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マーケティングシステムの今〜マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.6】「あなたのCRM、実は組織が原因?停滞を打破し、顧客と成長する組織の秘訣」

2025.08.07
マーケティング活動において、データとテクノロジーが果たす役割は年々高まっています。データ基盤整備やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)活用、マーケティングオートメーション、AI活用といった言葉は、もはや特別なものではなくなりました。一方で、それらを「実際の事業成長」に結びつけられている企業は、想像以上に少ないのが実情です。本連載では、博報堂マーケティングシステムコンサルティング局(以下、マーシス局)のメンバーが、事業グロースに向けた「生活者発想×データ×テクノロジー」の挑戦について、日々現場で向き合っている知見や視点から発信していきます。
CRMの停滞は、ツールやデータだけでなく「組織のあり方」に原因があるかもしれません。データ活用不足や現場の不満など、多くの企業が陥る「CRMの罠」が存在します。第6回では、では、それらの罠を解説し、顧客との関係を深め、持続的に成長するための「組織の秘訣」を、博報堂のCRMコンサルタントがご紹介します。

稲毛 隆之
株式会社博報堂
マーケティングシステムコンサルティング局
データプラットフォーム推進部 マーケティングプランニングディレクター

なぜCRMは停滞するのか?陥りがちな「CRMの落とし穴」

あなたの会社や取引先の企業が導入されているCRMシステムは、期待通りの成果を出しているでしょうか。CRMの停滞要因は様々ありますが、多くの場合、ツールやデータといった技術的な側面ばかりに目が向きがちです。しかし我々は、実は組織内に潜む「落とし穴」にはまっていることも少なくないと考えます。期待通りの成果が出ないのは、ツールやデータの問題だけでなく、企業が抱える組織的な構造と深く結びついた課題が背景にある可能性もあるのです。

あなたの会社のCRMは、次のいずれかの「落とし穴」にはまっていませんか?

図:CRMの落とし穴パターン

【落とし穴パターン1:目的の曖昧化】

高価なCRMシステムを導入しただけで満足し、それが最終ゴールになってしまっているというパターンです。ツールはあくまで「道具」です。顧客との関係をどのように築き、ビジネスを成長させるかという明確な戦略がなければ、その「道具」は十分に活用されません。もし導入から時間が経つのに、現場から「結局、何に役立つの?」といった声が上がるなら、それは要注意です。CRMを単なる「システム導入プロジェクト」として捉えてしまっているかもしれません。本来のビジネス目標が見失われ、ツール導入自体が目的化している状態と言えます。

【落とし穴パターン2:データの活用不足】

顧客の購買履歴や問い合わせ履歴など、データは豊富に集まっているにもかかわらず、それを顧客理解や次の具体的なアクションに活かしきれていないというパターンです。膨大なレポートが作成されるものの、具体的な打ち手につながっていないという経験は、多くの企業が直面する課題です。データは顧客の「声」です。その声を聞き取り、分析し、戦略的に活用する仕組みやスキルが組織に不足していれば、せっかくのデータも「ただの数字の羅列」に終わってしまいます。収集した顧客データが分析・活用されない状態は、CRMが単なる情報保管庫となっている証拠です。

【落とし穴パターン3:短期思考の追求】

「今月のキャンペーンでどれだけ売れたか」といった目先の数字ばかりを追いかけ、顧客との長期的な関係性や、ブランドのファンになってもらうという視点を見失っているというパターンです。「今月中に〇件獲得!」といった短期的な目標も重要かもしれませんが、顧客の長期的な変化が見えていないと、落とし穴にはまっているかもしれません。CRMの真価は、顧客との信頼関係を築き、長くお付き合いいただくことで生まれる「顧客生涯価値(LTV)」を最大化することにあります。短期的な成果に囚われすぎると、無理なプッシュで顧客を疲弊させたり、ブランドイメージを損ねたりするリスクが高まります。

【落とし穴パターン4:部門間の分断】

営業、マーケティング、カスタマーサービスなど、各部門が個々に顧客と接しているのに、情報が共有されず、顧客体験が分断されているというパターンです。問い合わせに対して、以前話した内容をまた一から説明させてしまうのは、顧客にとって大きなストレスです。顧客から見れば、誰と話しているというよりも会社全体とコミュニケーションしているという感覚が強いはずです。部門間の連携不足は、「また同じ話をさせられた」という不満を抱かせ、結果的に企業への信頼を損ないかねません。これは組織内の大きな課題であり、情報がサイロ化する原因となります。

これらの「落とし穴」にはまる組織では、CRMが単なる「顧客情報管理」で終わってしまい、顧客との「関係構築」という本来の目的を果たせていないケースが少なくありません。

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