、思考力が非常に求められ面白かったです。」

対話を通じて実感した「問いを立てる力」 「最もユニークだったのは、生成された『未来の学生』へのインタビューです。一般的な授業やイベントでは、未来予測はデータに基づいて行われることが多いですが、対話を通じて、人間ならではの質問力や問いを立てる力の重要性を改めて実感しました。」

機能活用の実践的な学び 「生成AIの活用法が多彩で面白かったです。画像生成から人格形成、30年後のデータ解析まで、AIの機能をフル活用するプロセスを体験できたことは、講義だけでは得られない実践的な学びになりました。」

キャリア観の変化 「将来の働き方が変化する中、キャリアには継続的な学びや柔軟性が不可欠だと実感しました。『働くとは何か』という根本的な問いを見つめ直すことで、参加前とはキャリア観が大きく変わる、貴重な機会になりました。」

博報堂は、本ワークショップを通じて得られた知見を基に、生成AIを「創造的なパートナー」として捉える教育プログラムの開発や、次世代のキャリア形成支援への応用を検討してまいります。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア