
佐藤 満紀氏
花王 DX戦略部門DX戦略デザインセンター
データマネジメント部長/データ知創戦略センター チーフデータサイエンティスト
中原 啓智氏
グーグル・アジア・パシフィック
シニアマーケティングエフェクティブネスリサーチマネージャー
コンシューマーアンドマーケットインサイツ
<モデレーター>
宮腰 卓志
博報堂
データサイエンティスト/チーフディレクター
宮腰
「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」は、ポストCookie時代の有力な広告効果検証手法として大きな注目を集めています。MMMを活用することで、マーケティング施策とその成果の関係を可視化することが可能になります。

ただし、MMM活用には落とし穴もあります。MMMでデータを検証する際には、有用なデータを集めるモデルとそれを検証するモデルをつくる必要があります。博報堂とGoogleの共同検証によると、それぞれのモデルの構造にずれがあると、検証結果に10倍以上の誤差が生じる可能性があります。
モデルづくりは、MMMを運用するマーケターや分析者に委ねられています。マーケティング施策と生活者の行動の関係、必要とされるデータの最適な選択と生成、そしてその数式化。以上の3つのポイントを踏まえて、正しいモデルをつくらなければなりません。
こういった視点を踏まえて、花王でMMMに取り組んでいらっしゃる佐藤さんから、MMM運用のポイントをご説明いただきたいと思います。
佐藤
MMMの活用には「データ準備」「分析と解釈」「アクション」の3つプロセスがあります。まずはモデルをつくり、それに適合するデータを準備しなければなりません。例えば消費財の場合、データは一般に週単位で集計されます。したがって、1年で52週、2年で104週ぶんのデータがあることになります。
しかし、そのデータをすべて使うわけではありません。MMMを使う場合は、分析で評価したい因子(変数)は準備した時系列の10分の1程度にするというガイドラインがあります。つまりデータを準備するだけでなく、クレンジングをして実際に分析に使うデータを生成する必要があるということです。そこに多くの作業工数がかかることになります。

次のプロセスが、データの分析と、その結果の解釈です。
そこでは分析スキルだけではなく、事業ドメインに関する深い知識が必要とされます。さらに、その解釈を具体的なアクションにつなげていく必要があります。マーケティング施策を改善し、アクションを起こし、さらにその結果を分析してモデルを最適化していく。そういった継続的な取り組みが必要とされます。