

2025年の秋は、日本のターニングポイントとなる史上初の女性首相誕生と、稀に見るビックニュースがありました。それに伴い、米国経済好調や国内日経平均高騰、金取引価格最高値と経済面で良い風が吹きましたが、暗号資産相場には乱高下が発生しました。総じてこれからの日本経済成長への期待が高まったことは間違いありません。これらの金融ニューストピックへの生活者の関心を全国1,000名にWEB聴取しました。

ニュースのなかでも消費意欲が上がると思うTOP2が、「高市政権の誕生」(16.8%)「日経平均史上初の5万円台へ到達」(10.0%)となりました。史上初の女性首相を皮切りに、日経経済の閉塞感を打破してくれるのではとの期待感が伺われます。
同様に投資意欲が上がると思われるニュースのTOP2は、「日経平均史上初の5万円台へ到達」(13.5%)と「米国関連指標が最高値を更新」(12.2%)」となりました。この2つが投資意欲を喚起するニュースとなり、国内外の投資に直結するTOPICにビビットに反応する結果となりました。
景気が上がると思うニュースは群を抜いて「高市政権の誕生」(22.0%)が唯一の20%台へ。消費意欲と同様に、日本が新局面へ突入したと感じている方も多いのではないでしょうか。

そのような新局面を迎えている中、急激な発展を遂げている生成AI。日々ニュースにも取り上げられ、生活にも溶け込み始めている中、生成AIはどこまで浸透し、生活者の意識変化をもたらしているのでしょうか。
生成AIの日常使用頻度を尋ねてみると、『ほぼ毎日』利用している方が10.4%までに上がってきています。これはイノベーター理論に当てはめてみると、イノベーター層を越え、アーリーアダプター層の真ん中まで来ているところです。次のキャズムを越えることができれば、マジョリティ層への浸透が始まり、一気に「誰もが使っている」という感覚を得ることができるようになるでしょう。特に、牽引しているのが20代。それも20-24歳の方々です。おそらく、新社会人というより学生がレポート作成や就職対策など多用しているのではないでしょうか。社会人になると、個人的利用というより在籍している会社が生成AI利用をどこまで積極的に整備・推進しているかに左右されるため、今後もこのスコアを注視していく必要があります。

そして、毎日のようにアップデート情報が流れる生成AIですが、生成AI利用による期待や脅威も、すでに生活者は感じ取っています。生成AIによって、「経済格差」がより広がると思っている方は、実に約8割にも到達しています。特に40代の切迫度が非常に高いという結果に。会社の中では、プレイヤーだけでなくマネジメント層も増える年代であり、そして50代に向けて会社人生をどう生き抜いていくかを考えさせられる年代でもあります。若手の生成AI活用を横目にみながら、いかに40代でも時代の変化や会社の変化に取り残されないようにするかを考えているのではないでしょうか。

また、AIにより自身の職業や専門スキルの価値が上がるかという質問には、“どちらかというと”と答える中庸層が多い結果になりました。目の前の仕事に、生成AI利用は必要だと思っていても、いまだ「生成AI利用の効果実感」が少なく、有用性を感じていないのではないでしょうか。そのためか、自己投資で生成AIスキルを身につけようとする姿勢も低い状態であるのが伺えます。

果たして、生活者にとって生成AIをどこまで信用してよいのでしょうか。「飲み会やお出かけ先などの行先選びを、AIに全て任せることに抵抗ない」は意外にも約5割と高い結果に。一方、「AIに、進学や就職、結婚などのライフイベントについてアドバイスをもらいたい」に対しては6割が否定的な回答となりました。さらに「亡くなった後の資産の管理・分配を生成AIに信頼して任せたい」になると約7割が否定的という結果です。日常の身近でリスクの低い事柄に関しては、AIとの協働姿勢が見られますが、自身の大事な事柄になればなるほど、AIではなく自分自身で決めたいという意思が強く見られます。

もうひとつ注目したいのが、リテラシーを必要とする金融分野です。ここに関しては、
「あなたが親だとしたら、自分の子供に“AIを使ったお金の教育(金融教育)”を受けさせたい」が半数を越える結果に。自分自身で教えきれないもの、専門的な知識が必要な事柄に対しては、AIの力を活用していくことも厭わない姿勢も見受けられました。これは教育分野とAIとの相性の良さにもつながっていきます。

最後に「自分にとってAIは、友達のような親しい存在になっている・いずれなれると思う」はまだ3割台に留まっています。“ほぼ毎日”のように生成AIを利用している学生や20代が社会の主役となり、そして同時に会社での生成AI利用が浸透すれば、生成AIは生活者にとってなくてはならない存在、バディになっていくのではないでしょうか。

生成AIが生活や仕事の中に染み込んできている中、まだ生活者は、AIを信じきることができておらず、これから信頼関係を築いていく段階となります。そして、現時点ではAIの可能性に対して脅威と捉えている方々も多いのも事実です。今回の調査では、日本の経済格差がより大きくなるのではと不安を覚えながらも、この時代の流れに取り残されないようにしなければという生活者の内なる声が聞こえてきたように思いました。
「Finance Insight News」では、今後も金融にまつわるニュースやトピックを皆さんにお届けします。次回をお楽しみに!
■調査概要
※ HakuhodoFintexBase×QO株式会社「金融マンスリー調査 」 2025.11
【調査エリア】全国
【調査対象者】20~60代男女 1,000名
【実施時期】2025年11月

新卒で外資系大手SIer入社。その後、大手メディアサービス企業にてネット業界ブランディングに従事、総合広告会社を経て現職。クリエイティブ・事業からシステム基盤と振り幅の広いスキルを最大限に活かすフィールドを求め、博報堂に転身。現在は、BtoB、飲料、通信・自動車・HR・Fintechとあらゆる業種を担当し、事業視点からのマーケティング戦略を策定するチーフイノベーションディレクターとして活動。JAAA懸賞論文戦略プランニング部門3度受賞、共著「ウェルビーイング市場を拓く技術開発戦略」