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【WE AT連載・産官学で挑む社会課題とビジネス 第2回】
”データドリブン社会課題工学”が拓く物流や電力のミライ(後編)

2025.01.20
博報堂ミライの事業室は、新規事業開発をさらに推し進める一手として、東大や京大、東京科学大などと共同で一般社団法人WE AT(ウィーアット)を設立しました。WE ATは、グローバルな社会課題に挑むスタートアップや未来の起業家を産学官連携で後押しするためのソーシャルイノベーションエコシステムづくりを進める法人です。本連載では、WE ATの理念や取組に共感いただいているゲストとの対話を通じて、ソーシャルイノベーション推進のヒントを探ります。第二回は、東大技術経営戦略学専攻教授の田中謙司先生を訪ね、物流や電力など大規模な社会課題への挑戦について語らいました。

田中 謙司氏
東京大学 大学院工学系研究科
技術経営戦略学専攻 レジリエンス工学研究センター
教授

諸岡 孟
博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター
一般社団法人WE AT 事務局長

古賀 聡
博報堂プラニングハウス 代表取締役社長
エグゼクティブプラニングディレクター

街に賑わいをうむには?都市設計にも応用可能なモデルへ

田中
私たちが研究を進めている先述のモデルは、さらに他分野にも応用可能です。たとえば都市設計です。電力エネルギーと都市設計はまったく別分野に見えますが、エネルギーの発電からの消費までの流れと、都市に人が住んでそこを去っていく流れには共通性があります。エネルギーの需給の最適化は、街の賑わいづくりとロジックが似通っているのです。

諸岡
なんと、街づくりにも応用が利くとは思いませんでした(笑)

田中
驚いてくれてありがとうございます(笑)賑わいを最大化するには、それぞれの店舗が個別に集客の施策を実行した方がいいのか、それとも街全体レベルでキャンペーンを展開した方がいいのか。つまり、分散制御と集中制御のどちらが効果的なのか。そんなシミュレーションを以前行ったことがあります。

そのときの実施条件では、後者つまり集中制御を行ったほうが効果的でした。また、チェーン展開をしているコーヒーショップにご協力いただき、どこに店舗があると人の流れが変わるのかといった実験も行いました。

古賀
店舗と人流がテーマになると、博報堂グループの強みであるデータドリブンマーケティングとも関係してくるので、非常に興味深いです。集中制御を行いつつ、それですべてがまかなえるわけではないから分散制御も組み合わせて、という考え方になるのでしょうね。

田中
さらに、このシミュレーションは実は金融分野にも応用可能です。多くの社会課題に密接する金融において、ブロックチェーンに関する取組が数年前から盛り上がりましたが、あれはまさに分散制御の代表例ですよね。ほかにもいろいろな応用の可能性があると思います。

諸岡
汎用的方法論をさまざまな分野に応用していく、まさに「データドリブン社会課題工学」ですね。

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