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【WE AT連載・産官学で挑む社会課題とビジネス 第1回】
生成AIで沸く半導体にみる社会課題と産業の結節点(後編)

2024.11.27
博報堂ミライの事業室は、新規事業開発をさらに推し進める一手として、東大や京大などと共同で一般社団法人WE AT(ウィーアット)を設立しました。WE ATは、グローバルな社会課題に挑むスタートアップや未来の起業家を産学官連携で後押しするためのイノベーションエコシステムづくりを進める法人です。本連載では、WE ATの理念や取組に共感いただいているゲストとの対話を通じて、社会課題解決の新規事業を両立するヒントを探ります。第一回は、生成AIで注目を集める半導体分野の第一人者として、2024年度から東大特別教授に就任された黒田忠広先生と同研究室の小菅敦丈先生を訪ね、ミライの事業室でスタートアップ協業やエコシステム推進に取り組む秋本とWE AT事務局長諸岡が、社会課題やエコシステム、産業づくりについて語らいました。
前編はこちら

黒田 忠広氏
東京大学 特別教授

小菅 敦丈氏
東京大学大学院工学系研究科
附属システムデザイン研究センター 講師

秋本 義朗
博報堂 ミライの事業室 室長補佐兼事業開発部長

諸岡 孟
博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター
一般社団法人WE AT 事務局長

九州から世界へ、東京から世界へ

秋本
熊本にはTSMCだけでなく、国内の半導体メーカーの工場もあります。半導体関連の拠点が熊本ふくむ九州に集積しているのは、どのような背景があるのでしょうか?

黒田
地理的な要因が大きいですね。熊本から半径2500kmの円を描くと、台北、ソウル、北京、上海、東京、千歳がその円にすっぽり入ります。深圳まで入れようとすると半径をもう少し大きくしないといけないけれど、それでもアジアのハイテク産業や交通の要衝がほぼすべて入ってしまいます。各都市の時差は1時間以内です。かたや、アメリカで半導体投資が進んでいるアリゾナを中心に円を描こうとすると、先端半導体の研究開発拠点がある東海岸を入れるには4500kmくらいの半径にしなければなりません。しかも時差は3時間あります。つまり、アジアの半導体産業は非常にコンパクトにまとまっていて、その中心に九州があるということです。九州は昔からアジアに開かれた日本の玄関でした。その底力が、半導体が再びの春の時代を迎えて発揮されつつあるということです。

諸岡
熊本・九州を拠点に国内をネットワークしつつグローバルへ。半導体はグローバル産業ですから、世界にむけての拠点づくりが重要ということですね。

黒田
熊本県立大学は「地域に生き、世界に伸びる」というスローガンを掲げています。英語で言えば、「Think globally, act locally」です。素晴らしいスローガンですが、実践することは簡単ではありません。熊本に生きることとグローバルに活躍することをどう両立すればいいのか。その答えが見つかりつつあります。熊本が世界の半導体製造の1つの中心地となったからです。熊本という地域にいながら、世界に向けて伸びていける環境がようやく整ったわけです。熊本県立大学の理事長という立場で、その環境のポテンシャルを大いに生かしていきたいと思っています。

諸岡
僕らWE ATとしてぜひ参考にしたい考え方です。WE ATの「T」はTokyoを表していて、東京を拠点に国内をつなぎつつ世界へと向かい、グローバルな社会課題に対峙することを掲げています。その実現に重要な役割を果たすのが戦略パートナーであるTIBとJETROです。TIBは、東京都の運営する国内外スタートアップやその支援者が結節する一大拠点「Tokyo Innovation Base」であり、5月のWE AT発足の際はTIBとの共同開催イベントを行いました。JETROはかねてより国内外スタートアップの往来を支援しているプロフェッショナルです。WE ATはこうしたパートナーと二人三脚で、世界とつながるエコシステム拠点づくりを進めています。

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