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生成AIは真の創造性を持ち合わせてはいない メディア コパイロット編集長 John Biggsさんが考える、AIとの今後の向き合い方

2025.05.07
メディア環境研究所では、AIが社会や産業、メディアにもたらす影響について研究・洞察する「AI×メディアの未来」プロジェクトを立ち上げました。その一環として、さまざまな分野で活躍している有識者にインタビューを重ねています。
今回お話を伺ったのは、大手テック系メディアの編集者を15年間勤め、現在はメディア コパイロットの編集長を務めるJohn Biggsさん。ニューヨークを拠点に活動するJohnさんに、今後生成AIが生活者・メディア・広告にもたらす影響やクリエイティブとの関係性について、博報堂メディア環境研究所の冨永直基がお話を伺いました。

AIはあくまでもツールであって、知性ではない

――今後5年間で生成AIはどこまで進化し、何ができるようになっていくと思いますか?

正直に申し上げると、AIの技術は「足踏み状態」に入ったと感じています。もちろんツールとしては今後もっと使えるようになっていきますが、現在は一つの頂点に達した段階にあると私は考えていて、次の5年間で何かが良くなるとは思えません。10年単位だとまた別の話ですが。

ただし、「Quantum computing(=量子コンピューティング)」が状況を変えることはあるかもしれません。

――生成AIが自律的に動くように研究開発をしている企業も多いと思います。そういった方面での進化はいかがでしょうか?

自動車業界で言えば、確かにレーンの管理をしたり他の車を避けたりすることはほぼできます。十分な演算力があれば十分できる範囲であり、そのような自律性はどちらかというと難しくはないですね。

一方、本当の意味で生成AIが私たちのために仕事をやってくれるかというと、おそらくそれは虚偽でしょう。こちらが与えた一つの目的を達成することはできても、複雑なことはまだできない。なので、やはり人が介在する必要があります。

――Johnさんが書かれた記事で「アマラの法則」(人間は技術の短期的な効果を高く見積もり過ぎ、長期的な効果を低く見積もりすぎる)に触れられているものがありましたが、長期的に見たとき生成AIにはどのような価値があると思いますか?

「Augmented Intelligence(=拡張知性)」になっていくのだと思っています。つまり、AIはほぼ全ての用途において私たちの成功を手助けしてくれるアシスタントのような存在になる。

それからもう一つ、AIによってインターフェースがどんどん良くなっていくでしょう。例えば、健康関連のアプリなら食べたものを管理し、体調管理をアドバイスしてくれる。食べたものをAIが見て「この栄養が足りていないから、明日はこの食品を食べましょう」と耳に向けてささやいてくれるイメージです。

しかし、本当の意味でAIと人とが相互作用を持つ関係になることはないでしょう。もちろん、そうやって人々がAIと話すことを楽しむ状況はありえますが、AIはあくまでも空っぽの箱。その中に知性はありません。エージェントAI、コンパニオンAIなど、私たちはさまざまな呼び方をしますが、実際はそうではないのです。AIがやってることをパートナーであるとかコンパニオンであるというふうに私たちのほうで捉えているだけです。

なので、AIをあまり褒めたたえすぎるべきではありません。ましてやAIを擬人化、人間化すべきではない。多くの人が今そういうふうに生成AIを扱おうとしていますが、それは避けたほうがいいでしょう。

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