THE CENTRAL DOT

マーケティングシステムの今〜 マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.7】マーケティング施策の効果検証はなぜうまくいかないのか―本質的な貢献度を捉えるために必要なアプローチとは

2025.08.21
マーケティング活動において、データとテクノロジーが果たす役割は年々高まっています。
データ基盤整備やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)活用、マーケティングオートメーション、AI活用といった言葉は、もはや特別なものではなくなりました。
一方で、それらを「実際の事業成長」に結びつけられている企業は、想像以上に少ないのが実情です。
本連載では、博報堂マーケティングシステムコンサルティング局(以下、マーシス局)のメンバーが、事業グロースに向けた「生活者発想×データ×テクノロジー」の挑戦について、日々現場で向き合っている知見や視点から発信していきます。
第7回のテーマは「マーケティング施策の効果検証」。なぜマーケティング施策の全体貢献度を捉えることは難しいのか、その背景にある構造的な問題を整理した上で、博報堂マーシス局が実務現場で取り組んでいる「因果構造に基づく効果検証アプローチ」についてご紹介いたします。

土井 京佑
株式会社博報堂
マーケティングシステムコンサルティング局
データプラットフォーム推進部 部長

個別施策のPDCAが限界を迎える瞬間

企業がデジタルシフトを加速させ、マーケティング施策の多様化が進む中で、多くの現場が新たな課題に直面しています。デジタル広告、SNS、CRM、オフライン販促など、多様な施策を組み合わせて実行することが当たり前となった一方で、「その施策が事業成長にどれだけ寄与したのか」を把握することがますます難しくなってきているのです。

近年のマーケティング現場では、個々の施策単位でのKPIは日々モニタリングできる環境が整いつつあり、広告のクリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)、アプリのアクティブユーザー数(DAU)など、多くの指標はダッシュボード上で即時に可視化できます。しかし、それらはあくまで部分最適の指標にすぎず、個々の施策が"その指標"にどれだけ寄与したかは測れても、全体としての事業成長や収益貢献までを正確に捉えているわけではありません。たとえば、短期の獲得効率を優先して施策を最適化すればするほど、獲得ユーザーのLTVが下がり、中長期的には収益貢献が減少するケースは少なくありません。個別KPIが好調でも、決算説明会では売上停滞の要因説明に苦しむ――こうしたシーンは決して珍しくありません。
PDCAの「C(チェック)」が施策単位のKPI検証に留まる限り、この構造的なズレは解消できません。本来は戦略仮説そのもの――「このターゲットに対して、このポジショニングで、このチャネルを通じて、この価値提供を行えば事業成長に資する」という仮説の検証こそが重要です。

図:部分最適と全体最適

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事