
「変化が激しく将来の予測が困難なこの時代では、自分たちのあり方を常に変えていく必要があります」と博報堂DYホールディングス代表取締役社長の水島は語る。
生活者の関心がサステナビリティに向かっている中、生活者発想や多様な人材との共創によるクリエイティビティを価値創造の源泉とする企業グループとして、博報堂DYグループはサステナビリティへの取り組みを重要テーマと位置づけ、2024年に発表した中期経営計画では「人を中心としたサステナブルな経営」を掲げた。
「サステナビリティへの取り組みを実行するには、様々なステークホルダーがいたり、既存の枠組みや既得権益などとのトレードオフで軋轢が生じたりすることも多い。これを解決するのが、既成概念にとらわれない多様な視点から『問い』を作り、当グループの強みとするクリエイティビティを発揮することだと考えています」(水島)

同グループでは「人を中心としたサステナブルな経営」としてESGの3つのテーマで9つの重要課題を設定し(図)、独自の施策を進めている。

重要課題の中でも、特に注力しているのは社会領域であり、「多様な個の成長と尊重によるクリエイティビティの発揮」を掲げている。取り組みのひとつとして注目したいのは、経産省のキャリア教育アワードを受賞した中高生向け探究学習プログラム「Hasso Camp」だ。学校単位で実施する通年型のものと、長期休暇中に個人で参加できる2種類があり、中高生が答えのない社会課題の解決方法を考えていく。大きな特徴は、社員が一方的に教えるのではなく、中高生を「将来世代」として捉え、社員と中高生がチームを組んで学び合うスタイルを採用している点だ。この双方向のアプローチが世代を超えた新たな視点や発想を生み出し、次世代の成長と社会課題解決の可能性を広げている。
「Hasso Campは『きみの視点は、みんなの始点だ。』というスローガンのもと、一人ひとりの視点を持ち寄り、みんなで発想を広げて、一緒に世界を動かす練習をしようという意味が込められています。中高生にとっては、多様な視点から問いをつくり、アイデアを発想する練習になるし、社員にとっては次世代と社会課題を考えることができる場になっています」と中島は語る。

2024年は「高校生が考える新しい居場所」をテーマに設定し、高校生とメンター社員以外にもグループ内の専門チームや外部有識者も参画。「つながりたいけどしがらみは嫌だ」などの生活者インサイトを踏まえた新しい居場所の形を共創した。
「Hasso Campはグループのつながりや強みを再発見し、クリエイティビティや共創力を磨く場でもあります。実際に参加した社員から『通常の業務とは違うネットワークづくりや業務におけるヒントを得た』という感想が寄せられており、大きな手ごたえを感じています」(中島)
環境の取り組みにおいても、ビジネスを通じた課題解決の創出を狙う。2024年10月には地球と人が共に繁栄できる時代を目指す新会社「地球中心デザイン研究所」を設立した。「地球」をクライアントやパートナーと同じく重要なステークホルダーとして捉え、人間のことだけを考えた「人間中心」から、人間に加えて、その他の生態系を含めたマルチスピーシーズ視点の「地球中心」へ、あらゆるデザインの矛先を向け、クリエイティビティで地球と人が共に繁栄できる時代をつくりたいという志の元、広告・クリエイティブ業界で実績を重ねたメンバーと、環境・社会の持続性を専門とする外部メンバーと協働で社会課題の解決を目指している。
「サステナビリティが未来のために重要だと理解していても、実行に移すにはジレンマがつきもの。企業や生活者をつなぐ力、多様な生活者の視点から新たな価値を見出す、これまで博報堂DYグループが培ってきた強みは持続可能な社会の実現に向けても活かしていけるものと考えています」(中島)
水島は「これらの取り組みは、すべて社員の想い(アスピレーション)から生まれたものです。グループ社員一人ひとりの多様な個性こそ、価値創造の源泉です。常にそれを意識して『人を中心としたサステナブルな経営』を実践し社会にインパクトを生み出す企業グループに変革していきたい。これからも生活者の想いが溢れて、皆がいきいきと活躍できる社会の実現を目指そうと考えています」と今後の展望を語った。
※「日経ビジネス電子版Special」2025年3月7日に公開
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