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e-sportsが持つメディアパワーを考える。今更聞けないe-sportsと配信文化の密な関係

2025.05.12
#生活者インターフェース市場
いまや日常的に耳にするようになった「e-sports(イースポーツ)」という言葉。しかし、どのような競技があり、どんなプレイヤーが活躍し、競技がどのように行われているかという実態をしっかり把握している人は、案外少ないのではないでしょうか。
さらにe-sportsの盛り上がりには、競技性の高さだけでなく「配信文化」とのつながりが強い影響を与えています。試合のみならず練習風景さえリアルタイムで伝える配信者の存在が多くのファンを惹きつけ、e-sportsを取り巻くカルチャーを形作っています。
今回は、e-sportsを日常的に楽しみ、リアル会場で行われるe-sportsイベントにも参加しているメディア環境研究所の瀧﨑絵里香上席研究員が、自身の体験と視点を通じて、e-sportsの“いま”を読み解きます。

1対1から団体戦まで。サッカーに匹敵するプレイ人口を誇るe-sports

まずe-sportsとは何か?という定義から押さえていきましょう。e-sportsとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦を競技として捉える文化や取り組み全般を指します。

競技として採用されるゲームタイトルは実に多彩ですが、現在人気のある対戦形式には、以下のようなジャンルがあります。

・1対1のゲーム(例:『ストリートファイター』シリーズ)
・チームで連携して戦うゲーム(例:『VALORANT』『 League of Legends 』)
・複数のチームやプレイヤーが一斉に参加し、最後の1チームまたは1人を決めるバトルロイヤル形式のゲーム(例:『Apex Legends』『Fortnite』など)

日本では、格闘ゲームやファーストパーソン・シューティング(FPS)の接触(参加・視聴)が多いと言われています。ほかにも、一人の鬼役とそれから逃げるプレイヤー集団で対戦する非対称型ゲーム(例:『Dead by Daylight』など)もあり、ゲームジャンルによってファンの視聴スタイルや応援の仕方にも違いが見られます。

※ファーストパーソン・シューティング(FPS):シューティングゲームの一種で、操作するキャラクター本人の視点(First-person)でゲームの中の世界を動きまわり、武器や魔法などを用いて戦うもの。

自分が実際にプレイする場合、知り合いが全くいない状態で、自分1人だけでチーム制のゲームに参加するには慣れも必要です。時にはチームメイト(その場でマッチングした見ず知らずの人)からのプレッシャーを感じてしまうこともあるため、そうした経験からプレイするより「視聴メイン」に切り替える人も出てきています。

また、e-sportsと聞くと「サッカーや野球など、既存のスポーツのデジタル版」といったイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際には“現実では味わえない体験”を提供するジャンルのほうが、より盛り上がりを見せています。日本国内におけるe-sportsのプレイ人口としては、推計で約400万人に上るとされます(※1)。
また、世界のe-sportsプレイヤー人口は約1億3,000万人に達するとの推定もあり(※2)、これは国内の20歳以上のサッカー競技人口(約300万人:日本サッカー協会登録者数)を上回る規模です。
さらに、e-sportsには視聴専用のファン層も存在し、2022年時点で日本国内のe-sportsファン数(試合観戦・動画視聴・関連放送の視聴経験者)は約776万人と報告されています(※3)。
これらを含めると、eスポーツに関わる人々の数は年々拡大を続けていることが明らかです。

e-sports人気を語る上では、プロチームの存在も欠かせません。日本には約100を超えるプロe-sportsチームが存在していると言われており、企業が設立したチームや、大手スポンサーを抱えるチームも多数。国際大会も多く開催されており、日本代表が出場するケースはもちろん、国境を超えたドリームチームが招集されることもあります。
ヒーローやアイドルのような人気プロゲーマーも少なくありません。プロチームのイベントには、たくさんのファンが駆けつけて、まるでアーティストのライブのような熱気に包まれます。

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