
日本テレビ放送網株式会社
コンテンツ戦略本部 事業局 イベント事業部 部次長
小林 大祐氏
── まずは小林さんの自己紹介と現在の取り組みについて教えてください。
日本テレビのeスポーツ事業は、2018年に日本テレビの社長室から始まった新規事業の一環として始まりました。私は事業立ち上げの初期から推進役として携わってきました。
私自身はもともとゲームが好きで、前職もモバイルゲームの会社の海外進出担当だったのですが、eスポーツというジャンルに本格的に関わるようになったきっかけは、社長室で新規事業提案制度の事務局を担当していたときです。
社員から提出されたアイデアの中で、eスポーツに関するものが18件と予想以上に多く寄せられたため、本格的に研究した方がいいなと思ったんですよ。ちょうど2018年は、eスポーツが盛り上がり始めていた時期で、「日本eスポーツ連合(JeSU)」という大きな業界団体が立ち上がるなど“eスポーツ元年”とも言われていました。
eスポーツについて色々と調べていくために、まずは現場を見てみようと幕張で開催された大会の視察に行ってきました。現地では、自分がプレイしているわけでもないゲームの試合で、観客の皆さんが真剣な眼差しで行方を追っている光景でした。さらに、eスポーツの試合を戦っている選手たちはユニフォームを着ていて、すごくかっこよく見えたんです。
ただ、最初はルールもよく分からなかったので、試合を見ながらスマホで必死に検索していました。それでも、3試合くらい見ているうちに段々ルールが理解できて楽しくなってきて、帰宅してそのゲームを遊び始めてからは、自分自身もeスポーツに夢中になっていきました。自分がeスポーツをプレイする側に回ると、あらためてプロ選手のすごさが身に染みて感じるので、プロ選手が“憧れの存在”になっていくわけです。
最初はeスポーツを研究するところから始まって、プレイヤーとしてeスポーツに関わるようになっていくうちに、「eスポーツをビジネスとして育ててみたい」という願望を抱くようになって。そこから、eスポーツの事業の立ち上げを買って出ることになりました。

── 今回の取り組みをするにあたって、自社のノウハウが活かせているのはどのような部分でしょうか。
日本テレビグループが掲げる「中期経営計画2025-2027」では、eスポーツを新たな成長事業の柱として位置づけるなど、eスポーツを「興行コンテンツ」として育てていくフェーズに入っています。
従来ですと、eスポーツの大型オフラインイベントは、ほとんどがゲーム会社のプロモーション予算で成り立っていました。しかし、現在は状況が変わってきていて、オフラインイベントにはゲームのコアプレイヤーのみならず、カジュアルにゲームを楽しむ方やゲームをほとんどプレイしない方も多く来場するようになってきました。

そのようなライト層が会場の熱気やプロ選手のかっこよさなどに惹かれて、eスポーツの大会にお金を払うようになっているわけですね。つまり、eスポーツが徐々に“観るスポーツ”として成立しはじめているということです。この流れを受けて、日本テレビは長年培ってきたスポーツイベントやスポーツ中継の興行ノウハウを活かし、eスポーツを事業として育てることに挑戦しています。スポーツイベントだけでなく、音楽ライブや舞台など、多種多様な興行イベントの経験があるからこそ、そのノウハウをeスポーツの興行にも役立てています。