THE CENTRAL DOT

マーケティングシステムの今 ─ マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.11】生成AI時代にマーケターが自らデータを学ぶ意義

2025.10.10
マーケティング活動において、データとテクノロジーが果たす役割は年々高まっています。データ基盤整備やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)活用、マーケティングオートメーション、AI活用といった言葉は、もはや特別なものではなくなりました。一方で、それらを「実際の事業成長」に結びつけられている企業は、想像以上に少ないのが実情です。本連載では、博報堂マーケティングシステムコンサルティング局(以下、マーシス局)のメンバーが、事業グロースに向けた「生活者発想×データ×テクノロジー」の挑戦について、日々現場で向き合っている知見や視点から発信していきます。
第11回の本記事では、マーケティングにおけるデータ活用の進化の歴史を紐解きながら、現在の生成AI時代にマーケターが自らデータを学ぶことの本質的な意味について考察します。

小坂井 善誠
株式会社博報堂
マーケティングシステムコンサルティング局
データプラットフォーム推進部 データストラテジスト

マーケティングにおけるデータ活用の進化

データ活用と一言で言っても、その姿は時代と共に大きく変化してきました。テクノロジーの進化と、それに伴いマーケターに求められるスキルの変遷を振り返ってみたいと思います。

インターネット黎明期からビッグデータ時代へ(1995年~2017年頃)

1995年頃、インターネットの登場とPCの普及により、生活者がいつでもどこからでも無数の情報にアクセスできる時代が始まりました。企業のマーケティング活動もWebサイトが中心となり、「Webマスター」と呼ばれるWebサイトの構築・運用スキルを持つ人材が重宝されました。
その後2010年頃にかけて、検索エンジンの進化、SNSの台頭、スマートフォンの普及などにより、インターネットは人々の情報探索、コミュニケーション、購買活動のインフラとして深く浸透します。それに伴い、SEO、デジタル広告、UI/UXなど、デジタル戦略における各種スペシャリストの需要が高まり始めました。
そして2017年頃には、DWH(データウェアハウス)やビッグデータという言葉が浸透し、企業は「蓄積したデータをビジネスに活用する」ことを強く意識し始めます。データサイエンティストのような、高度なデータ分析スキルを持つ人材が注目を集め始めるのもこの時期です。

CXとパーソナライゼーションの時代(2018年~2024年頃)

次なる進化は、「個」への最適化です。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の登場により、それまでバラバラに管理されていた顧客データを統合し、顧客一人ひとりを深く理解することが可能になりました。
これにより、マーケティングの主眼は短期的な獲得から、LTV(顧客生涯価値)やCX(顧客体験)の向上へとシフトします。データは優れた顧客体験を創出するための資源となり、サービス全体を俯瞰してデータに基づきながら、より良い顧客体験を設計するCXデザイナーやプロダクトマネージャーが求められるようになりました。

そして、生成AIがすべてを書き換える(2024年~現在)

そして今、私たちは生成AIという新たな革命の只中にいます。生成AIは、単なる業務効率化ツールではありません。マーケティングにおける「顧客理解」を根底から変え、体験価値を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
AIが人の手では不可能だったレベルで顧客理解を深める時代において、マーケターには既存のマーケティング活動をリデザイン(再設計)し、リビルド(再構築)する力が求められています。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事