THE CENTRAL DOT

メタバース生活者たちと共にデジタル世界のこれからを考える vol.3
「メタバース生活者×経済」~コミュニティ独自の価値観が生む新しい経済観~

2025.04.21
#生活者インターフェース市場
博報堂は、2024年11月に、メタバース空間における新しい生活者価値の創出と、イノベーションを生み出すことを目指し、研究員全員がメタバース生活者当事者によって構成されたコミュニティ型プロジェクト「メタバース生活者ラボ™」を設立しました。
本連載では、メタバース生活者ラボの理念に共感いただいている、メタバース生活者当事者でもあるゲストとの対話を通じて、メタバース生活者の未来を探求していきます。
第3回は、物理AI(フィジカルAI)を活用して産業分野における自律型ロボットの社会実装を目指す株式会社Zrek (ゼレック) 代表取締役CEOの今村 優希さんと取締役COOの江口遼馬さんをお招きし、「メタバース生活者×経済」をテーマに、バーチャル世界での経済活動やメタバース生活者の消費に対する考え方についての座談会を実施しました。
※本ラボにおける「メタバース生活者」は、「バーチャル空間上で、自身のアバターやキャラクターを通してコミュニケーション等の行動を実施する」すべての生活者を対象としています。

今村 優希
株式会社Zrek 代表取締役CEO

江口 遼馬
株式会社Zrek 取締役COO

瀧﨑 絵里香
メタバース生活者ラボ リーダー
博報堂 研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 上席研究員

和田 周
メタバース生活者ラボ 研究員
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター

平沼 英翔
メタバース生活者ラボ 研究員
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジーセンター

バーチャルとリアルの「二重性」を感じるようになった

瀧﨑
私たちは、デジタル空間上でキャラクターやアバターなどの姿を通して活動する人々(=「メタバース生活者」)を研究しています。今回は、そうした「メタバース生活者」と呼ばれる人々の経済について語り合えればと思っています。まず最初に、お二人の普段のお仕事について教えてください。

今村
子どもの頃、ドラマ『BLOODY MONDAY』や映画『マトリックス』を観たことで ハッカーに憧れ、中学時代にはソフトウェアエンジニアになりたいと考えていました。高校時代には、より独学で学ぶのが難しそうな ハードウェアや宇宙の分野 に進もうと決め、大学では機械系の学科 を選びました。現在は自律制御やロボティクス関連の仕事をしており、AIを活用して物理世界にどう実装していくかを探求するスタートアップを経営しています。

最終的には、AIによってさまざまな自律制御が進化し、モノが自ら思考し、独自の判断で動く世界の実現を目指し、事業を展開しています。

瀧﨑
今村さんはブロックチェーンやNFT関連の仕事もされてきたそうですね。

今村
大学時代にスタートアップに興味を持ち始め、友人と起業を考える中で、ブロックチェーンを活用した新しい仕組みが生まれる可能性を感じ、2020年頃からブロックチェーン技術に本格的に注目するようになったのです。

2017年からビットコインに触れていましたが、「ビットコインはなぜ動くのか?」という仕組みに強く興味を持ち、2021年頃からNFTの発行やブロックチェーン技術を活用した管理システムの開発に携わるようになりました。

瀧﨑
江口さんが大手企業からスタートアップのZrekに入社したのはどのような経緯があったんですか?

江口
私はもともとソフトウェア開発に興味があり、金融機関向けに基幹システムの構築などに従事していました。しかし現場での経験を重ねる中で、ハードウェアとソフトウェアの連携が今後の価値創出に重要だと感じるようになり、2024年の秋にZrekへ参画しました。

瀧﨑
最初にお二人の仕事の一面を伺いましたが、プライベートでのデジタル上の人格や個人的な活動などについてもぜひお聞きしたいです。

江口
私は小学校の頃から家にパソコンがあり、コミュニティサイトのような誰でもチャットができる場所で、知らない人とチャットで話していた記憶があります。最初は文字を打つのもおぼつかなくて、「おはよう」と入力すると返事が返ってきたことに驚いたりしていましたね。

高校ではマインクラフトをやっていましたが、電源を切ってゲームを閉じると、どこか寂しさを感じることもありました。でもそういう体験はすごく楽しかったし、現実の世界に価値を感じなくてもいいんだということに気づくことができました。そのおかげで、私もソフトウェアの道に進むことができたと感じています。

今村
小学校の頃に両親から英才教育を勧められ、その一環でパソコンを与えられたのが始まりでした。当時はパソコンのチャットルームが盛り上がっていた時代で、私も実名ではなく仮の名前を使ってチャットをしていました。名前を変えるだけで、知らない人と自由に会話できることに感動したのを覚えていますね。

これが、初めてバーチャルの「仮面」を持つ体験だったと思います。また、ゲームのタイトル画面を編集し、プレイヤー同士と“謎のコミュニケーション”を楽しんでいました。今思えば、ある種のネットミーム的な感じだったと思います。

平沼
その感覚、よくわかります。マジカルバナナみたいな感じでテーマを決めてお互いにチャットを繰り返すというのが一時期すごく流行ってましたよね。BBSとはちょっと違う流れで広がったと思いますが、自分の周りでは意外と大人より子供たちの方がそういうのをやっていた印象があります。

今村
中学生の時には『ソードアート・オンライン』が流行りだして、MMORPGの面白さを感じていました。また、そのタイミングで『ファンタシースターオンライン2』が始まって、βテストの参加募集がすごく行われていた時期でした。自分もβテストに参加して色々試してみると、今までは2Dの画面でプレイしていたものが、いきなり3Dになって友達とチャットできるようになったのが本当に衝撃的でした。

そこから、みんなと仮想空間を一緒に過ごす感覚が楽しくなりすぎて、気づいたら年間3000時間くらい遊んでいました。当時はアイテムを買うためのお金が足りなかったので、アフィリエイトで10万円くらい稼げるようになったんですよ。そのお金を全てゲームに注ぎ込むこともしていましたね。

瀧﨑
まさに「デジタルネイティブ」の先端を走っていた感じですね。今では小学生が当たり前のようにタブレットを持つ時代になっていますけど、そういう未来を実際に先取りして体験していたんだなと思いました。

今村
当時は本当に周りでオンラインゲームをやっている人が全然いなくて。ゲームの中で待ち合わせしているという話をしても、周りからは「オタクじゃん」と言われてあしらわれていましたね。Twitter(現 X)も小学校の頃から使っていたんですけど、周囲のリア友は誰も使っていませんでした。

今もXがすごく好きで、同世代がNFTで起業したのをX経由で知ったことでNFTに関わるようになりました。ただ、仕事をするためには実際にNFTを買わないと肌感がつかめないと思い、色々と購入してみたのですが、MMORPGでアイテムを買った時の感覚とNFTを買う感覚は少し違っており、不思議に思ったのを覚えています。

NFTはデジタル作品として存在するけど、なぜかそれを印刷してみたり、買った人たちとリアルで会ったり。アバターやSNSのアイコンとして使われるなど、今までの流れとは違うと感じていました。その経験から、新たな経済圏がインターネット上に生まれつつあると思うようになり、ブロックチェーンという思想や技術、その文化にのめりこみました。

最終的には今まで携わってきたAIやXR、ブロックチェーンの技術が すべてメタバースの空間に統合されるというイメージが湧いていて、すごくワクワクしています。自分の中では「メタバースの中で生きている感覚」はあるんですけど、今はそれが全部一緒になったような気がして「二重性」が出てきているなと思っていますね。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事